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新卒Webディレクターが10ヵ月で上場企業からベンチャーへ転職したワケ

皆様いかがお過ごしでしょうか。

歩くコンテンツことくろぎです。この記事では以下のトピックを語ります。

新卒入社した会社の退職&ベンチャーへの転職。

2020年1月31日に退職し、間髪入れずに2月1日から次の会社に入社です。せわしない。

リアルタイムでその転換期を過ごしているときの率直な気持ちだったり決意だったりを記念がてら書き残しておこうかな、と思い更新した次第。

いわゆる退職エントリですが、拍子抜けするようなエピソードなので

Web業界あるある!長時間労働に追われ過労死寸前!
隠蔽され続けてきた闇を決死の告発!

という要素はないです。そういうのを期待している方には物足りないかも。

そして、退職・転職の理由は読み進めていただければ分かりますが会社側に非があるのではなく、自分側の思想や事情によるものが一番大きいです。

なので「あぁ~~なるほどね~まぁ人生そういうこともあるよね!」くらいのテンションで読むのがちょうどいいです。

もし「新卒で会社に入ったばかりだけど退職・転職しようか悩んでいる……」という方がこの記事に辿り着いたのであれば、極端な例ですが私みたいにパパっと職場を変えるような人もいるんだなって知っていただき、選択の一助になれればと思います。

※こちらの記事は2020年2月にはてなブログで公開していた記事の移管になります。

「早すぎる」と止められたにも関わらず退職・転職を選択したのはタイミングが良いと確信できたから

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長い文章を読むと疲れると思うので先に結論を述べます。私が退職・転職を決意したのはタイミングが良かったから。これに尽きます。逆にタイミングが悪ければ入社して1年も経ってないのに早々に転職するなんて、いくら突拍子のない行動を取る私ですらそこまでリスクの高い行動はとれません。

とはいえ、「入社して1年も経ってないのにタイミングが良いもクソもあるか」という声が聞こえてきそうです。

そう思うのも当然だと思います。私自身、友人から早々に転職したという事実を耳にしたとすれば「マジか!?ぶっ飛んでンなぁ」と驚くと思うので。

なので、今回の私の退職・転職にまつわる前提や出来事について一つずつ説明していこうと思います。

簡単に時系列にまとめてみると下記のようになります。

入社前:安心して働ける環境重視で会社を選択。転職がスキルアップに繋がる業界のため、ある程度勤務したら転職する意思はあった
入社~配属後:現場に配属されることで自分が思い描いていた業務内容とのズレに気づく
8月頃:自分のやりたいことに近い業務ができる社内公募に応募したものの、元の配属チームに留まることを選択
10月頃:目指していた社内の職制がアナウンスなしに消失、モヤモヤが増える
11月下旬:働き方に対するアドバイスを求め、信頼している大人の方に連絡・食事へ
12月上旬:内定を承諾し、突然の退職の申し出
1月末:退職

12月にいきなり内定とかいう文字出てきたぞ。なにしてんだこいつ。

……そうなんです、この時系列の通り、人並みの悩みやモヤモヤは抱えていたものの、明確な意思を持って転職活動をしていたわけではないのです。

言ってしまえば本格的に退職・転職を意識し始めてから実際に退職の意思が受理されるまで半月もかかっておらず、今回の転職が私にとっても衝動的かつ想定外のものだったことが伝わるかと思います。

まぁ〜でも衝動的に動きたくなるほどの動機がないと転職ってそう簡単に踏み切れなかったと思うし、「なんとなく今の環境にピンと来てないし会社辞めようかな〜」と、自己分析も深掘りもせずなにもかもが漠然とした状態で転職することの方がよっぽど危ないと私は考えているのでこれは最善の流れだったんじゃないかな、と。

時系列に沿って退職・転職に至るまでの流れを語っていきます。

入社前:クライアントが大手企業&企業体制がある程度安定しており制度や福利厚生が整備されている会社を選択。

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学生だった頃、長期インターンで2社のベンチャー企業でお世話になっていたこともあり、ベンチャー企業で働くイメージは大方掴んでいました。

その時に考えていたのは

「ベンチャー企業は実力をつけてから入社した方が活躍できる環境だ。新卒のうちは堅実に経験を積める企業に入社したい」

ということ。あと残業も少なくて休みたい時に休めるのもかなり重視してた。

web業界に身を投じオウンドメディアの支援やエディターとしての能力を伸ばしたい、とやりたいことも比較的明確だった(むしろ明確すぎたのかも)ため、最初から業界を絞って見ていました。

そんな時に一目惚れしたのが前職の会社(以下A社)でした。大学3年生の時に参加した某企業合同選考イベントで

デジタルマーケティング支援の企業
クライアントは国内で有名な大手企業のみ
制作構築から運用まで幅広い案件あり
web業界では珍しく平均残業時間が極めて少ない
東証一部上場。経産省選定のホワイト企業に認定されたこともあり

を掲げていたA社が参加しており、まさに私が理想としている会社じゃないか!と俄然興味が湧いたのです。

そして、幸運なことにグループワーク中の私の様子を見ていたA社の人事担当者の方から「一回うちの会社に遊びに来てみない?」と声をかけていただきました。

これをきっかけに内定が出るまで親身にサポートしていただき、無事2月頭に19新卒の内定者第一号としてスムーズに内定を承諾しました。

実は就活で選考を受けたのはA社のみで、他の企業はA社の選考がダメだった時のために軽く比較検討していた程度でした。

「いや、もっと他に会社見とけよ!ミスマッチだったんじゃないの?」というツッコミが入りそうです。

今ならいえます、その通りです

ただ、当時の私にとってA社の環境は一つも文句の付け所がなく、わざわざ他の企業を探す理由がありませんでした。

また、web企業にありがちなチャラい雰囲気がなかったのも好感度が高く、そういった面でも安心して働けるんじゃないかな、と思っていました。一緒に働く人が結局一番大事なので。

