マガジンのカバー画像

小説・「アキラの呪い」

22
「俺にはろくでなしの姉が一人いる。姉は俺の呪いであり、俺は姉の呪いになりたい」 姉の自殺未遂をきっかけに変化する義理の姉と弟の危うく奇妙な関係を描く。
運営しているクリエイター

#創作

小説「アキラの呪い」(16)

小説「アキラの呪い」(16)

前話はこちら。

アキラの呪い 15.16は連続更新。

間話2 「深夜:side晶」

 深く静まり返った夜のことだった。
 誰かがうめいていた。男の掠れた声が壁向こうから聞こえる。作業の手を止め、わたしは知らぬ間に歩の部屋の前へと立っていた。ドアノブを引くと、くぐもっていた声は鮮明になる。戸の隙間から闇が漏れ出て廊下を染めていた。その暗闇に惹かれたせいだろうか。部屋へと足を踏み入れ、気がつくと

もっとみる
小説・「アキラの呪い」(14)

小説・「アキラの呪い」(14)

↑ 前話はこちら。

 両親はもうすぐ10時になろうかという頃に合わせて起きてきた。少し遅い朝だった。父が先に起きて、ついでに母を起こして連れてきたらしい。父も母も朝が弱いわけではない。やはり昨日の酒が効いたんだろう。
 両親が起床して30分も経たないうちに一悶着あった。姉がゴミ袋に貯めた大量の「ゴミ」を母が目にしたのだった。母は娘を愛していたし、娘が生きてきた軌跡をが失われることを恐れていた。

もっとみる