最後の日
私は洞窟の中にいた。
人に話すこともなく、
触れ合うこともない。
密事への憧れを抱き、
灰になる不安に焼き焦がれる。
その時が来るまで、
叙情を数えるだけの部屋で。
呼吸をするにも意識が必要で、
1秒毎の苦しみを覚えていく。
最後の日、そんなことを感じて果てたい。
私は洞窟の中にいた。
色の感情を知ることもなく、
伝達で省いた意図を汲み取れない。
馴れた手つきで触りあって、
自我を狂わす匂いを辿る。
乞いで差し出す果実は、
まるで祈りの姿のようだ。
垂れる密を愛する、
指で温度を確かめる。
最後の日、私は弱く鳴いている犬なのさ。
私は洞窟の中にいた。
いい加減飽きてしまったので、
博液を塗り付け髪を掴む。
射し込む光は無群に魅惚れ構え、
陶筒の傲慢が命を吹き返す。
所詮はそれの繰り返し、
痛みはない、苦痛もない。
最後の日、もしかしたら消えているかもしれない。
汗ばむ夜道に転がって、
寝ているのに動けないままだった。
最後の日が来るのをただ待っていたい。
身体に火が点いたところで、
ベットで目覚め息を整えた。
夢なら私の表情を見てみたかったのに。
私は洞窟の中にいた。
最後の日、私の話を聞いてください。
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