A社の競合企業にあたる他社の会社見学に参加した時、そこで働いている方の

「自分たちイケてるでしょ?(キラキラ〜〜)」※個人の感想です

といった空気感に馴染める気がせず、志望度が下がっていたこともあったので、人の雰囲気に安心感を覚えられることも重要な要素となっていたのです。

ちなみに、面接の段階で

「幅広い業務に携わって経験を積みたい気持ちもあるが、軸としてはやはりオウンドメディアの運営やコンテンツマーケティング、SEO改善支援に携わりたい」

といった旨を一貫して伝えていたことに対し、

「学生時代にやっていたようなライターとしての業務はないと思うけど、例えばコンテンツマーケの企画提案だったり運営代行の案件は扱っているし、配属によっては出来る」

という説明は受けていたため、文章を書く業務がないことについては承知の上で入社しています。

……今思うともう少しここで突っ込んで聞くべきでしたね。自分の企業研究が足りなかったと反省しています。

入社~配属直後:現場に配属されることで自分が思い描いていた業務内容とのズレに気づく

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さて、無事に大学を卒業し社会人デビューを果たした4月。A社はまず入社研修として全国拠点に点在する新入社員を一箇所に集め、二週間程度の宿泊研修を実施しました。

研修の内容自体は特筆することがないため割愛します。

が、ちょいちょい「マジかよ〜」と思うポイントはありました。

1人1部屋は厳しいにしても、2人1部屋くらいで用意されているのではないかと考えていた宿泊部屋は運悪く6人1部屋とかいうユニットバスなのにどうやってお風呂の順番回すん?という厳しい環境に押し込まれたり(同部屋の同期が程よい距離感を保ちながら接するタイプの良い人たちだったのでストレスで爆発することなく済んだ)、食事の用意が一切ないので社会人なりたてでお金がないタイミングで自費負担が多かったり……。そもそもこれ莫大な費用をかけて新人を一箇所に集めて行うような研修内容だったか…?という感じも若干あったり…。そのお金を寸志でいいので夏のボーナス支給に使って欲しかった。(年2回支給のボーナスについて、夏の支給なし。前期に所属していなかった新入社員なので法的には問題ないものの、私の身の回りの友人で夏のボーナスがなかった人を聞いたことがない)

一番私が「?」となったのは研修後半で行われたグループ対抗フィールドワークの評価ですね。デジタルマーケティングの会社であるA社が持ちうるソリューションやアプローチを活用し、どのように街が抱えている課題を解決するのか?A社らしい付加価値を重視した提案をしましょうというワークに対し、審査員が揃えて高得点を出した優勝チームの提案内容がデジタルマーケティング要素が薄めのイベント企画(提案内容を批判したいわけではないです)だったのがスッキリしなかったですね。それってA社じゃなくてもイベント企画会社で十分対応できる領域では…?A社らしい支援って何?アイデンティティーを見失わないで!?と審査基準の不透明さに疑問しか生まれなかったのはいい思い出です。これについては研修後アンケートでも同様のことをちゃんと解答したので陰口にはならないはず。

まぁこれは転職にはダイレクトに関わってこない部分なのでただの愚痴です(笑)。ただ、こういうちょっとした「?」ポイントは研修以外にもちょくちょく出現しており、会社に対するモヤモヤの積み重ねの一部になっていたかもしれないです。20新卒の新人研修以降からはもう少しお財布にも精神衛生にも優しい研修だといいなと願うばかりです。

割愛 #とは。

まぁとにもかくにもこの新人研修は「ワイワイ過ごせて楽しい!」「たくさんの同期と仲良くなれる機会でよかった!」と感じる環境だったとも言えますし、どこの会社も研修内容はこんなもんだろう、と思っていたので研修最終日にある配属チームの発表をドキドキしながら待機していました。

配属は研修中に行われた配属面談や適正に応じて決定されると知らされていましたが、この配属内容に関しては用意されている枠に対し、一人一人の希望や要望をなるべく叶える形になるように配置したんだな……と感じる結果でした。かなりの数の新入社員がいたのに限られた時間でよく考えられたな、と人事のすごさを実感。

私は配属面談でも入社時の面接と同様、

「コンテンツマーケやオウンドメディア、SEO領域の案件に携わりたい」

ということを伝えていました。その時、面談を担当していた人事の方が

「どちらかというとジェネラリストというよりスペシャリスト志向というか、学生時代からの自分の強みを伸ばしていきたい欲が強い感じかな。幅広くいろんな業務を経験したいっていう気持ちはある?」

と尋ねてきました。これに対し、私は

「最初から自分のやりたい業務が担当できるのであればそれが一番嬉しいですが、せっかくいろんな案件を持っているA社で働くのであれば先述の領域以外の業務も機会があれば広く浅く触ってみたい気持ちもあります。」

と答えました。この気持ちに嘘偽りはなかったものの、

(自分のやりたい領域が明確で、それにチャレンジできる環境なのであれば若いうちから回り道せずそれに全力投球できることが一番成長に繋がる)

という思想も根強かったのかもしれません。人事の方は私の返答を聞いてどこかホッとしたような表情を浮かべながら分かりました、と頷いて手元のボードにメモを記していきました。

発表された配属。私の配属はA社と付き合いが長く、A社の実績紹介のモデルケースとしてもよく取り上げられていたクライアントのチームでした。クライアントの業界の特色上、奇抜で挑戦的な提案は難しいものの保守的で堅実な案件であれば問題なく進められるのではないか、という印象を受けました。

