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発勁について(2022/2/7修正)

発勁について
現時点で考えていること
について書いてみました。

明勁から始まり、
寸勁、暗勁へと
練習が進んでいくにつれて、
今まで出来ないことが出来るようになり、
分からないことが分かるようになってきました。

これは逆はないです。

分かるようになって、
出来るようになるのではなくて、
出来るようになって
分かるようになるのです。

最近の教育では、
まず理解する。

それを実行することで
出来るようになる
と進めてきますが、
どうもそういうやり方では
武術については上達しないように思います。

何が分かるようになってきたかというと、
発勁の原理です。

過去にもブログやFBで色々書きましたが、
現時点での到達点を
これから書いていこうと思います。

以前は、
まず原理を理解して、
それを練習して出来るようになる
と思っていましたが、
出来るようになってくると、
なんか違うなとなっています。

そして、
原理はすごく簡単なのですが、
知ってるだけでは出来るようにならないし、
練習しないと出来るようにならない
ということを実感しています。

形意拳の発勁は
最初は明勁から練習します。

大きな動きで、
力一杯打ちます。

そこからだんだん動きを小さくしていき、
寸勁は1寸の距離から、
暗勁は触れたところから
力を発します。

そのときに、
姿勢を崩さず、
手を動かせない代償行為を持ち込まず、
なんとか威力を維持しようとする
と何が起こるか。

腕や腰の力で打っていたのを、
身体全体の力で打つようになるのです。

すごく簡単です。

きっと、
そんなの知ってるよ〜
ってなると思います。

でも、
これを頭で考えてやると、
体は利口なので、
どこかで代償的な動きを始めて、
変な姿勢で打ってしまいます。

言い換えると、
日常的な習慣で
必ず関節をヒンジ(蝶番)のように
使ってしまいます。

肩が上がったり、
体が傾いたりします。

体幹の勢いを使ったりも
してしまいます。

だから、
先生に何度も
違う、そうじゃない、
もっと姿勢を整えて
と注意されながら修正して、
修正して、
やっと今までの習慣が変わってきます。

ただし、
動きを小さくすると、
威力が小さくなるのは避けられません。

明勁より強い力は出せません。

でも、
質が変わります。

これは比べられないので、
強くなったように感じますが、
昔の名人も
死に際に
もっと明勁を練習しておくんだった
と言い残しているそうなので、
やっぱり明勁の強さは重要だと思います。

この質の転換については
以下に書いてみます。

少し違う言い方をすると、
明勁とは運動量を高める練習です。

物理的には、
物をぶつけて何かを壊そうとするとき、
速度が大きいほど、
質量が大きいほど、
つまり
運動量が大きいほど壊しやすいのです。

なので、
力一杯
突きの威力を高めます。

拳や腕の重さは
そんなに簡単に変えられないので、
スピードを高めます。

スピードを高める筋力が高まれば、
運動量も高まります。

一方で、
暗勁は力積です。

力積というのは、
運動量を変化させるのに加える力
のことです。

相手の胴体が
その場に止まっていようとしているのを、
大きな力を加えることで
後ろに吹っ飛ばす。

こちらに向かってくるところに、
急激に
後ろに吹っ飛ばすような力を加える
のが暗勁です。

この力が拳や肘の面積で
相手に作用したら、
どれだけ体にダメージがあるか
分かると思います。

直径10センチほどの木の棒に
体当たりしたら、
棒と体のどっちがダメージを受けるか
想像すると分かると思います。

明勁で養った運動量を、
相手の胴体や頭部に作用させ、
相手の運動量を変えようとする
のが暗勁です。

なので、
質の転換が起こらないといけません。

いくら運動量を高めても、
それを相手に作用させる力積に変換できなければ、
ただの豪腕パンチです。

破壊力はありますが、
浸透力が生まれません。

上に書いたように、
動きが小さくなるので
運動量は何割か小さくなります。

しかし、
それを全部相手の胴体にあずけられれば、
こちらの突きに対して
相手が体当たりしてきたのと
同じダメージを受けます。

楊式太極拳では、
もっと分かりやすいです。

最初は伸びやかに、
大きな動きで練習します。

明勁的な力を強めることはしません。

今ある力を
伸びやかに使えるようにします。

そこから
質の転換を図ります。

例えば、
両手で相手を押すときに、
日常的な動きだと
手で押してしまいます。

少し練習してくると
足の力で押せるようになります。

足で押しているつもりでも、
ほとんどの人は
腕の力で押しています。

手の動きが足より先に終わる
ように意識してみるといいと思います。

手が終わって、
その形のまま足で押し込む
イメージです。

これを、
もっともっと腕の力を使わないように、
足からの力を伝えるように
意識して練習します。

姿勢を整えると、
頭が上に
尾閭を中正にして
体幹に縦方向に弓型ができます。

胸を含んで
背を張ると
横方向にも弓ができます。

肩を落として、
肘を落とすと
腕にも弓形ができます。

これらのアーチ状の構造を使って、
足の力を相手に伝えることが出来る
ようになってきます。

この弓を維持している力が
掤勁です。

アーチが崩れると
掤勁も崩れます。

これも、
分かっているだけではできません。

アーチを維持して動く練習を何度もして、
姿勢を注意してもらい、
日常の力の使い方を
太極拳の力の伝え方に変えていく
必要があります。

そうすると、
足で押すとか、
脱力とか、
知識で分かっていたつもりのことが、
こういうことだったのか
と腑に落ちます。

形意拳の力は鉄球で、
太極拳は皮で出来た球(皮革球)
だと例えられます。

形意拳は
拳の運動量を
相手の胴体へ打ち込む
イメージです。

太極拳は
アーチの構造で、
足の圧力を相手に伝える
イメージです。

だから最近は、
形意拳は鉄球、
太極拳は皮革球と言われると、
なるほど
とすごく腑に落ちます。

おわり

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