チキンカツは青春の味、わたしだけの味。
青春時代の味と聞いてわたしが思い出すのは、通っていた高校近くの商店街にある精肉屋さんの、揚げたてチキンカツである。
そこは、お肉の量り売りだけでなく、手作りのカツやコロッケなんかがショーケースいっぱいに並べられていた。いつも晩ご飯を求めたお母さんたちで賑わう、地域で愛されるお店だ。
駅へ向かう帰り道と反対方向にあるから、高校二年くらいまでその存在も知らなかった。
うまいチキンカツがあるから、と先輩が不敵な笑みで教えてくれるまでは。
「おばちゃん、チキンカツ一つ!」と先輩