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【読書記録】読んだ本まとめ(2024年6月読了分)

 今回は6月に読んだ本のまとめ。
 記事を書くことから目を背けていたので、遅くなりました。

 本の評価基準は3つ!! ※独断と偏見満載。
①内容
単純に内容が面白かったか否か。
②文章
 文章が読みやすかった、美しかったなど。
③再読
本棚に置いておきたい本かどうか。何度でも読みたい、本棚にコレクションしておきたいなど、本棚を整理するときの判断基準。借りた本であれば、購入して手元に置きたいか否か。

『葉桜の季節に君を想うということ』/歌野唱午

読了日:2024年6月3日
①内容:★★★★☆
②文章:★★★★☆ 
③再読:★☆☆☆☆

あらすじ

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして——。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。

文春文庫『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS (bunshun.jp)

感想

 登場人物たちがうまく交差し、映像作品や漫画だと難しいようなどんでん返しであっとさせられる。読み味は軽やかで、テレビドラマを見ているようだった。最後まで読んでから、もう一回読んでみると、細かなヒントが散りばめられている。

 恋愛小説としても探偵ものとしても、すごくよくできていた。足で稼ぐタイプの体育会系探偵役の主人公の性格もさっぱりしている。また「男は度胸」と言わんばかりに、事件調査に挑んでいく姿もかっこいい。様々なことに挑戦する、人生を楽しんでいる主人公に「いつでも人生をやり直せる」と思わされました。

 再読を★1にしたのは、読み終わってからもう一回読むと答え合わせができて楽しいものの、本棚にしまっておいて数年後に読み返したい、というよりも「あー楽しかった!!面白かった!満足!」という読後感だから。面白かったんです!信じて。

『52ヘルツのクジラたち』/町田そのこ

読了日:2024年6月6日
①内容:★★★★★
②文章:★★★☆☆
③再読:★★★☆☆

あらすじ

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。2021年本屋大賞第1位!

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』裏表紙(中公文庫)

感想

 書き出しのインパクトがすごくて、一気に「この人の作品は面白そう」と感じた。

明日の天気を訊くような軽い感じで、風俗やってたの? と言われた。フウゾク。一瞬だけ言葉の意味が分からなくてきょとんとし、それからはっと気付いて、反射的に男の鼻っ柱めがけて平手打ちした。

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P7(中公文庫)

 この後、主人公が「冷え冷えのメロンを出してやった恩も忘れたのか」など、ぷりぷり怒っているのがくすっとなる。本当に失礼なことを訊かれているので、怒るのは仕方がない。

 作中には、心がひんやりするような虐待の描写や恋愛の様子が描かれている。ストーリーの緩急もすごいのに、登場人物たちの愛したい、愛されたい、愛したいという不器用な感情が砂浜に寄せる波のように押し寄せてくる。主人公の泣きたくなるような気持ちがしとしとと心に振り込んできて、泣きたくなった。

『モモ』/ミヒャエル・エンデ

読了日:2024年6月7日
①内容:★★★★☆
②文章:★★★☆☆ 
③再読:★★★★★

あらすじ

町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります……。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。

ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波少年文庫)

感想

 児童文学の名著。小学生の頃に読んで「こんな世界嫌だなぁ」と思った記憶がある。大人になった今、再読して感じるのは「あれ、もしかして私の時間も灰色の男たちに奪われてる……?」という恐怖。

 最近、タイパ(タイムパフォーマンスの略)という言葉が使われるようになっているが、このタイパこそ灰色の男たちが作り出した概念なのかもしれない。

 一見無駄と思える時間も、心の栄養になったり、他人に優しくなるためだったり、自分を見つめなおすのに必要な時間。自分のことばかりではなく、他人のために余裕を持つことが大事だと教えてくれる。現代社会に生きる大人こそ、読むべき一冊。

『廃遊園地の殺人』/斜線堂有紀

読了日:2024年6月8日
①内容:★★★☆☆
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★★★☆

プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれたテーマパーク・イリュジオンランド。
廃墟コレクターの資産家・十嶋庵(としまいおり)はかつての夢の国を二十年ぶりに解き放つ。
狭き門をくぐり抜け、廃遊園地へと招かれた廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎(まがみえいたろう)を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの伝言だった。
それぞれに因縁を抱えた招待客たちは宝探しをはじめるが、翌朝串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかる。
止まらない殺人、見つからない犯人、最後に真実を見つけ出すのは……

