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返報性の原理ってやつを期待しすぎてはいけない

 営業の研修で「返報性の原理」というものを学んだことがある。「何かをしてもらったから、相手に何かを返したいという気持ち」のことだ。特にルート営業なんてやってると、そういう話がよくでてくる。

 仕事に限らず友人関係、恋人関係も同じだと思う。ギブアンドテイク、なんていうけれど要は「この人に何かしてもらったから返したい、返さなきゃ」という気持ちを利用するということだ。ちなみに、いい感情だけじゃなく悪い感情もこの原理に当てはまるので、要注意だ。

 さて、私の話になるけれど「何かをしたい」「助けたい」と思って行動することが多い。その結果、お客様からも「くれないさんの為なら、この商品買おうかな」ということを言われる。嬉しい反面、心苦しくなる。

 何かを求めて尽くしたことなど数えるほどしかないかもしれない。相手に「したいこと」を私のエゴでやっている。もちろんエゴなので、お返しを期待していない。その一方で、ギブアンドテイクだよな、と思う部分もある。

 昔から友達、恋人、家族などの関係に関わらず、好きな人には尽くすタイプではある。これは性分なのでやめことができない。お金も時間も投下してしまうから、結局は破綻を呼ぶのだけど。

 ただ、盲目的に尽くすのではなく私は私なりの美学に沿って尽くしている。

 まず、尽くす対象は必ず好意のある人間だ。つぎに、私が尽くすことにより相手にメリットがあること、私に甘えすぎた時には手を引くこと。

 次に、尽くす対象が私に対して酷い態度を取らないこと。当たり前だが、傷つけられるような関係で、わざわざ何かをしようとは思わない。例を挙げるのであれば、普段はニコニコしているくせに怒鳴ればいいように扱えると思っているような客とかだ。

 最後に、尽くした際に満足感が得られること。結局はエゴなので、この感覚がなければ意味がない。

 プライベートはさておき、仕事においてはおおそよ「いいように使われる」ばかりだ。それでいいのかと言われれば否なのだけど、それでもいいなとも思っている。積み重ねた信頼と、蓄積された実績で向こうが勝手に察してくれる。

 「くれないさん、今期は何が足りてないの?」

 その言葉に私は笑って「気にしなくていいですよ」と言う。

 上司からの「最後まで諦めずにくらいつけ!」とかいうこちらのメリットしか考えない発言に神妙に頷いているふりをする。

 営業にはてんで向いてないな、と思うけれど「無理やり売る」なんてやり方はしたくない。そのために私は「人を不幸にしないもの」を売ると決めたのだから。

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