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君の物語 11 心の内側

ルゥが来たばかりの頃、私たちはルゥの表情も読めなくて、気持ちを推し量ることができなかった。
ムギが「仲良くなりたいのに何を考えてるのかわからない。ルゥのことを知りたいのに。」と言って泣いたことがある。
夫が「大丈夫だよ。だんだんわかり合えるようになるよ。」と慰めていた。
かつて犬と一緒に暮らしていたことがあるという夫の言葉には信憑性があり、ムギも気を取り直した。

実際に、日々生活を共にしていると瞬く間にわかるようになった。実は表情がくるくる変わるということも知った。
最初は気づかなかったのに。どうしてだろう。それまで猫と向き合う機会がなかったからだ。
町中で猫に出会っても「可愛い」と思うだけだった。それだけだった。通りすがりに会った猫が何を思っているのか、考えたことがなかったのだ。

「相手の心の内を知りたい」と強く思うことが、私たちを変えたんだ。
そしたら、ほら!
なんて表情豊かなんだろう!

でも時々思う。
間違った解釈をしてはいないか?自分に都合のいい解釈をしてはいないか?傷つけるようなことはしていないと、誓って言い切れるか?不快な思いをさせたり、負担を強いたりしてはいないか?

例えばー私の心の内側は私にしかわからない。
ルゥの心の内側は、ルゥにしか知りえないだろう。
わかった気になっておごることの無いようにと、時折り自分に釘を刺す。


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