廃遊園地の殺人 | 実業之日本社 (j-n.co.jp)

感想

 斜線堂有紀先生の作品が好きだったので購入したが、読まずに本棚に刺さっていた作品をようやく読んだ。廃墟マニアの主人公が、廃墟が廃墟になった過程やその背景を知り、解き明かそうとしている。すれているようで、人間らしい善悪の価値観は持っている。

 イリュジオンランドに集められた人々の多くが、イリュジオンランドに縁がある人々のため、オープン前の立ち退きなどの要素が大きく物語に影響している。

 トリックや探偵役の語りも素晴らしいが、主人公の廃墟から己の帰る場所を探そうとする、廃墟の歴史やあり方を探る中で己のルーツを探そうとしているという設定がすごく刺さった。

『変身』/フランツ・カフカ

読了日:2024年6月9日
①内容:★★★★★
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★★★★

あらすじ

ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。

『変身』 フランツ・カフカ、高橋義孝/訳 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

感想

 虫が嫌いすぎて読めていなかったが、没後100年とのことで重い腰を上げて購入。

 自分に理解できないもの忌避する感情、それでも肉親だからと関わろうとする姿の苦々しさがリアルだった。虫になってしまったグレゴールの一人称視点で物語が進むのに、グレゴールの感情よりも彼の周囲の感情のほうが伝わってくる。

 解説まで読んで、カフカの境遇などを知って得心。グレゴールも父には逆らえない様子なのも、家族を維持するために献身的に働いていた姿も、虫にならなくても家庭内カーストが一番下なのも見ていて心が痛い。噛めば噛むほど味がしそうだから、いつかまた読み返したい。

『こころ』/夏目漱石

読了日:2024年6月10日
①内容:★★★★★
②文章:★★★★★
③再読:★★★★★

あらすじ

鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。

『こころ』 夏目漱石 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

感想

 まだまだ人生経験が浅い「私」と、親戚に裏切られて人を信じず、親友を己の裏切りによって亡くした先生。「私」の学はあっても無知なところや、両親とのやり取りの後に行われる先生からの懺悔のような遺書が印象的だった。文章も素晴らしく美しい。恋とは罪悪。そして、人とは誰かの前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭上に足を乗せさせようとする、そんな生き物。もっと人生経験を積んでから、もう一度読みたい。

『恋愛の哲学』/戸谷洋志

読了日:2024年6月11日
①内容:★★★☆☆
②文章:★★☆☆☆
③再読:★★★☆☆

概要

狂うのが、愛。
憎むのが、恋。
哲学は「恋愛」を語ることから始まった。
クズへの愛はなぜ成立するのか?
なぜ私は愛されたいのか?
永遠の愛はどこまで続くのか?
――すべて哲学が答えます。
現代に流れる「ロマンティック・ラブ」の幻想を解体する驚愕の哲学入門!!!

恋愛の哲学 | 晶文社 (shobunsha.co.jp)

感想

 現代の恋愛観として結婚へ終着するロマンチック・ラブをあげたうえで、過去の哲学者たちが考える恋愛、愛とは?について語る本。恋愛とは何か、に答えが出るわけではないけれど、自分の恋愛観を見つめ直すきっかけにもなる。もう一回読み直してしっかり理解したいし、引用されていた文献もちゃんと読みたい。

6月の読書まとめ

 読書メーターの集計では、再読等をあわせて12冊、3,447ページ読んだとのこと。
 感想をまとめていない本は下記の通り。再読本が多め。
『雪よ林檎の香のごとく』/一穂ミチ
『沈まぬ夜の小舟(上・下)』/中庭みかな
『外科室』/泉鏡花
『ケーキの切れない非行少年たち』/宮口幸治

 X(旧:Twitter)で読書記録をはじめてから、読後の感想を書くようになったけれど、正直感想を書くよりも早く次の本を読むことが多い。微妙な本もあるし……となった結果、読んだ本全ての感想を書き留めておく必要はないのかもしれない、という気持ちになってきた。

 一方、自分の感情を書き留めるという意味では継続したいので、noteでの読了まとめと読書メーターは継続していきたい。

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