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気候変動と自然保護/これからの未来のために知って欲しいこと

当然のことですが、気候と自然とは密接に関連しています。気候変動が自然に及ぼす影響について、これからの未来のために皆さんに知って欲しいことを紹介します。

【自然保護とブナ林】

日本の国内では、多くの人がさまざまな分野で自然保護活動をしています。山、川、湖、海、植物、動物(哺乳類、鳥類、魚貝類、爬虫類、両生類)、昆虫、苔、微生物、珊瑚、生態系等々。

これらのさまざまな自然の生態系システムの上流で大事な役割を担っているのは、山の木々で、その代表格がブナ林です。

ブナは、冷温帯の比較的涼しいところに見られる落葉広葉樹です。従って、日本の場合は標高の高いところ、四国、九州は標高1,000〜1,500m、本州は標高600〜1,500m、北海道では標高50〜600mにブナ林が見られます。また、ブナはその雄大で美しい姿と豊かな生態系の命を育む存在であることから森の女王と言われています

【ブナ林の特徴】

ブナ林の特徴として①保水性が高い、②根張りが良い(土砂崩れ防止効果が高い)ことが知られています。ブナ林の林床は落葉が層状に多層積み重なってふわふわしたスポンジのようになっていて、雪解け水や雨水を蓄える「緑のダム」と言われています

ブナ林から湧き出る水は、「ブナ清水」と呼ばれています。落葉層とその下の地層がフィルターとなり不純物が取り除かれ、地層中のミネラルを含んだ清水が谷川に流れます。そしてその清水が川を経て海へ流れ、川や湖や海での豊かな生態系の形成に寄与します。

また、ブナは秋になると実がなり山に暮らす動物たちにエサを供給していますし、ブナ林の落葉の下にはさまざまな昆虫や微生物等が活動し豊かな自然を形成しています。

【ブナ林の危機/過去と将来】

戦後の木材需要の高まりに応じ、昭和30年代、林野庁は「拡大造林計画」を推進しました。広葉樹からなる自然林が伐採され、杉やヒノキのような針葉樹の人工林に置き換えられました。日本各地で多くのブナ林が失われたそうです(これは過去の危機です)。

杉の人工林は遠くから見ると真っ直ぐな木が整然と並んでいて、あまり違和感は感じません。しかし、杉の人工林の中に入ってみると、中は薄暗く林床は生命感の希薄な殺風景な景色になっています。ブナ林の豊かな林床とは大きな違いです。

現在は、自然保護活動によりブナ林の保護、育成が各地で行われています。

しかし、ブナ林にとって新たな危機が訪れようとしています。ブナ林に適した年平均気温は6℃〜13℃程度です。温暖化による年平均気温の上昇が当然ブナ林にも影響し、ブナ林の面積縮小が危惧されています。特に四国、九州、西日本は影響が大きいと予測されています。

ブナ林が減少するということは、ブナ林付近の環境だけでなく、その下流の川や湖や海といった広い領域の自然環境にも影響を及ぼします。このように、将来の気候変動が日本の豊かな自然を大きく変えてしまう可能性があります。

【まとめ】

将来、もし温暖化が進んでブナ林の面積が減少した時、それは単にブナ林だけの問題でなく、そこから派生して川や湖や海等の広い範囲で何らかの影響が出るということを知って欲しいと思います。

多種多様な生物が生き、春の新緑、夏の深緑、秋の黄葉・紅葉と美しい景色を見せてくれる豊かな自然が日本にはあります。しかし、その豊かな自然も当然、気候変動の影響を受けてしまいます。ブナ林はその中の一例で他にも同様なリスクが多く存在していると思います。

そして、これからの未来のために一人一人が現状の問題を認識し、自分のできることを考え実践することが大切と思います。

尚、ブナ林のことは日本自然保護協会の自然観察指導員活動の中で知った情報をもとにしています。

*世界自然遺産北上山地は、ブナの自然林が世界最大級の規模で分布し、多種多様な動植物が生息する特異な生態系が見られることが評価されて、1993年に世界遺産登録されました。ブナ林の散策道もあり、一度訪れてみたいところです。