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【無料】肝経を整える動功【第1回】

静功と動功の違い

他の流派ではどういう区別になっているのか分かりませんが、私が練習している気功では、動く気功、動功は心や神経に効果が高くて、静かに立つ静功、站椿功は体を強くする効果が高いと言われています。今まで紹介してきた馬歩站椿は弱い身体を全体的に強くしてくれます。地道に練習すれば、身体が強くなりますし、気も溜まります。十分な気が溜まると免疫力も上がりますし、体力も付いてきます。立っているだけなのに足腰が鍛えられているので、階段の上り下りが楽になったり、荷物を持つ時に、あれ軽く感じる?ということも起きます。男性機能を高める気功の中で紹介した站椿功も静功ですので、弱っている生命力、精力を高めてくれる効果が高いです。もちろん、動く運動、スクワットでも筋力がついて、陰茎に血液を保持する効果が得られます。下半身の血流も良くなります。しかし、站椿功では、足腰を鍛えることに加えて、気も溜まりますので、元気になるだけではなくて生命力自体が高まるのを感じることができると思います。ただ、強くはなるのですが、足はしんどいし、時間はかかるし、ハイリターンなのですが、ハイコストでもあります。取り組むハードルが高くかんじます。

一方で、今回から紹介する動功は、例えば、気持ちが沈んでいる時や、ストレスで体調が悪い時にちょうど良い気功です。

・ちょっとだるいなあ
・いまいち元気が出ないなあ
・長く立つのはしんどいなあ
・1〜2分なら時間があるなあ
・ちょっと気の流れを整えたいなあ
・深呼吸するかなあ
・気の流れが滞ってる気がするな
・これからやらないといけないことがあるなあ
・立ち上がったけど、面倒だなあ

という時に、ささっとできて、身体を整えることができるのがメリットです。ローコスト・ハイリターンだと思います。デメリットを挙げるとすれば、長く続けて、身体を鍛えたいというのには向かないことです。デメリットと言いますか、効率が悪いということです。もちろん続ければ気も養えますし、血流も良くなるので健康になります。でも、強くしたい場合は、同じ15分、30分を使うのなら站椿功をした方がいいです。動功は、ちょっと気分転換したいな、站椿功をする前にちょっと身体をほぐしておきたいな、軽く身体を整えたいなという時にオススメです。

動功の種類

今回紹介する動功は全部で5種類あります。陰陽五行に対応しているので肝心脾肺腎に対応しています。肝経、心経、脾経、肺経、腎経の気の流れに対応して流れを良くしてくれると考えてください。ただ、肝経の動功をしたからといって、肝経しか整わない、肝経の気しか流れない、肝経しか活性化しない、というわけではないです。それぞれが陰陽五行に対応しているので、相生相剋の関係があります。肝経が整えば、心経の助けになりますし、脾経が活性化し過ぎているときは、肝経を整えて抑えることもできます。

陰陽五行

初心者の人もいると思いますので、簡単に五行について解説しておきます。この肝心脾肺腎というのは、同じ字を使っていますが、今の肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓とは少し違います。細かい話になっているので、既に知っている人や、面倒な人は各論を飛び越して「五臓の異常時のサイン」まで進んでください。

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「肝」は病邪、つまり悪い気に対して抵抗する機能を発揮する臓器(この臓器というのは肝臓ではなく、中医学的な臓器です)になります。肝は疏泄(そせつ)を主る(つかさどる)と言われていて、疏とは疎通、泄とは発散・昇発のことです。疎泄というのは新陳代謝のイメージです。気の調節、精神活動や情緒、胆汁の分泌と排泄などを調節しています。血液を貯蔵する働きがあって、全身の血液を調節しています。肝の疎泄機能が悪く、気血が鬱滞すると、筋肉の強張り、月経不順、子宮筋腫、目のかすみ等が生ずると考えられます。肝血の不足は、爪が割れたり、変形(スジや段付き)、四肢の痙攣や麻痺を引き起こします。眼瞼(まぶた)が痙攣するのもこの作用です。