さらに、配属チームでの私の担当業務は新規に設けられたコンテンツマーケの推進。まさに私が面談で希望していた業務だったのです。

「これは本格的に配属されてから働くのが楽しみ…!!」

希望の光が見えた瞬間でした。

そして迎えた5月。仮配属から日を追うごとに私は自分の置かれている状況が配属発表の時にイメージしていたものとは若干ズレていることに気づき始めます。

まず一つにコンテンツマーケの推進はチームとして受注済みの案件ではなく、これから新規で獲る必要があったということ。つまり、コンテンツマーケの案件が獲れない限りやりたい仕事にありつけないということ。これは二人三脚で同じ業務を担当することになったメンターさんも案件受注済みの認識で弊チームに異動してきており、詳細は知らされていなかったそうです。サプライズ。

これに関しては想定外のスタートだったとはいえ、業務経験としてマイナスにはならないためさほど気になりませんでした。むしろ企画書ってどうやって作るのがいいんだろう?色々教えてもらおう!と前向きに捉えることができました。

どちらかというと私が気になったのは二つ目の方で、コンテンツマーケの企画提案や支援の社内実績が私の想定よりも多くなかったということです。もちろん前例はあるものの、コンテンツマーケ領域に長けている方が社内にあまりいないということを聞き、企画提案を練る際に誰に知恵を借りればいいんだろう……という空気を感じることがありました。

これは入社前によく確認すべき事項だったと反省しています。

「コンテンツマーケの案件もある」

面接官は一切嘘を付いていません。案件はあるが、得意としている案件・領域かどうかはまた別問題という事実について配属後のこのタイミングでようやく気づけたのです。

コンテンツマーケはクライアント側にニーズが発生し、こちらからの提案が通らないことには業務が存在しないため、まずはアクセス分析業務から担当することになりました。

流入の分析をしつつ、企画提案の内容も初めてなりにあれこれ考えてみる、という日々を送っているうちに、チームが受注している他の業務や他チームの同期の業務内容を少しずつ把握できるようになりました。そして、A社がメインで扱っている案件は制作~構築領域であり、その業務を担当する部署が大半であることが判明したのです。

入社前に気づけるやろがい!!!!!

本当にその通りなんです。分かります。もっというと募集職種の名前が「Webプロデューサー職」の時点でもう少し調べるべきでした。言い訳になってしまいますがWebの職種の説明って抽象的でふわっとしてるため、どの領域に携わるのか学生にはイメージしにくいんですよね。だからこそ詳細に調べるなり人事に質問すべきだったんです。実際私はエディター寄りの業務もプロデューサー・ディレクターの業務にがっつり含まれるものだと解釈していましたが、そうではなかったのです。いや、含まれていないわけではないんですが、厳密には「メディアプランナー」などの職種を選ぶのが私にとって最善の選択だったと思われます。これは今だから分かることですが……。

面接の機会があるたびに「私がイメージしているような業務もできますよね?」と確認していたものの、その尋ね方では足りなかったのです。もう一歩踏み込んで「御社の実績が豊富なのは制作構築領域でしょうか?私がイメージするような案件はサブで請け負っているような感じでしょうか?」くらいまでは確認すべきだった。この結論に行き着いた時、一つの事実に気づきます。

(あれ、これもしかしてA社の環境だと自分の興味関心領域について社内の優秀な人からナレッジを盗んで成長するのって結構難しい……?)

これが配属から2ヶ月経った7月頃の出来事です。

他にも、配属されて間もなかった当時、私を含め多くの新卒同期が資格取得の勉強に励んでいました。

理由はA社の人事評価において重視されていた「資格取得制度」があるためです。簡単にいうと会社指定の資格を取得しないと評価が上がらない(=給料が上がらない)という制度です。

これについても、二回までであれば受験費用を会社が負担してくれるものの、肝心の勉強するために必要な書籍代は自己負担である点が薄給新卒には地味にキツかったですね…貯金しとけばよかったと後悔しました。

また、試験のためにとりあえず覚えた知識よりも実務で身につけた経験の方が使えるため、せっかく学んだ内容が実務で活かせた実感が薄かったり、そもそも携わっていない領域の資格も少なくないため、時間を割いて勉強する意味があるのかな…と疑問を感じることもなくはなかったです。

せっかくの週末や時間給を費やし、脳死で資格の試験予定をひたすら入れていたのもこの時期です。

8月~9月頃:自分のやりたいことに近い業務ができる社内公募に応募したものの、元の配属チームに留まることを選択

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とはいえ、配属面談でも回答した通り、興味関心のある領域以外であってもweb業界の仕事を学ぶ意味で広く浅く経験したい、という意志はあったためそこまで深刻な事態として受け止めていませんでした。

それはコンテンツマーケの提案が通りさえすれば念願の業務に確実に携われるのだからその日まではいろんな業務をやってみてもいいよね、と前向きな気持ちがあったためです。

そんなある日、気になる社内公募を見つけました。

社内公募は募集条件を満たしている社員であれば誰でも応募でき、採用されれば公募元のチームに異動できるという制度です。

公募の内容は簡単にいうと下記のようなものでした。

自社メディアのプランナー
取材やイベントに参加し、レポートの形で記事を更新
SEOの知識を活かせる。社外向けPRも兼ねたコンテンツ執筆も業務の一つ。
SNSの運用も企画次第で行える

この公募を見た瞬間、私はすぐに応募しました。

既存メディアのグロース業務はまさに私が思い描いていた業務だったからです。

しかも、取材や記事の執筆、SEOの領域はドンピシャで私が学生時代からかじっており、強みとして伸ばしていきたいスキルを活かせるチャンスだと感じたので応募しない理由がなかったのです。

応募してから程なくして、案件担当者から連絡がきて面談日時が設定されました。

(もしかしたらこの選択でなんとなく業務に対してしっくりこない感情をうまく処理できるかも…!)

