小椋フェイ

短編小説を書いています。主に恋愛小説。失恋が多いかもです。時々、エッセイ。読んで下さい!

小椋フェイ

短編小説を書いています。主に恋愛小説。失恋が多いかもです。時々、エッセイ。読んで下さい!

最近の記事

玉が欲しい 高祖と呂雉と戚夫人の三竦み

 愛だの恋だの。  そんなものは、どうでも良い。  戚夫人は、わざとらしく高祖にしなだれかかった。  そしてうんと、甘い声を出して、高祖の分厚く、柔らかい手を握った。 「北の使者より、世にも珍しい玉が献上されたと聞きました」 「うーん」  戚夫人のマッサージは巧みだ。  高祖はその気持ちよさに、声をもらした。 「何でも、龍の涙と言われているとか。  青に緑が混じった、不思議な光を放っているとか」 「そうだったかいのう」  高祖は、玉には全く興味がない。  確かに、北の使者の献

    • 黄色いチューリップ

      大雨の中、黄色いチューリップ。 心配そうに私を見ている。

      • 残酷

        絶えることない時の流れ その中で生きることを選んだ 選んだのか、選ばされたのか 問いかけても返事はない ただそこにあるのは、静寂

        • 冬の飛行機

          透き通った青い空の中 飛行機の音 「冬の飛行機って、見えないんだよね」 と、眩しそうに空を見上げるキミ 「そうなの?見えるよ」 って、私は笑ったけれど もう、私にも見えない だって、キミが冬の空の中に いってしまったから

        玉が欲しい 高祖と呂雉と戚夫人の三竦み

          ミカンの缶詰、包丁、そして弟

           リンカは、ふと思い出す事がある。  それは、血と痛みと、そして恐怖に歪んだヒロの顔。  今でも左手に残る、傷痕。  ジグザグに引き攣れている。  肌色に溶け込んで、よく見なければ分からないけれど、触るたびに思い出す。  リンカはそっと傷痕を撫でた。  リンカと弟のヒロは、いつもお腹を空かせていた。  家に食べ物はあった。  お金もあった。  母のマミが、二人が好きに食べることを嫌がったのだ。  マミは、手作りにこだわった。  食材も、高価な無農薬や、有機栽培のものを使用し

          ミカンの缶詰、包丁、そして弟

          あそこに行きたい

          蒼い空の向こう。吸い込まれていく。 そして、黒い空間が広がって。 そこは、音も、温度もない世界。 輝く星が、遠くに見える。 そこに在るのは、冷徹な未来。

          あそこに行きたい

          夜空に白い雲#詩

          夜空に雲があるなんて 知らなかった そう言ったら、あなたは笑った 雲はいつも空にあるよ、と 私は今夜も、夜空に雲をみる あなたはもう、傍にはいないけれど

          夜空に白い雲#詩

          彼とガラクタ#短編小説

           部屋には山のような荷物。  壊れたプラモデル(片翼の潰れた飛行なんて、悲しくない?)、ずいぶん昔の雑誌(表紙が、あのフランスのアイドル女優!て、何十年前?むしろ、プレミア?)、ペラペラのバスタオル(子供の頃の思い入れがあるって?そらそうでしようけどさ!)。  ユウダイはいつも、こうだ。  実家で、友達の家で、職場で。  捨てると言われた物を、拾って帰る。そして、部屋の隅に、積み上げていくのだ。  それはユウダイのスペースだからと、マチは気にしないようにしている。  でも、文

          彼とガラクタ#短編小説

          勇気#詩

          欲しいのは勇気です。 神様に、そうお願いした。 生きていたいから。

          Let's Dance#詩

          真夜中のダンスを踊ろう 白銀の月のスポットライト 二人きりで 軽やかにステップを踏もう 音楽はないけれど ほら、観客がみている 観客も楽しそうに体を揺すっている 彼らも楽しそうだ 足元のステップが透けてみえるよ

          Let's Dance#詩

          いま、視えたもの#詩

          強く輝く金色の 光が近づいてくる それはとても力強く エネルギーはとてつもなく 大きい これは導くもの 体は中に浮き ゆっくりと上がっていく 金色の光に包まれ 世界を手の平にのせて やがて暗い宇宙を 明るく照らす

          いま、視えたもの#詩

          悲しい恋愛に惹かれるのは?

          思いつきで、その場のノリで書き始めた小説たち。 まだ、3作だけど… 書いていて、気がついた。 悲しい話が好き? ハッピーな話は、私には書けないみたい。 悲しくて、でも温かい何か。 そんなものが吹き出てくるお話。 私が好きなお話。

          悲しい恋愛に惹かれるのは?

          セフレとにんにく#短編小説#恋愛小説

           ダイスケからのライン。 「今日、暇?会わない?」  ミチは、携帯を見ながら、ため息をついた。  目の前には、焼肉。ビールの缶。  タブレットからは、韓国ドラマ。  すっぴんの、日曜日の昼下り。  何より、とミチは鼻息荒く呟いた。  私、強烈ににんにく臭いはず。大量のにんにくチューブを、タレにぶちこんで、にんにくを丸々ひとつ、バターホイル焼きにもしてるからね。  それにビールをたくさん。これで、4缶目かなあ、と数えてみる。  あ、その前に、レモンサワーも飲んだな。  韓国ドラ

          セフレとにんにく#短編小説#恋愛小説

          ミカンと山と青い空#短編小説

           コウスケが死ぬ、ほんの少し前。  ミカンを食べながら、コウスケがニカッと笑い、手のひらを突き出した。 「なに?」  リサは、ダイニングテーブルに向かい、パソコンのキーボードを叩いては消し、叩いては消しを繰り返していた。  頭が割れそうに痛い。  クレーム処理の報告書を作成していたのだ。作成次第、上司にメールしなければならない。  クレームは言いがかり的な内容で、何と返事をすればよいのか、頭を抱えていた。 「わかんない?」 「だから、何?」  リサの声はますますきつくなる。

          ミカンと山と青い空#短編小説

          自分に甘いのは、当たり前

           仕事が終わり、高速を飛ばして家に帰る。  マキの心は煮えくり返っていた。 「あの女…!」  帰宅時間。たくさんの車が走っている。  その中をマキの、アクセルを踏む足に力が入る。  前を走る車。それが同僚の顔に被さる。苛立ちがつのる。  それはマキが、同僚のユキコに“お説教”をしていた時だ。  ユキコは子供がまだ小さい。保育園に預けてはいるものの、自宅が遠く、時短勤務をしている。  1日に4時間の勤務。ユキコは、それが精一杯だと、話していた。 「あんたねえ」と、マキ。 「家が

          自分に甘いのは、当たり前

          なぜ、私の妹を知ってるの?#エッセイ

          フランス語を習っていた時期がある。 先生は、スイス人のクールな男性だった。 授業は週に1回。 授業の始まりに、フランス語で、今週は何があったか、ひと言スピーチをしなければいけない。 「妹が遊びに来ました。彼女は愛知に住んでいます」と、しどろもどろしながら、話した。 先生がフランス語で言う。 「妹さんは、フランス語がはなせるね!」 ??? なんで、先生が私の妹を知ってるの? 訝しがる私。 妹は若い頃、イタリア語の勉強にベニスに留学したことがある。まさか、そのつながりで離せると

          なぜ、私の妹を知ってるの?#エッセイ