さらに、中枢神経系(自律神経)の活動を主ると言われていて、ストレスを受けた場合や、機能が低下すると、怒りやすくなって、イライラします。肝の働きが弱っている時には、緊張しやすくなります。精神的な活動は、いわゆる心(こころ)が主る以外に、肝も密接な関係を持っていると考えられています。そのため、肝の疎泄作用が正常であれば、情緒が安定して、 快適な精神状態が保たれます。外部からの刺激によって、感情を害した場合にも、肝の疎泄作用は鈍り、抑鬱状態や興奮状態を招くことになります。思惟活動の中心で、人が思考思索を巡らすことができるのは肝のおかげです。

肝は五行では「木」に属すので、木のように自由に生長して、 抑制を嫌う性質があって、動と昇を主ります。「肝っ玉のすわった人」の「肝っ玉」とは、この肝に由来しています。

「心」は五臓六腑の大主で、生命活動を主宰し、最も重要な臓器です。血液を循環させて、中枢神経の機能活動を管理していると考えられます。「心は神を蔵す」と言って、心が神を通じて、五臓六腑を統率し、意識と精神活動を 受け持つとされています。この神というのは精神とか、漢字は使われているのですが意味が分かりにくいと思います。心と何が違うのか。「神」というのは、広く言えば「全ての生理活動を主宰して、それを表現するもの」です。狭い意味としては、精神思惟活動を主宰するものです。

広い意味での神は、精神・知覚・活動などの、全ての生理活動をの中心となって働いて、それを物質世界に表現するものです。生命体というのはただの物質ではなく、それを働かせて活動できる状態にしていることが、生命という存在になります。神が無くなると生命は死に至ります。また、心は大脳新皮質を主とした、高次神経系の機能も有します。心を神に通じる統率者としたのは、心臓が最も重要な臓器であると考えたからだと思われます。

思惟活動を行う上で、身体が影響を受けて胸がドキドキします。そのため、心臓の拍動によって血液を循環させて、脈の働きを主ります。血液は血管を絶え間なく運行していて、運行は「心の陽気」と、脈の働きの双方の力で行われていると考えられています。

心の機能に異常が生じると、血液の循環に変化をきたし、脈や心拍数にも異常が現れます。また、顔色または発汗や舌の変化(異常)にも現れます。

西洋医学では、心臓、循環器系と、大脳新皮質は別物となっていますが、東洋医学においては、両方の作用を兼ねています。心臓、循環器系と大脳新皮質、すなわち血脈と神(精神)には密接な機能があって、心気の機能が正常であれば、心の気血が充実し、思惟活動が活発になり、元気が横溢すると考えられます。

「脾」は、消化器系統の機能を主って、飲食物を消化して、その精徴なもの(栄養物質)を全身へ輸送します。脾の機能が低下すると、水分代謝障害や肌肉をおとろえさせて、口唇に異常が現れます。そのため、脾は口に開竅すると言われます。脾気が足りていると、食欲が出て味覚が良くなります。脾気が不足すると、食欲を失って、味覚が鈍くなります。唇は脾の象徴で、脾の機能が正常であれば、唇は紅く潤いがあります。

東洋医学で脾胃と言われる臓腑の機能は、現代医学の脾臓の働きとは違って、消化器官系の働きに当たります。脾は、水穀(飲食物)の精微(栄養物質)を吸収して、その運化(輸送と消化)を主ります。この「運化を主る」という言葉には二つの意味があって、一つは、水穀の精微(栄養成分)を全身の各組織に輸送、配布することで、もう一つは水液の吸収と排泄を促進することです。

消化された飲食物は、まず小腸で清濁を分別されます。小腸で得られた有用成分と水分は、脾が吸収して、全身の各組織に輸送して、配分されます。この時、脾は余分な水分を体外に排泄します。水分代謝は非常に複雑で、脾の水分代謝促進作用、肺の粛降作用、腎の開闔作用が互いにからみ合って水分代謝を行って、体内の水分バランスを正常に保っています。吸収された精微物質は、まず血中に入って、肺に転送されて、全身に巡ります。