そんな期待を胸に面談室に足を運びました。

公募元は人事部でした。そのため、面談相手はどちらも新卒研修ぶりに対面する方で不必要に緊張することなくお話しすることができました。

改めて公募内容を説明されたあと、なぜこの公募に応募したのか、といった形式的なやり取りを一通り終えた時、片方の人事の方が口を開きました。

「学生時代にクライアントワークの経験があるから大丈夫だとは思うけど、新卒のこのタイミングで自社サービスに携わっちゃうのはもったいない気がするんだよね〜」

いわく、クライアントワークと自社案件に取り組む時に使う頭は全然違うらしく、スキルを伸ばしたいという私の志向に合致しているのはクライアントワークの方だという説明を受けました。また、自社案件に慣れてからクライアントワークに移行するのは頭の使い方のくせが定着してしまっているので結構難しい、とのこと。

その視点は完全に抜け落ちていたため、なるほどな……と考え込みました。

悩んでいる私の様子に気づいた人事の方は

「来週もう一回面談しようか、僕たちとしては公募に異動でもいいと思うけれど、今後のキャリア形成に関わって来そうだから時間をとって考えた方が後悔しないと思うんだよね」

と。しっかりメリットデメリットも伝えてくれた上で丁寧に向き合ってくれる人事の方に好感を抱きました。そのため、その日は素直に切り上げ、後日仕切り直しという形になりました。

後日。定時後に面接室を尋ねると前回とは異なり人事の方は一人でした。

「考えはまとまった?」

と先方が切り出して来たのをきっかけに、私はまとまりのない考えとつらつらと話した気がします。公募の業務に興味はあるしそれがやりたくてweb業界を志したが、スキルを伸ばすという意味でクライアントワークの経験を積みたい気持ちもあるから今回は見送って今まで通り配属されたチームで学べることを学ぼうと思う、という主旨のことを悩みながら話した気がします。

すると、人事の方は

「これから話すことはA社の人事、としてではなくあくまで俺個人としての意見だけど」

という前置きをした上で次のように話しました。

「正直くろぎさんってうちの会社っぽくない人だよね。どちらかというと表参道とか渋谷にあるクリエイティブプロダクション寄りの人だと感じていて。

当然うちでも学べることはたくさんあると思うけど、うちに長居せずすぐ次の会社に行った方が活躍できると思うんだよね〜。業界的にも転職って全然珍しくないし。

それこそ今の部署にとりあえず1年いて、新卒2年目は半期ごとに異動して複数企業の案件の進め方とかを知ってから3年目でもう転職!くらいでちょうどいいと思うよ俺は」

まさかの転職推奨。

人事という立場であるにも関わらず「うちの会社より他の会社の方が活躍できる」とこのタイミングで言い切ってくれたのは、実は思ってた以上に自分の中で大きい発言だったのかもしれないです。

「……なるほど、そのくらいの勢いで転職しちゃっていいもんなんですね」

「全然ありだと思うよ、もちろんうちで長く働きたいって思ったのであればそれが一番会社としては嬉しいけどね。転職した後にまたうちに戻ってくるみたいなケースもあるし!」

「分かりました、ありがとうございます。今は配属されたチームで頑張ってみようと思います。機会が来たら転職しよう、ぐらいのテンションで過ごそうと思います」

こうして私の異動プロジェクトは静かに幕を閉じたのでした。結果的には何も変わってないように思えるものの、この出来事は非常に大きな収穫があったと思っています。

今振り返ると、これを機にチラチラと頭の片隅に転職という選択肢がなしではない、ぐらいの位置に浮上してきたんじゃないかな、と思います。

とはいってもこんなに早期に転職するとは私も人事の方も考えていなかったとは思いますが……。

10月頃:素直に喜べない評価面談、目指していた社内の職制がアナウンスなしに消失しモヤモヤが増える

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9月末になると新入社員お待ちかねの

ドキッ♡初めての評価面談

が実施されます。先述の資格取得制度を始め、業務遂行度やらコンピテンシーやら諸々の要素を考慮して点数を算出し、それに基づいてグレードが決定されることで給与額も決まるという一大イベントです。

私は夏頃に無心で資格を取っていたおかげで評価点を稼ぐことができたようです。1発目の評価面談では基本昇給しないと前置きされていたにも関わらず、新卒全体では数%しかいない昇給の対象となり、部署内の新卒と比較してもスキル評価点において1番良い評価だったとも説明を受けました。

この時、複雑な気分になったのを覚えています。給与が上がるのは純粋にありがたいけど、業務において自分の能力やらスキルやらを活かした実感は少なかったし、事実自分が貢献できた業務はほとんどなかったのに、資格を取りさえすればこんなに評価されるのか……と。(資格以外にも評価して頂いた点はあると思っていますがあえてこう書かせてください)

それと同時に、資格は取得していないけれど私なんかより難しい業務を担当していて確かな実績を挙げている方がいた場合、どっちの方が評価は高くなるんだろう?という疑問もふと浮かびました。

一人一人担当している業務の領域や目標値って違ってくるはずなのに、それを一律に評価するのって難しいし、資格の取得有無を評価基準の一つの軸として採用するのはあんまり意味がないんじゃないかなぁ、と。

初回の評価面談について、新卒に対していきなり業務貢献といったことは期待していなくて、能力開発の意欲を重視して評価していた、といえばそれまでなのですがその社風が私には物足りないというか、優しすぎるようにも感じたのです。

これはどっちが良い、悪いとかの話ではなく完全に仕事観に関する相性の問題です。

苦しいしキツイし難しい壁に直面した時に、脳みそが汗をかくほど試行錯誤を繰り返し、なんとか自力でアウトプットを出した上で的確なフィードバックを受け、最終的には実力で評価される……といった環境の方が成長速度は早いし、どこにいっても通用するスキルを手にすることが出来る、と脳筋ドM思考を持っている私にとって、この評価面談は良くも悪くも「優しい」と思ったのです。

