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リスクはオーダーメイドの時代に

高度に情報が蓄積された未来ではリスクは個別に最適化される。
そして保険料、金利、その他の様々なリスク評価や判断基準が一人ひとりにオーダーメイド化されるようになる。

情報がないことは信用がないこということ

リスクは安心の裏返し。そして安心は情報によって得られる。
例えば、人に1万円を貸してほしいと頼まれたとする。通りすがりの見知らぬ人に1万円を貸すのはとても不安だ。でももしその人がお金持ちだという情報を知っていれば不安は和らぐ。さらにその人はこれまで必ず借りたお金を返してきた経歴があるとわかっていれば、お金を貸してもいいかな、という気持ちになる。

クレジットカードも同じ仕組みだ。初めてカードを発行するとき、カード会社はその人の年収と生活情報をもとに限度額を決定する。そしてカードで支払いと返済を繰り返すことでカード会社に利用者の情報が蓄積される。滞納なく返済を繰り返すした情報が貯まるとそれが信用となり、カード会社はカードの限度額を上げることができる。

高度な情報はより正確なリスク評価をもたらす

Brexというアメリカのクレジットカード会社がある。彼らはスタートアップ企業向けに法人用クレジットカードを提供している。設立されたばかりのスタートアップ企業は信用が低いためカードの限度額が低めに設定されてしまう。しかし、Brexは一般的なカード会社にくらべて10倍近くの限度額を利用者に与えている。なぜそのようなことが可能なのか。それはBrexが企業の財務状況をリアルタイムにモニタリングして与信を行っているからだ。Brexは"リアルタイムな財務情報"というより高度な情報を得ることで企業のリスクを詳細に把握している。だからBrexは他のカード会社より高い限度額でカードを発行できているというわけだ。

このように情報が多ければ多いほど当事者の信用度はより鮮明になり、リスクを正しく評価することができる。これはクレジットカードや融資だけでなく、その他の分野にもあてはまるだろう。

例えば現在の自動車保険は契約者の年齢や等級などでしか保険料に個人差はない。もし自動車にセンサーを装着して契約者の運転の安全度を測定することができれば、日頃から安全運転をしているドライバーには危険なドライバーより安く保険料を設定できるかもしれない。

生命保険会社が契約者にウェアラブルデバイスを装着させてデータを収集することで、健康的な生活を送る契約者には保険料を安くすることも考えられる。さらには遺伝子検査をして契約者の病気のかかりやすさを特定することでその人に合った保険を提供することもできる。

昨年、世間を賑わせた内定辞退率問題。法律的な問題はあったが、これもある種のリスク評価だと捉えることができる。内定辞退率は人によって異なる。さらに企業への志望度によっても内定辞退率は変わってくる。もしこの内定辞退率がうまく機能するならば、就活生にとっては志望度の高い(辞退する気の低い)企業への内定が取りやすくなり、企業側にとっては内定辞退率の低い人を採用することができるようになるだろう。そうなれば、就活生は大量に出願し、企業は膨大な面接をこなす、という今の非効率な採用活動から抜け出せるかもしれない。

情報によって個人の差異は明確化する

まだまだ世の中のリスク評価は大雑把だ。人によって事故に遭うリスク、病気になるリスクはそれぞれ違うのだから、これからの時代にはそれぞれ個人に特化したリスク評価が求められる。そのためには個人の違いを表す詳細なデータが必要だ。

さらなるIT化とIoTによって情報収集のハードルが格段に下がることが予想される。情報は個人の違いをより正確に捉えることを可能にし、リスク評価はオーダーメイドのように個々に最適化されるだろうと私は考えている。

何年後の未来かはわからないが、いつかは私の賃貸の家賃保証料金も個人の信用度に合わせた料金設定になってほしい。今月にせまった賃貸契約の更新書類に署名しながらそんなことを考えた。


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