用語 まとめ④「アサイラム・シーカーズ」「在留特別許可」

「アサイラム・シーカーズ」

自国を逃れて庇護や難民としての地位を求める人を、アサイラム・シーカーズ(Asylum seekers)と呼ぶことがある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR: United Nations High Commissioner for Refugees)ではアサイラム・シーカーズを「国際的な保護を求めており、難民としての地位を求める申請に対する認定がなされる前の個人」と定義している。アサイラム・シーカーズの概念は、近年いっそう多義的で曖昧な概念となっている。それは、このグループには「結果的に難民として認定される者」、「難民と認定されないが別の形で保護や在留資格が与えられる者」、そして「申請が却下され在留が認められない者」の全てを含んでいることに起因する。曖昧な故に排除される対象として認識されることも少なくない。UNHCRの支援対象は「庇護を求めた国に受入れを拒否されたものの、人道的な支援が必要と考える者」にも拡大されている。このように、アサイラム・シーカーズは、受入れ国の姿勢やそれに対する国連の対応などによってその処遇は常に変化し、「他国に逃れて庇護を受ける『個人の権利』と、外国人の流入や入国を規制する『国家の権利』との緊張関係」という「庇護のジレンマ」を象徴するものであり、国際社会の中で変化している概念であることに留意しなければならない。
日本においてアサイラム・シーカーズは、UNHCRの報告書やその他の文章で、「庇護希望者」あるいは「庇護申請者」と訳されている。

<参考文献>

森谷康文「日本における難民問題とソーシャルワーク研究の到達点 」,『難民研究ジャーナル』2号,2012年。

UNHCR「Asylum-Seekers」https://www.unhcr.org/asylum-seekers.html

「在留特別許可」

(入管法第50条)

「在留特別許可」(在特)とは、法務大臣が個別の特別な事情を考慮して、退去強制になるはずの外国人に対しして「自由裁量」で日本国内の在留を認めるものである。在特が申請に基づくものであると誤解する人もいるようが、「在特」を「申請」できるわけでない。在特が認められるとの「見込み」をもって在特の申請を行っても、不許可となるケースや、むしろ逮捕・収容となったケースも見られる。従って、もう少し慎重に自分が置かれている状況や入管当局の方針などを見極めてから行動しようとする家族もある。

日本の入管法においては、同法違反による退去強制処分の過程において、入国審査官による違反審査がある。この審査の結果、違反認定による不服のある被疑者は、特別審査官による口頭審理を要求することができ、さらに、特別審理官の判定に不服があれば、法務大臣に異議申出を行うことができる。これに対して法務大臣の裁決が下されるが、特例として、あくまで個別的、かつ人道的な理由から滞在を許可する「在留特別許可」が出されることになる。

入管法の枠組みの中で「不法残留者」とされている外国人本人としては、不法・非正規・非合法であることに由来する弱い立場、例えば、保険制度からの疎外・取締りへの不安などからいち早く抜け出すためには、現行法の枠組みの中でリスクを冒しながら在特を敢えて求めるケースもある。

<参考文献>

金昇謙・依光正哲「「在留特別許可」に関する事例研究」『世代間の利害調整に関する研究 ディスカッション・ペーパー』2003年. https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/14454/pie_dp150.pdf

追記:「在留特別許可」についての法改正の動き

ネットの記事共同通信「在留特別許可が「申請制」に入管庁、難民認定と分離」https://this.kiji.is/685068726334981217?c=39546741839462401

昨年10月の記事です。「在特」が申請制になるかも…との記事でしたが、今のところそうした法改正はありません。今後、どうなるのか注視したいと思います。