……と、色々思うところはあるとはいえ、良い評価をしていただけることに越したことはないため、ここだけみると順調に仕事にも慣れ始め、波に乗り始めたかのように思えるかもしれません。

しかし、この評価面談のタイミングでさらに重大な事実に気付きます。

それは、

目指したいWebディレクター像として私が設定していた社内職制が前触れもなく消失していた

ということでした。

一口にWebディレクターといっても様々な領域で活躍するディレクターが存在します。

そのため、A社では社員のキャリアパスを明確化させる目的として社内職制が設けられており、自分が身につけたいスキルや得意にしたい領域に合わせて目指したい社内職制を設定することになっているのです。

私が設定していたのは入社前から思い描いてた業務を行うメディアプランナーに近い職制で、クライアントの課題をヒアリングした上で適切な企画提案を行う、といった職制でした。

しかし、評価面談後に来期の目標設定を行うタイミングでその職制が選択肢から無くなっていたことに気づいたのです。

(……?????)

職制がなくなった事情をチームリーダーに聞いてみると

「俺も詳しいことは分からないけれど、社内でその職制を目指してる人も少なかったし、その領域で活躍できるレベルに到達するのが難しくて社内でも一人二人くらいしかいないんだよなぁ」

と説明されました。

難しいからこそ、社内で希少な人材だからこそ目指すんだろ!!!!!!!

くろぎは激怒した。必ず、かの邪智暴虐な(以下略)

これは本格的にA社で長く働くビジョンが見えなくなった一つのきっかけでもありました。

詳しい事情は分からないものの、職制からなくなったということはすなわち私が目指していたような人材を必要とする案件を会社として積極的に獲得しない、ということを暗に意味していたのではないかと感じたからです。

すでに説明している通り、A社がメインで受注している案件はサイト構築・制作で、それを指揮する職制はバッチリ用意されています。他には広告運用を得意とする職制やUI/UXの設計改善を得意とする職制などもあり、いずれかを得意分野にしたい方にとっては申し分のない環境なのは間違いないでしょう。

じゃあ、私は?何を目標にして日々の業務に向き合えばいい?

元から興味関心のある領域以外の業務に関しても新卒のうちは広く触れよう、という意思があったのは社内の職制に私が将来的に目指したい人材像が用意されているという前提があったから。「すぐに興味関心のある業務ができなくても、社内には確実にそこにたどり着くためのルートが用意されているのだから今は焦らずいろんな経験を積もう」と思えたからです。

それがなくなってしまった今、「自分が挑戦してみたい領域に長けた社員の方も少なく案件の前例も限られている中、自分が目指していたものはオフィシャルなキャリアパスとしても扱われなくなった。配属チーム内でコンテンツマーケの提案業務はあるものの、それもいつ実現できるかわからない。果たしてこのままここで働き続けて私が求めるようなスキルと経験を身につけることはできるのだろうか」

というモヤモヤと焦りがどうしても生まれるようになったのです。

生き急いでいる、と言われるのはこの辺りの考え方だと思うのですが、チームに配属されてから半年。分析業務と広告運用業務に携わり、それなりにその業務の面白さも感じつつ、やはりどうしてもweb業界に足を踏み入れるきっかけとなったオウンドメディアやコンテンツマーケへの興味関心は強まる一方でした。

自分の中でやりたいことが明確なのに、なかなかそれに携われないもどかしさ。

新卒のうちから自分のやりたいことばかり出来るわけではないと頭では理解しつつ、もしかしたらそれを実現できる環境がどこかにあるのかもしれない、と何の生産性もないたらればを何度も頭の中で繰り返すようになりました。

今は新人、何事も経験。

そう思って目の前にある業務を無心で片付けることに専念していました。そして、

「A社が魅力的な会社であることには間違いないけれど、少なくとも私の目指すキャリアを考えると相性が悪い気がする」

そんな思いが日を重ねるごとに確信に変わりつつあったのです。

偶然か必然か、ちょうどその時期からこれまで数年に一回なるかならないかぐらいだった扁桃炎を月に一回のペースで発症するようになり、完全に万全な体調で仕事に臨めなくなりました。ちなみに3月に扁桃腺摘出手術が決まりました。応援してください。

11月に入ると、体調と心の余裕がますます無くなり、毎日じりじりと消耗されるような心地がしました。

仕事に楽しさを見出せなくなった時、他の社員さんが忙しかったためにお世辞にも状況把握のための情報共有が丁寧とは言えない業務を丸投げされたことで、フラストレーションが溜まっていた私と、別の業務で忙しくなったメンターさんの間で、業務を齟齬なく遂行するのに十分なコミュニケーションを取ることができなくなっていました。

そんな時に、自分の担当業務に対する意識の甘さから発した言葉がメンターさんを傷つけるという出来事が起こりました。

(あぁ、自分は与えられた職務を十分に全うすることすらできないのか。)

自分の意識の甘さを恥じた一方で、

(なぜ私が怒られないといけないのか。こんな思いをしてまで今の仕事をしないといけないのか)

という悔しさ……これが正当な感情なのか、甘えた感情なのか今でも判別できませんが、とにかくそんな攻撃的でマイナスな感情が生まれている自分に気づき、いよいよこれはまずいところまで来た、と感じました。


11月下旬:働き方に対するアドバイスを求め、信頼している大人の方に連絡・食事へ

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このままでは私もきついし同じチームの人にも迷惑をかけてしまう。クライアントさんにも真っ当に向き合うことができなくなってしまう。

