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はじめての新製品開発担当者が知っておきたい デザイナー選びのポイントと見積依頼時に伝えること

はじめに

はじめて新製品を開発の担当者になり、社内にデザイナーがいなければ、社外のデザイナーやデザイン事務所に依頼することになります。
依頼の仕方を失敗すると、想定以上の予算がかかったり、スケジュール通りにすすまないなど、満足のいくプロジェクトにならない可能性が高まります。
お互いがスムーズに依頼にすすむために、依頼をするときに、どんなことに注意すればよいのか、デザイナーの選び方や最低限伝えるべき4つの基本事項をご紹介します。


新商品開発におけるデザインの役割

価値提供を重視した商品開発

商品開発において最も重要なのは、社会に、ユーザーに「提供する価値を考える」ことです。
単なる「モノ」としての商品ではなく、どんな人がどんな環境で使うのかを深く考え、「使い手の豊かな生活」をデザインすることが求められます。
企画段階からこれらのポイントについてデザイナーと議論を進めることで、製品が持つ価値や魅力を最大限に引き出すことが可能となります。

例えば、新しい電化製品を開発するとき
単に機能性だけでなく、そのデザインがどのようにユーザーの生活を豊かにするかを考える必要があります。ユーザーがどのようなシチュエーションでその製品を使うのか、使用後の片付けがどれだけ簡単か、製品がおかれる空間とどのように調和するかなど、多角的な視点からデザインを考えることで、製品の価値が一層高まります。
デザイナーはユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させるための提案も行います。

デザイナーは、使い勝手の良さや視覚的な魅力、ブランドイメージの一貫性など、さまざまな要素を総合的に考慮してデザインを進めます。これにより、製品が単なる道具としてではなく、ユーザーの生活に寄り添うパートナーとしての価値を持つことができます。

デザイン見積依頼のまえに

目的とコンセプトを明確に、デザイナーに想いを伝える

デザイナーと打合せ、その前に、まず「企画・コンセプト」を練ることが重要です。
企画・コンセプトといわれるとむずかしいと感じる方は、商品が社会に訴えたいこと、他の商品との差別化ポイント、誰に使ってほしいかといいかえてください。「こんなことをしたい」「こんな価値を提供したい」など新製品に盛り込みたい「想い」をもって、デザイナーと打合せをしましょう。製品の方向性がぶれずにプロジェクトを進めることができます。
もちろん、市場動向、市場調査や競合分析、ターゲット市場分析、ターゲットユーザーの性別や年齢、ライフスタイルなどカスターマー情報、知財情報、製品の基本的なアイデアやコンセプトがあれば、より詳細な打合せとなりますが、まずは「想い」が大切です。

色々と悩んでいいるときは、デザイナーに「悩んでいる」ことを伝えて
どんな回答がかえってくるかも、判断基準になります。

いろいろなデザイナーにあってみよう

デザイナーやデザイン事務所を選ぶとき、複数の候補から比較検討することをお勧めします。
それぞれによって、デザインに対する捉え方や取組の仕方が違うものです。デザインプロセスも違ったりします。
見積の内容を確認し、コストパフォーマンスや納期の信頼性を総合的に評価しましょう。

デザイナーを選ぶ4つのポイント

デザイナーを選ぶ時には、「知恵」「知識」「技術」を備えたデザイナーを選びましょう。

1)実績を確認する

デザイン事務所を選ぶ際の、まず過去の実績を確認します。
似たようなプロジェクトを手がけた経験があるかどうか、どのようなデザインが得意なのかを把握することが重要です。
実績を確認するときには、そのデザイナーや会社が「何を」担当したのか、「どの程度」「どんなポジションで」かかわったのかを質問してください。
商品の「形状」をデザインと思っていたら、「操作部分の一部」を担当していた。ということもあります。

2)コミュニケーションがとりやすいかどうか

よい商品をつくるには、相互のコミュニケーションが欠かせません。
デザイナーとの相性も大切な要素です。「かっこいい」という言葉からうけるイメージが似ているなど、初期の打ち合わせで、デザイナーがこちらの意図やニーズをしっかりと理解しているかを確認し、スムーズなコミュニケーションが取れるかどうかを見極めます。

プロジェとがすすむと、デザインの方向性や製造上の課題について、適切に情報を共有することで、より良い結果を得ることができます。定期的なミーティングやフィードバックの機会で、感覚が似ている人との仕事では、プロジェクトが順調に進行します。

3)デザイナーの知識や経験を確認する

依頼しようとしている分野の知識や経験があれば、一番よいですが、なくてもそれと似た経験がある、付随する内容の知識があるかどうかを確認しましょう。
特に、新商品開発においては、「量産化への対応能力」が重要であり、製品設計ができるかどうかを確認しましょう。いくらきれいな「絵」があっても、商品化する知識や経験がなければ、商品化がむずかしいからです。
商品化するならば
・3次元CADデータが提供できるか、
・素材や加工を知っているか、
・コスト試算・計算ができるか
など、量産化への対応能力のあるデザイン事務所を選びましょう。その方が、スピード感をもって開発がすすみ、製品の品質や市場での競争力が大きく向上します。

