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【人】私は誰か問うてみること


私は自分に問いかけます。

それは「私は誰か?」という問いです。



私は日本人です。

私は会社員です。

私の体重は〇〇kgです。

私の貯金は〇〇円あります。

私の肌の色は肌色です…


私は「自分はこういう人間だ」と信じていることについて、延々と答えます。

でもこんなことが「私は誰か?」という問いの答えなのでしょうか。



これらは全て仮初の属性です。

生きている環境が変われば、私を自分と定める諸属性は、たやすく変わっていくでしょう。



もちろん変わらない属性もあります。

生まれついて持ってきた属性については、死ぬまで一生事はなさそうです。

私は日本人だ…

私の父親は誰それだ…

私の血液型はA型だ…



私はこの様々な属性を、産まれた時からの連続した記憶を根拠として、支えているのです。

それなら私は、これらの変わらない属性を全て集めた複合体と言えるでしょう。




でも変わらないからといって、それが「私は誰か?」の本当の答えになるでしょうか。



生まれついて持っている属性は、似た場所と時、環境のもとに産まれれば

誰でも持てる属性です。そこには個性がありません。

そんな無個性的なものが「私は誰か?」という問いへの答えにはならないでしょう。



産まれた時に、自動的で不動に付与される属性ではなく

生まれ落ちた後に、一人一人の諸々の条件によって獲得できる属性ならどうでしょうか。

それなら「私は誰か?」の答えになるでしょうか。




体力、評判、才能、賢さ、愚かさ、実績、財産…

これら諸々の状態は、私を私たらしめる要素なのかもしれません。

ですが、それらは人生が流れ、環境も移り変われば

容易に流動していくものです。



なにより人は老いていきます。

体力、能力、健康、才能、賢さ

そして友人、家族、財産まで

私の証だったものは、死に向かい万事が衰えるに連れ

一つ一つ剥がれ落ちてゆくことでしょう。



それは私が次第に「誰」でもなくなってしまうことを意味します。



では思いは?

人がそれぞれ思うことなら「私は誰か?」に答えうる手がかりになるのではないのでしょうか。



今日はとてもいいことがありました。

私はとても幸福な思いで、安らかに眠ることができます。



でも次の日は、信じられないほど嫌なことがありました。

私は不幸のどん底な思いを味わいます。



このどちらが、本当の私なのでしょうか。

きっとどちらでもないでしょう。



人の思いは「私」でもどうすることもできません。

心の奥から湧いてくる衝動。

それは制することができないものです。





一体「私」とは誰なんでしょうか。




真の私とは映画のスクリーンみたいなもの…とはよく言われますが

これは本当だと思います。



銀色のスクリーンには、様々な映像が映しだされます。

その映像が、私を私たらしめるとされる「個性」にあたるのですが

それらはうつろいゆくものであり、ただのイメージに過ぎません。



美しい…

醜い…

不幸…

幸福…


そんな映像が投影されれば、それらの属性を持っているように見えるかもしれませんが

本当の私は、銀色に光るスクリーンそのものです。




真の私は、うつりゆく諸々の属性によって構成されているのではなく

そんな自己とされるモノを、超えたところに在るのだと思います。



幻の私ではなく、永遠に不変な私。

自己という限定的な器ではなく、広大無辺な宇宙に通じている私。



一日を生きていると、いろんな「私」とされるモノに出会うことができます。

楽しい私。

悲しい私。

得意げな私。

落ち込んでいる私…

そんな私に出会ったら「私は誰か?」という問いを、自分にしてみて下さい。



問いを発して、自分を観察してみれば、

一喜一憂しているのは「私」ではなく

「自分の脳」が反応しているだけ…

ということが感じ取れるはずです。



それは「私は誰か?」という問いの答えになりうるものではないでしょう。



さらに「私は誰か?」の問いを自分にしてみましょう。

すると、何も映し出されていない銀色のスクリーンのような「無」に気づくことでしょう。



これが「虚無」とも言うべきものなのか

それとも、なんらかの存在で満たされた「無」なのか

その答えを見極めるには、実際に経験してみなければ分かりません。



そこに辿り着いた経験を、いくら言葉を尽くして話したとしても

誰かに伝えることはできないでしょう。



あらゆる光をとらえて、鋭く反射することで、一つの像を結ぶスクリーン。

そこに「私は誰か?」の問いの答えが秘められているのでしょう。




いえ…「問う意味」が、そこにあるのでしょう。

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