そう直感的に感じたものの、何が正しいのかわからなくなっていた私は一度誰かに事の顛末を話すことで自分の状況を整理し、考えをクリアにする必要があると感じました。

私の性格を理解したうえで第三者の冷静な視点から話してくれる人。

その時、ふと思い浮かんだ人物がいました。

それが学生時代の長期インターンの時にお世話になったBさんでした。

Bさんは現在、オウンドメディア支援会社の取締役を務めるバリキャリのお姉さんです。コンテンツマーケ・SEOの領域でかなりの実績を持つ方で、キャリア観や純粋な能力の高さ、そして人柄において尊敬できる方でした。

Bさんと一緒に仕事をしたのは大学3年の秋から4年に進級するまでのたった半年でしたが、この半年がかなりしんどかった一方かなり達成感があり、私のキャリア観に間違いなく大きな影響を与えていました。

Bさんと最後に連絡を取ったのは大学4年生の頃。会ったのはもう2年近く前の話です。

(お忙しいだろうし、いきなり会って話したいって連絡を取って大丈夫だろうか……)

連絡を取ろうか悩んでいましたが、会社でのモヤモヤ話を逐一耳にしていた父親が

「絶対連絡したらBさんは喜んでくれるよ。親身に相談に乗ってくれると思うしくろぎにとって良い道筋を提示してくれると思う」

と背中を押してくれたのをきっかけに思い切って食事に誘ったのです。

……こちらの心配をよそに、数分後にはBさんから返事が返って来ました。

しかも、「久しぶり!ぜひ会おう〜!」という、非常に心強いお返事でした。

さすが仕事のできる人は返信速度が速い。

お食事に誘ったのが11月の下旬で、実際にお会いすることになったのは12月に入ってすぐの夜でした。

「お久しぶりです、すみません突然連絡してしまって」

「久しぶり〜!ね、2年ぶりくらいだよね!?連絡くれて嬉しかったよ〜ありがとう!」

12月某日。予約していたお店の前でBさんと2年ぶりの再会を果たし、香ばしいピザの香りに誘われながら店内に足を踏み入れました。

席について雑談もそこそこに、Bさんが本題に切り込んで来ました。

「話したいことがあるって連絡してくれたけどどうしたの?」

ここで私は初めて入社してから今日に至るまでのモヤモヤや不安、自分の今後のキャリアについてどう歩んでいくべきか、といったぐちゃぐちゃした思いを頭の中で必死に言語化し、組み立てて文脈を作り、吐露しました。

Bさんはこちらをじっと見つめながら頷き、私の話が終わるまでゆっくり耳を傾けてくれました。

合間合間で前菜を口に運びつつ、ある程度私が事情を全て話し終えた段階でBさんが口を開きました。

「くろぎちゃん側の話しか聞いてないから、詳しいことはわからないけれど、A社も悪くないし、くろぎちゃんも悪くないし、話に出てきていたように相性が悪かったというか…いろいろモヤモヤしちゃうのも仕方ない気がするかもな〜〜私だったら転職しちゃう!」

率直な感想をあっけらかんと話すBさん。そして、続けて

「そっか〜〜くろぎちゃん、めっちゃ頑張ったじゃん。すごいよ、もう十分頑張ったと思う。私だったら我慢できないもん!」

と励ましてくれたあと、「や〜今日はもういっぱい食べて元気出して!私は一回お手洗いに行ってくるね」とBさんは席を外しました。

この時の私はBさん特有の軽いテンションで励まされた言葉にものすごい温かさを感じてしまい、Bさんが視界からいなくなったと同時に眼前の光景が滲みました。

(話してよかったかも、私の感じていたモヤモヤを否定する必要はないんだ)

と思えただけですごく救われた気持ちになっていたのです。

明日から前向きに頑張れそう。そう思えた瞬間お腹が一気に空いてきたような気がして嬉しくなりました。どのピザを注文しようかな、なんて悩む余裕が少し生まれたほどです。

が、本番はここからでした。

お手洗いから戻って来たBさんは何かを企んでいるような、少し楽しげな表情を浮かべ、席につくやいなやこう発したのです。

「急なんだけどさ、くろぎちゃん、うちに転職しない?」

頭がフリーズする私。目をキラキラさせるBさん。

「え、私がBさんたちの会社に転職、ですか?無理ですよ!!」

実は、Bさんから入社を誘われたのは初めてではなく、厳密に言うとこれが2回目でした。

1回目はインターンでお世話になっている時でした。

「うちの会社さ、見ての通り新卒は取ってないんだけどくろぎちゃんならいいよ!どう!?」

その時も私は断っていました。

理由は明確。Bさんたちが働く会社はフリーランスとして働く実力のある人たちが集まったプロフェッショナル集団で、実力も経験もない私が新卒で入社しても足手まといになるだけでとてもじゃないけど食らいつく自信がない、と強く感じたためです。記事冒頭に記載した、A社を選んだ理由に繋がってきますね……

Bさんは私の返答にはおかまいなしに続けます。

「いや、くろぎちゃんなら大丈夫!数日前にくろぎちゃんから連絡来たじゃん?あの連絡が来るちょっと前にも社長とくろぎちゃんの話してて!2年前のインターンなのにすごくない?だから私このタイミングで連絡来たことに結構びっくりしちゃって!」

「くろぎちゃんの後にもインターン生を何人も見て来たけど、その中でもくろぎちゃんはやっぱり優秀だったなぁって思ったし、前に入社を断られた時も諦めるつもりはなかった!絶対どこかのタイミングでくろぎちゃんはうちにくると思ってたし、うちに連れて来るつもりだった!」