4)デザイナーのネットワークを活用できるか

デザイナーの持つネットワークを活用することで、さまざまな企業と連携し、より幅広い商品開発が可能となります。多くの企業と交流があり、それぞれの企業の特性(技術や得意分野、対象素材など)を理解したデザイナーを選びましょう。
デザイナーのもつネットワークから、特定の素材や技術を持つ企業との連携を通じて、独自性のある製品を開発することができます。また、デザイナーが持つ市場の知識やトレンド情報を活用することで、製品の競争力を高めることができます。デザイナーとのネットワークを最大限に活用することで、プロジェクトの成功確率が大幅に向上します。

見積を依頼するために伝える4項目

まずは、ブリーフィングから

初めてデザイナーやデザイン事務所に見積を依頼する場合、経験がなく不安を感じるかもしれませんが、基本的なポイントを押さえることで、問題なく打合せ、ブリーフィングをお願いしています。
ブリーフィングは、事前レクチャー、事情説明、背景説明と言われています。見積を依頼しようと思った背景、見積に必要な情報を提供する場となります。
ブリーフィングを行いながら、先ほどのデザイナーの選び方のポイントをもとに「いっしょにプロジェクトをすすめられる」協業会社としてうまく協力関係がきづけるところかどうかを見きわめます。

1)何を目的とした商品なのか・コンセプトなど

デザインの依頼時に伝える一つ目は、何を目的とした商品開発なのか。です。
具体的にこの商品は、だれがどんなふうに使うこと想定していて、そのモノが何の目的のためにつかれるのか。など細かくデザイナーと共有します。これにより、デザイナーがプロジェクトの全体像を把握し、適切なデザイン提案を行うことができます。また、どのような価値を提供したいのか、誰に対してどのようなメッセージを伝えたいのかを共有することで、完成イメージのずれを防ぐことができます。

内部基盤、装置、また、会社ロゴやマークなど、デザインに入れるべき素材がある場合、共有することを忘れてはいけません。

2)依頼内容・範囲

デザインの依頼時に伝える二つ目は、プロジェクトの依頼範囲を明確にすることです。
商品開発の場合、企画、市場調査(リサーチ)、コンセプトづくり、アイデア展開、デザイン作成、製品設計などデザイナーが携わる範囲がかなり広くなってきています。
だからこそ、プロジェクトにおいて「どんな内容」を依頼しようとしているのか、を漏れなく伝えることが大切です。

依頼範囲を具体的にすることで、見積もりが正確になり、予算やリソースの適正管理が可能になります。これにより、予期せぬ追加作業やコストの発生を防ぎ、プロジェクトがスムーズに進行します。

3)成果物

デザインの依頼時に伝える三つ目の内容は、成果物です。
デザイン案は何案必要なのか、どんな形式で納品してほしいのか。など成果物の内容を連絡します。何を提出しなければならないか、が明確にするためです。
依頼によっては、複数のパターンを提示したのちに、デザインを選ぶ場合もあるでしょう。その場合は、複数案から選ぶことを伝え、数パターンのデザインを出して欲しいと依頼しましょう。
そうすることで、デザイナーはプロジェクトの成功基準を理解し、目標に向けた具体的な作業計画を立てることができます。また、成果物の仕様や品質を事前に明示することで、納品物の品質管理が容易になり、期待通りの結果を得やすくなります。

また、コンペになる場合はコンペであることを伝えて依頼するようにしましょう。

4)スケジュール

デザインの依頼時に伝える4つ目の内容は、スケジュールです。
プロジェクトのスケジュールを明確にすることで、デザイナーが作業の優先順位を決定し、納期を守るための計画を立てることができます。スケジュールを共有することで、プロジェクトの進行状況を管理しやすくなり、各段階でのフィードバックや調整がスムーズに行えます。これにより、プロジェクト全体の進行が効率的になり、デザインの完成度が向上します。

あいまいな回答はトラブルのもと

依頼する側が、未検討や不明な内容について、あいまいな回答はせず「開始までに提供される情報」のか、「共に検討する内容」かを伝えます。共に検討する。と言われれば、見積に含めて提示するはずです。

明確な見積が必要であればあるほど、プロジェクトの目的や期待する成果、ターゲット市場について詳細に説明し、デザイナーが適切な提案を行うための基盤を提供します。また、プロジェクトのスケジュールや予算についても具体的に話し合い、成果に対する双方の期待値を調整します。

これにより、後々のトラブルを未然に防ぎ、プロジェクトがスムーズに進行することが期待できます。

いい商品は、互いの協力があってこそ生まれる

デザイナーに初めて依頼をするとき、何を伝えればいいのか困ってしまう。経験がないので…とお伝えいただくことが多いです。
「全部おまかせ!」とばかりに「かっこいいのをちゃちゃっとお願い(私・関西なので、ちゃちゃっととか、シュッとと言われることが、まあまあ、あります。)」では、「思ってたものと違う」と双方の意見に齟齬がでやすくなります。

デザインに関しての知識の有無はさておき、まずは依頼前に4つのポイントをまとめることから始めてみてください。
具体的なイメージの共有、評価のしかた(いつにだれが決定するのか)、余裕あるスケジュールを組んで依頼することは、成果物のクオリティを上げるためだけでなく、企業の信頼にも繋がります。

ぜひ、素敵な商品開発となるように、デザイナーへの依頼要件をまとめてみてください




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