脾は、水穀の精微を運化するので、脾の機能が正常であれば、四肢の筋肉はよく濡養される。つまり、腕や脚に筋肉が付いて、全身に力が充実します。このため「脾は、四肢・筋肉を主る」とも言われます。

脾には、統血の作用もあります。統血の「統」は、統帥する、または抑制するという意味なので、 統血というのは、血液を固摂(引き止める)し、血が血管から溢れ出ないようにして、体内を正常に循行させる作用のことを言います。

脾気が不足すると、運化が滞り、脾はその統血機能を失います。つまり、飲食物の運化がうまくいかなくなると、血液成分が劣化して、出血しやすくなります。出血性の疾患に対して、漢方治療では脾の統血作用を活用することが多いのは、このためです。

脾は、消化吸収を通して「気」「血」「津液」を作って、生命力を補充する働きをしているので、「津液」や「気」の原動力、発生源としてとても重要です。西洋医学的に言うと、消化器官や膵臓の働きに当たります。

「肺」は、呼吸を主り、体内のガス交換の器官です。空気中から取り入れた清い空気(天の気)は、飲食物から産み出された水殻の気(地の気)と結合して、各臓器に送られて、全身の気(元気、真気)を統轄します。肺が邪を受ける、機能が低下すると、いわゆる風邪を引いた状態になります。

肺は「相傅の官」と呼ばれて、君主である心を補佐する宰相の役割を果しています。血液の循環を調節して、気血を調節して、五臓をよく協調させます。そのため、血液の異常、病気においては、肺に対する治療も大切になります。

人間は呼吸によって自然界の清気を取り入れて、体内の濁気を外へ排出します。呼吸による清濁の気の交換は、人体の生命維持に必要不可欠なものです。肺は全身の気を主って、自然界の清気と水穀の精気を胸中に集め、これらは胸中で結合して「宗気」になります。宗気には、肺の呼吸作用と心と協力して血液の運行を助ける作用があります。つまり、宗気というのは、血の循環に深く関わるものです。

肺には、宣発と粛降の作用があります。宣発というのは、肺の気を上方へ昇宣し、外周に発散させる作用のことです。肺は宣発によって、気血や津液を全身に輸送して配布し、皮膚を温め、潤します。また、肺は宣発作用を通じて、体表の皮毛に衛気や水穀の精微を送る。皮毛は体表で外邪の侵入を防ぐ役割をしているので、肺気が不足すると、皮毛は衰え、外邪が侵入しやすくなって風邪を引いてしまいます。

粛降の「粛」は清粛の意味で、「降」は下降の意味で、粛降作用というのは、肺気の下方への通行と、呼吸道の清潔を保つ作用のことです。清気は軽く散らばりやすいものなので、肺の粛降作用によって清気は下降し、 精微と合わさり宗気となって、各臓器に分布されます。また、この粛降作用は、水分代謝にも関わっています。脾のところにも書きましたが、脾の運化作用、腎の気化作用、 肺の粛降作用、この3つが絡み合って水分代謝を調整しています。

呼吸の他にも、水分代謝、皮膚の調節、免疫機能とも関係しているので、西洋医学でいう肺の働きよりも多くの事を担当していると考えられています。

「腎」は、腎は精を貯蔵します。精というのは、生殖と成長発育を維持する基本物質で、物質化したものが男性の精液です。先天の精と後天の精に分けられて、臓腑と各組識を滋養します。また、骨と髄も滋養するので、腎の異常は歯や頭髪・聴覚・大小便などの異常として現れます。