「今ね、私のもとでちょうどくろぎちゃんだったら任せられる仕事があるから真剣に考えて欲しいの」

ここから、Bさんは真面目な顔になり、今の会社の事業戦略や今後の展望について一時間ほどかけて説明してくれました。

この間、私は夢を見ているかのようなふわふわした頭でBさんの話を聞き続けていました。

私がインターンでお世話になっていた時とは会社の置かれている環境が大きく変わり、これから拡大していくための転換期を迎えていること。

そのためには本格的に自社のPRと人材戦略を考えていく必要があること。

その業務をBさんが責任者として担うことになったこと。

ただし、Bさんはすでに大量の業務を抱えており、なおかつPR採用は全くの未経験のため負担が大きいこと。

過去にBさんのアシスタントとして働いていた私であれば、Bさんと一緒にPR採用の業務にあたることができると期待してくれていること。

インターンの時の様子から、PR採用のアシスタント業務だけでなく、プレイヤーとしてコンテンツマーケ・SEO領域の経験も積むことで成長できると信じてくれていること。

「まずはアシスタントとして入社して、一年間は修行するつもりで私(Bさん)のもとで働くのがいいと思う!最初はきついかもしれないけれど若いうちからこの環境に身を投じる価値はあるし、絶対に後悔させない」

ザッとこれだけの思いをBさんからまっすぐな言葉でぶつけられ、極めつけに

「一回社長と会って話して欲しい!それが一番いいと思う!」

と社長面談を提示された段階で、すでに私の中では転職という選択をするには最もタイミングが良く、自分の価値観に照らし合わせても納得のいく選択であるという確信を得ていたのです。

「ぜひ社長にもお会いしたいです、社長と会うのも久々になります」

そう返事をした私の中に、迷いは一切ありませんでした。


12月上旬:内定を承諾し、突然の退職の申し出

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Bさんから衝撃の提案を持ちかけられて2日後、私は社長と対面していました。

「久しぶりじゃん、元気してる?」

「扁桃炎だったので元気ではないですがなんとかやっています」

面白みのない返事をしながら社長にもBさんに話したのと同様の経緯を語ります。

「くろぎにとって納得のいく選択が一番だと思うけど、(多忙な)Bのことを救えるのはくろぎだと思うし、Bの言うことを絶対的に信じて必死に喰いつけばたった一年働いただけでも同年代とは比べものにならないくらいの実力が身につくから、修行のつもりでうちに来なよ」

社長からの言葉は決意を揺るぎないものにするのには十分すぎるものでした。

Bさんが最も信頼している人物である社長から「Bさんを信じて働けば絶対に力がつく」と言われてしまえば、その言葉に愚直に従うことに不安を感じる隙がなかったのです。

その後、Bさんが合流し、3人で社長行きつけのオカマバーへお邪魔しました。

社長とBさんがべろべろに酔いながら「くろぎ、うちで働こう、絶対大丈夫、何があっても俺らは全力で守るしいつでもどこでも駆けつけるし味方だ」と話してくれたのが本当に可笑しくて嬉しくて温かくて、正直この会社に転職してしまえば求められる業務のレベルや成果の高さから泣くほど辛く険しい日々になることは分かりつつも、そんな道を選ぶ自分にワクワクを抑えられなくて、ついに店内で私は

「修行するために!!!転職します!!!!」

と宣言しました。転職決定。ママ…背中を押してくれてありがとう。

そのまま午前3時過ぎまでバーで過ごし、初めてタクシーに乗って自宅に帰宅しました。意外と都内から地元は近かった。

そして日が昇ったころ、正式に内定連絡が届き、そのまま内定を承諾しました。

「すみません、少し相談したいことがあるのでお時間いただいてもいいですか?」

内定承諾後、私はチームリーダーにそう連絡し、了承の返事を得たためミーティングをセッティングしました。

そして、ミーティングの時間。おそらく業務や体調に関する相談を想定していたであろうチームリーダーに対し、初めて告げたのです。

「急な話で恐縮ですが、実はこの会社を退職しようと思っております」

チームリーダーは絶句し、なんとも言えない表情を浮かべていました。

おそらく、私が社内で業務に関する相談を一切せず、異動といった選択もすべて飛び越えていきなり退職の意思を固めていたことに対して複雑な心境だったのではないかと思います。

退職したいと思った理由やいつ頃の退職を希望しているのかといったあたりの話を一通り聞かれ、より自分のやりたい業務ができる環境に転職できる機会を得たことと、1ヵ月後には退職したい、ということを正直に話しました。

チームリーダーは

「くろぎの意思は理解したけど、すぐには承諾できないし急すぎてかけたい言葉が出てこないから少し時間が欲しい」

と言い、数日後に再度ミーティングを行うことになりました。

数日後。チームリーダーは重い口を開きました。

「くろぎの人生だから、決めた事に対してとやかく言うつもりはないしそれはそれでいいと思う」

「けれど、一社会人として言いたいのは退職の判断が早すぎる。まだ会社のことを理解しきれていないのに次に行くのは勿体無いし、意味がない」

「やりたい業務があると言っていたけれど、視野が狭い。今の時期はもっと視野を広く持っていろんな業務を経験することでもっと興味のあるものが見つかったり自分の得意な領域が見つかるかもしれない。2~3年くらいかけて一通り経験してからくろぎがやりたいと思っている領域に携わるのでも遅くないんじゃないか」

「なにより入社してから1年も経たないで転職するのは……リスクが高すぎる。体調面も心配だし、そこまで生き急ぐ必要はないと思う」

どの言葉も、至極真っ当なことを伝えてくれていると思いました。何も間違っていないし、チームリーダーが本気で私のことを考えてくれていることも伝わりました。

だからこそ、私は申し訳ない気持ちが生まれていました。

言っていることがいくら正しいと頭ではわかっていても、私の転職の意思は一切揺らがなかったから。

一般的に安心で正しいとされている、ましてや私なんかよりも社会人経験の長い上司の経験則からアドバイスしてくれている言葉よりも、自分が一度強く納得してしまったリスクのある道を選ぶことの方が直感的に正しく、楽しく、自分らしいと思ってしまっていて、(そういえば私ってかなり頑固なんだよなぁ)とぼんやり思い出していた。

メンターさんにも個別で退職の意思を告げた。

「そっかぁ…きっと、1年も経たないで辞めると周りの人からはしょうもない人って思われるけど、最終的には自分の意思が一番だから、いいんじゃない…?

