見出し画像

ノルウェー政府年金基金の注目するESGテーマとは

以下の記事ではノルウェー政府年金基金が昨年に過去2番目の高水準となる収益率を記録したことを伝えています。

思えばCOMEMOで書いた最初の記事も以下の通り、ノルウェー政府年金基金についてでした。

上記の記事のタイトルになっている日本の上場企業の半数弱に投資をしているという状況は変わっていません。2019年末時点で同基金は1,542社の日本企業に投資をしており、日本の上場企業数が4,000社弱であることを考えると、その半数弱に投資をしていることになります。

多数の日本企業に投資をしていることになりますが、もちろん全ての企業に同じスタンスで万遍なく投資をしているわけではありません。2019年末時点で2018年末時点と比べて、投資額が増加した企業が1,009社、逆に減少した企業は443社、新規に投資した企業は90社となっています。日経平均株価は2019年に約18%上昇したことを考えれば、投資額が増加した企業が減少した企業を大きく上回るのも当然と言えます。

ノルウェー政府年金基金はノルウェー国民の年金の運用を司っているわけですから、高収益を狙える企業への投資を増加させることにより責任を果たしています。一方、同基金はESG投資家としても著名です。全ての投資においてESG要因を最重視しているとは限りませんが、少なくとも社会の趨勢を判断した上で、いわゆるESGテーマと関連の深い企業への投資も積極的に行っているように見えます。

そこで2019年に投資額を倍増させた日本企業で、持分上位の企業の中からいくつかESGテーマをピックアップしてみたいと思います。

1.AI/IoT

最初の日経新聞の記事でも指摘されているようにAI/IoTテーマに該当する企業が多いです。AI/IoTが人間の仕事を一部代替してくれるという視点に立てば、働き方改革の一助を担っていると言えます。またセンサによりインフラの老朽化を事前に察知できれば、防災にも一役買っているとも言えるのです。具体的には半導体の材料であるシリコンウエハ製造のSUMCOや信越化学工業、半導体製造に欠かせない技術を持つアルバックやダイヘン、電子部品の1つであるコンデンサのメーカーである太陽誘電やニチコンなどが挙げられます。

2.働き方改革

AI/IoTの効果の1つにも挙げられた働き方改革については他にも関連する企業があります。オフィス家具大手の内田洋行は単に家具を卸すだけではなく、自社の成功例を基に働き方改革に関する様々なコンサルティングサービスを展開しています。その活動は一般企業向けだけにとどまらず、教員の働き方改革にも及んでいます。

3.安心・安全

防災はAI/IoTの効果の1つですが、安心・安全の確保とも言い換えられます。例えば日本信号は鉄道用信号大手の一角で、道路用の信号も扱っており、まさにこのテーマにぴったりと言えます。日本国内では更新需要も限られていることから、新興国への進出にも着手しています。ただし安心・安全の軸でその他の製品も展開している点も注目すべきでしょう。鉄道向けの自動列車制御装置やホームからの転落を防ぐためのホームドアも同社は手掛けています。

4.気候変動適応・省資源

防災も気候変動に関連していえば、気候変動の悪影響への適応と読み替えられます。気候変動の悪影響としては近年日本を襲っている台風やゲリラ豪雨、それに伴う土砂災害などがあります。前田工繊は河川や道路補強を事業としており、様々な災害からの復旧が増えることを見越して投資を行っている可能性があります。また災害その他に伴う建設関連の産業廃棄物の処理業者の1社であるタケエイにも同基金が投資しています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?