「腎為先天之本」と言い、泌尿生殖器系と一部の神経系、造血系、内分泌系の機能を包括したものの総称になります。西洋医学の腎臓より広い範囲を含んでいます。 古来、腎には二葉あって、左側を「腎」、右側を「命門」としているという話もあります。いくつか説があるようですが、解剖した時に右の腎臓は肝臓に押されて2cmほど下にあるので、左が腎臓、右が命門という話を読んだことがあります。他にも、古典にこう書かれているからといって、右だけが命門ではなく、経絡としての命門は背骨の上(左右の腎臓の中心)にあるから左右ともに重要という話も聞いたことがあります。

腎は、陰を主り、水に属し、命門は、陽を主利、火に属します。そのため腎は「水火の臓」という呼称もあります。腎は「精を蔵し、命門の火を主る」と言われて、人体の成長、発育、生命活動に必要な「精(腎陰)」と「命門の火(生命のエネルギー、腎陽)」の相互作用によって、成長、発育に関わる機能調節を行っているとも考えられています。両親から、先天の気と呼ばれる、先天的な生命力を受け継いで生涯の体の状態を左右するとも言われています。

西洋医学でいう腎臓と同様に、水分の代謝にもかかわっています。

五臓の異常時のサイン

肝:怒りっぽくなる・筋が痙攣しやすい・目の異常・精神の不安定
心:汗をよくかく・舌の先端が赤い・過剰に喜ぶ・不眠
脾:手足が黄色くなる・出血しやすい・食欲異常・よだれをよくたらす
肺:世を憂いたり悲しみやすい・色白になり皮膚病になりやすい・涙や咳が出る
腎:老化現象全般・頻尿・集中力の低下・驚いたり恐れたりしやすい

肝経を整える動功

動画の解説

お腹の前にボールを抱えているイメージからスタートします。息を吸いながらボールを持ち上げるように両手を頭上に上げていきます。同時に、身体を左にひねります。呼吸と動きを合わせて、手を上に上げるまでを一呼吸(吸うだけ)で行います。だいたい90度ひねるイメージで身体を回して、掌で天井を押すようなイメージです。視線は、最初は正面を向いておいて、手が顔を通り過ぎた辺りから手を追いかけます。

一番上まで行ったら、息を吐きながら、空中からボールを取り出すようなイメージで、ボールを引っ張り下げるように手を下げていきます。力で下げるのではなくて、プカプカ浮かぶボールを水の中に下げていくような、上に浮かぼうとする風船を飛ばさないように下に引き下げてくるようなイメージです。普段から気功をされている人はすぐにできると思いますが、初めての方は何度も脱力して繰り返して、感覚をつかんでください。手が胸の前、みぞおちの辺りを越える時に手の角度が苦しくなってくるので、自然と手を回転させて掌を上に向けます。ボールのイメージは胸の辺りまでで大丈夫です。腕の動きに合わせて、同時に身体を正面に戻していきます。

息を吸いながら、身体を左にひねりながら、腕を上げて、息を吐きながら、身体を戻しながら、腕を下げます。左右交互に行います。息を吸いながら、身体を右にひねりながら、腕を上げて、息を吐きながら、身体を戻しながら、腕を下げます。5回〜10回くらい行えば十分です。もちろん、気持ちよくできる人は、もっと繰り返しても大丈夫です。

経絡から見た解説

肝経と胆経

左の赤いラインが胆経、右の青いラインが肝経です。肝経と胆経は関係が深く、「肝胆相照らす」の語源です。簡単相照らすというのは、互いに心の底まで打ち明けて理解し合い、親しく付き合うことです。それくらい関係の深い経絡です。この二つの経絡を身体を捻ることで刺激するのが、この動功の意味です。なので、しっかり身体を捻ることが重要です。逆に、身体がひねれないのに、無理に顔だけを横に向けても意味がないです。身体の内側と外側のサイドラインを通っている肝経と胆経に刺激を与えるつもりで行うと、より効果が出ます。その時に、細いチューブが通っているイメージを持って、そのチューブが変なところで折れ曲がらない、つぶれないように意識すると、身体が変な方向に倒れなくて、軸をキープしてひねることができます。ぜひ試してみてください。

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