ただ、在籍期間が数ヶ月しか変わらないなら3月末まで在籍して、せめて1年は勤めていたっていう事実を作ってから次のところに行く方が絶対いいと思うなぁ」

こちらの反応も反論の余地がない正論だった。唯一、(周りの人って誰?)と意地悪な質問がふっと沸いて出たものの、それはそっと心の中にしまいました。

そのあとはトントン拍子に話が進み、退職申請は無事に受理。申請時期の都合で1月末の退職が正式決定となったのです。

年内最後の出勤日の夜、私は同じチームの同期二人をご飯に誘っていました。

日頃の業務で関わりがあった、数少ない同期に対しては自分の口から退職を伝えたいと思ったからです。

ただ、二人ともご飯に誘われていた段階で異動か退職かのどちらかを薄々予想していたようでした。(私から同期をご飯に誘うのが天変地異なので…)

退職を決めた理由などを一通り話した後、同期の一人がぽろっとこぼした「退職決める前に俺らにも相談してほしかったな」という言葉がかなり刺さったのが唯一の心残りです。同期にはもう少し心を開いて接しても良かったのかな、と。

ですが、二人とも私が決めたことなら応援する、と言ってくれたため未練なく退職日を迎えることができ、ついに私は転職先の会社へ出社する日を迎えました。

人生タイミング。自分が納得できる選択であれば怖気付く必要はない

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卒論並みのボリュームとなってしまいましたが以上が私の退職・転職に至るまでの流れでした。

正直、この記事は前職の同期が読んだらあんまり面白くない気持ちになるんじゃないかと思ったものの、なるべく書ける範囲で正直に、思いのまま記述したつもりです。

簡単に整理すると

・転職に対して悪いイメージを元々持っていなかった(業界の傾向、自身のキャリア観)
・自分がイメージしていた業務とA社での実際の業務の間に溝があった(就活時のリサーチ不足)
・A社の細かな制度や社風に対し「?」があった(入社前に測りきれなかった相性の問題)
・自身の強みを磨きたいという目標をA社で達成するビジョンが見えなくなった(入社後の制度変更によるどうしようもない出来事)
・ちょうど自分がドンピシャで興味のある領域で活躍し、信頼している方から直接会社に誘われた(これ以上にない転機、チャンス)

これらの要素が全て揃った結果、私は躊躇することなく転職を選ぶことができたと思っております。

きっと、実際の業務が想定とは違うものだったとしてもキャリアパスを指し示す社内職制が消えてなければ「今はこういう領域の業務も良い経験として頑張れる!」と思えたでしょうし、転職に誘われていたタイミングでA社の社風に満足していたら「あと数年はA社で堅実にしっかり経験を積みたいので」と断っていたと思います。

人生タイミング。こういう時の直感は信じていいと私は思っています。結局自分の人生を決められるのは自分だけですし、自分一人が納得しているのであれば周りの人がどう思おうと関係ないのです。まぁこれまでの人生直感とタイミングを信じて後悔したことがないからそう言えるだけかもしれませんが。笑

人の数だけ転職の理由がある。

賛否両論あるかと思いますが、この記事を読んだ方に

「自分の会社は恵まれてるな〜」だったり「自分は絶対こいつみたいに軽率な転職はしないように肝に命じておこう」とか「そういう転職なら悪くないのかもしれない」とか、少しでも何かを残せたのであれば幸いです。

A社で関わりのあった皆様。

10ヶ月と大変短い期間ではありましたが大変お世話になりました。

最大限私の希望に沿った配属をして頂き、チームにも恵まれていたにも関わらず、活かしきれず早々に退職という選択をしてしまったことは心苦しい気持ちがある一方、自分勝手ではありますが「そういえば早々にやめた新人がいたな〜、今頃どうなってるんだろう」とふとした時に思い出していただければ嬉しいな、とも思います。

体調不良で何度も欠勤した時、無理せず休んで、と言葉をかけてくれる環境は非常にありがたかったです。

急な申し出でご迷惑をおかけしたことも多々あったかと存じますが、その分強い人材となっていつか見違える程変わった私をお見せできればと思います。

【補足】2021年現在のくろぎの職歴とは

この記事を公開した後、くろぎはどのような社会人生活を送ってきたのか。
現在、新卒2年め、春から3年めに差し掛かるがWeb業界の片隅で元気に過ごしている。今やっている仕事の詳細は以下の記事を読んでいただくのが良いだろう。転職しても一貫してコンテンツマーケティングに携わっている。

新卒入社した会社を1年足らずで転職したことはすでに触れているが、実はこの記事で書いたB社についても1ヶ月で泣きながら退職し、現在は4社めの会社に在籍している(波乱万丈)。

そのため、企業規模も社員数千人単位のところから10人規模のところまで、いわゆる大手企業からスタートアップに近いベンチャーまで流浪の民のごとく渡り歩いている。

1社目:2019年4月〜2020年1月末
   デジタルマーケティングを手がけるWeb制作・運用会社
   Webディレクター職(この記事でのA社)
2社目:2020年2月〜2020年3月
   オウンドメディア支援のベンチャー企業
   コンテンツディレクター職(この記事でのB社)
3社目:2020年4月〜2020年11月半ば
   Webマーケティング支援のベンチャー企業
   コンテンツディレクター職
4社目:2020年11月〜現在
   Web集客コンサルのベンチャー企業
   取締役兼コンテンツディレクター職

2社め、3社めの転職理由は主に「激務による体調不良・ストレス」起因のものとなっている。特に3社めの転職に関する詳細は過去記事をどうぞ。全人類健やかに働いてほしい。

4社目に突然現れた取締役については以下の記事をどうぞ。


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