親のガス工事屋 【3】21歳
大学を全て落ちて実家に帰ってきました。入学金として貯めていた14万を使ってオヤジのボロボロのマークIIを修理して自分の車にし、友達とドライブばかりしていた。ひと月程してオヤジに仕事はどうすると聞かれた時にまだ何も決めていないと言うとガス屋を手伝えと言われてそのままオヤジと一緒にまたガスの配管工事の仕事に就いた。
今回はオヤジの会社に入る形をとったので、ずーっとオヤジと一緒だ。材料を取りにいったりは前に働いていた親会社に行くのだが、初めはやっぱり戻ったかとか色々言われた。僕はそんな言葉は全て流していた。全く気にならなかった。前に親会社で働いている時に一緒に働いた先輩や師匠の応援に行く事もあった。
オヤジは天然で仕事は出来るのだが、色々なミスをする。一緒な働いていて良く現場監督やガスの監督に怒られていたのを見る事になる。もう亡くなっているので、時効という事で、笑ってやってください。
エピソード1
イオンの工事に入った時の事、ギリギリになり朝10時オープンとなっていて9時頃に後もう少しで間に合うなと思っていたら天井内でパイプの支えを取り付けていたオヤジが、天井を破って落ちて来た。どうも踏み外したらしい。もう間に合わないのでしこまた監督に怒られていた。掃除してその日は帰ったが僕はどうなってるのか気になって徹夜明けだったのですが、オープンを見に行った。
全てが新しい店舗でイオン内は綺麗のだが、1箇所だけ天井が抜けていてあーあって感じだった。
それからは天井内には僕が入るようにした。その度にオヤジは落ちるからといじり倒したのは言うまでもない。
エピソード2
現場に遅れたらダメだと思うけど大丈夫かとオヤジに何度も確認したのだが、大丈夫だと言う。僕らは喫茶店に入りモーニングを食べてから現場に向かった。30分程遅れた。現場にはスーツを着た人が3人いて、現場監督に怖い顔で何か話してるのがみえる。
オヤジに大丈夫かなんか怒ってるように見えるけどと言ったがニコニコして大丈夫やからお前は車で待っとけと言われて待っていた。
オヤジがスーツの人の所に近づく、大きい声が聞こえる。聞き取れたのは帰れとの怒鳴り声。
オヤジの顔色はどんどん青くなり、すんませんって土下座せんばかりに謝り倒している。10分程怒られていたが、車に戻ってきて、僕に帰るぞと言ってそのまま現場を離れた。
車の中で僕はオヤジにモーニング食べへんかったら怒られんで済んだのになと大爆笑で言うとオヤジは一言それは言うなと言って家路についた。
エピソード3
田舎の方で配管の仕事し終わって、その家でガスが使えるようにして帰ろうとすると、施主さんがドロドロだったので見かねておばあちゃんがお風呂沸かすから入って行きと言われた。僕はオヤジにやめた方が良いと何遍も言ったのだが、せっかく言うてくれてるし、ドロドロやから入ると言い出した。僕は車で待ってると言って車でいた。30分くらいするとオヤジはスッキリした顔で出て来て、帰ろかと言って帰った。次の日やはり嫌な予感は的中で、おばあちゃんと一緒に住む娘さんから大阪ガスにクレームの電話が入ったらしく、呼び出されてコレまたコンコンと怒られていた。車に戻った時に僕はやめとけ言うたやんって爆笑していると、こんなんなるってわからんやろって怒っていた。
エピソード4
僕がまだ一緒にやり出してすぐの頃、配管自体は簡単な現場で補修の仕事があった。作業の仕方をオヤジから口頭で聞いてやっているとオヤジが、トイレ行きたいから1人でやっといてくれと近くの商店街にトイレ探してくるからと言われてオヤジはトイレに行った。
僕は1人で仕事をしていると中々戻って来ない。3時間経って仕事は終わった。でも戻らない施主がまだ終わりませんかと言ってきた。僕は最後まだオヤジの確認が必要だったので、施主に謝って探して来ますんで少し待ってくださいと言って商店街に行った。何気なく公衆トイレを探していると、パチンコ屋が見えた。まさかと思い、のぞいてみると箱を積んでいる。僕の存在に気がつくと慌てて持っていたパチンコの球をばらまいていた。僕は怒鳴り散らした。施主さんが怒ってんでと、するとオヤジはひと言、連チャン中やねんって、
今すぐ換金してこいって怒鳴ってやりましたわ。
そんなオヤジですが、仕事はミスもなく配管の仲間が困ってると徹夜してでも手伝いに行っていた。エピソード1の天井が抜けた現場も仲間がオープンに間に合わないからなんとか手伝って欲しいと言われて1番面倒な図面を受けていた。そう言うところは尊敬してました。
オヤジと一緒にやり出してちょっとしてすぐに兄貴も一緒に仕事をする事になった。兄貴は結婚を期に一緒にする事になったのだが、スカイラインをローンで購入したローンがあったので、僕のマークIIと兄貴のスカイラインをローン事交換してあげた。結婚祝いとしてね。仕事にかんしては、僕は小さい頃から手伝っていたが兄貴は手伝った事がなかった。だから本当に見習いからスタートだったが、兄貴は結婚していたのと兄貴なので給料は兄貴の方が7、8万上だった。当時独身だしお金に無頓着だったのでいっさい気にしてなかったが、今思うとおかしいなと思う。それに僕ら3人は阪神淡路大震災の復興部隊として兵庫に派遣される事になるのだが、大阪ガスから雇われていく事になり、その時僕はオヤジと同じ資格まで持っていたので、月20日で1日25000円と言う事は月50万大阪ガスからお金が出ていたはずなんですが、僕の給料は17万でした。因みに兄貴は見習いなので大阪ガスから出ているお金は1日4500円でした。少しアレってなったけどまーええかってながしてしまった。それでもそこそこ楽しく働いていました。
しかしそれも復興が終わるまではでした。復興が終わると地元に戻って仕事をする事になるのですが、戻ってみると仕事が全然無い。まあ本当にやばいくらい無かった。
その年末にオヤジに呼び出された。
オヤジに兄貴か僕かどちらか一方しか雇えないと言われた。
まあ僕の方が2つだけやけど若いし結婚もしてないのし借金(スカイラインのローンはありましたが)もないので、辞める事にした。オヤジはそうしてくれて助かったと言っていた。
僕は無職で年末年始を迎えてしまう事になった。全く次の当てもないままでしたが、大丈夫だと言う物凄い自信が何故かあったのを覚えている。
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