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地域を元気にするイノベーションに成功した星の話

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。

その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。

ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。

ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。

前回の話

前回は、宇宙移民の考えた財政を健全化する行政スリム化イノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。

最初の記事はこちら
次の記事はこちら
目次はこちら
持続可能な社会のつくり方について書いた記事はこちら
理想社会の設計方法について書いた記事はこちら

今回の話

今回のテーマは、地方創生を成功させるイノベーションです。

さて我が国では、地方衰退が深刻な問題になっています。
「日本創成会議」人口減少問題検討分科会からは、2040年までに全市町村のうち約半数が消滅する恐れがあるという驚愕の発表もありました。

この予測が現実化しないように、国は2014年に「まち・ひと・しごと創生法」を成立させました。
しかし莫大な税金を使って地方創生に取り組んでいるにもかかわらず、むしろ事態は悪化しています。

そこで今回は、地方創生に成功した宇宙移民のアイデアを紹介したいと思います。
未開の星にゼロイチで理想社会を建設できる宇宙移民の強みを通して、日本が地方創生に成功しない根本的な原因とすべての地域を元気にする解決策が見えてくるように書きました。

それでは、お楽しみ下さい。

地方創生はなぜ重要か

地方創生とは何か?
私が前に住んでいた星の故郷の国では、それは、人口減少が進んで衰退している地方に活力を取り戻して持続可能にすることでした。

地方創生が重要な理由は、地方が弱ると国力も弱り、国家の存続までも危うくしてしまうからです。
どうしてそうなるのか、人間をたとえに使って説明しましょう。

弱った地域を延命させるために使われるのは、税金です。
税金は、国民が血の出るような大変な労働で得た収入から納めるものです。だから「血税」とも呼ばれます。

しかし地方が回復不能な状態に陥ってしまうと、いくら血税を投入しても効果がなくなってしまいます。
それは、大量出血が止まらない状態では、輸血が追いつかなくなるのと同じです。

また、いつまでもこの状態が続くと、輸血に使う血液が不足するような事態に陥ってしまいます。
つまり、地方衰退が進んで人口減少や国力低下が加速することにより、税収不足が激しくなるということです。

大量出血をしているのに、輸血の血液も足らなくなり、血液をつくる機能も衰えてしまうと、生命を維持することはできなくなります。
弱った地域にただお金を注入しているだけでは、同じ運命になってしまいます。
だから地方創生で稼げる地方にかえることが重要なのです。

地方が衰退する原因とは

私の故郷の国では、首都圏への一極集中が地方衰退の原因になっていました。

一極集中とは、政治・経済・文化などの機能が特定の地域に過度に集中することです。

一極集中が地方衰退を招く理由は、労働力人口も首都圏に集中してしまうことで、地方の高齢化と人口減少を進めてしまうからです。

介護などの行政サービスを利用する高齢者ばかりが残り、税金を納める層が激減してしまうと、ますます転出者が増加する悪循環に陥りやすくなります。
財政難で劣化が進むことで、首都との格差がより一層大きくなってしまうからです。

そして取り残された高齢者すらも亡くなってしまえば、人口減少の勢いはさらに激しくなります。
こうして地方消滅へと進んでいくのです。

故郷の国は、おまけに世界で最も少子高齢化が進んでいたので、余計に地方消滅の速度がはやまってしまいました。

一極集中が首都圏に及ぼす悪影響

一極集中は地方ばかりでなく、首都圏にも悪影響を及ぼします。
どのような問題が起きるのか、いくつか挙げてみましょう。

問題1  生活コストが高くなる
生活コストが高くなる理由は、人が集まりすぎて土地が足らなくなることで、地価が異常に高くなるからです。

それにより狭くて古いアパートでも家賃が高くなってしまい、地方より収入が良くても生活の質をあげるのが難しくなります。

問題2  施設が足らなくなる
施設不足の問題が起こるのは、土地の面積が限られているのに対し、人口が増え続けるからです。
つまりこの問題も、土地不足が原因で発生します。

高層ビルを増やすことで解決する方法がありますが、それも限度がありますし、コストがかかる高層ビルにすると余計に固定費があがり、事業者は採算をとるのが難しくなってしまいます。

とくに保育や介護の事業者など社会的に必要でも利益の少ないビジネスは経営が厳しくなるので、施設不足が深刻化します。

問題3  効率性が低下する
効率性が低下する理由は、あらゆるものが集中し、人口密度が高くなりすぎるからです。
それにより渋滞や混雑が発生し、利便性や生産性が低下してしまうのです。

道路整備で問題解決する方法がありますが、土地不足に陥っている状態では道路を増やす余地がありません。
また道路整備が進んで自動車での移動が便利になれば、自動車を使う人が増えてしまうので、いたちごっこになってしまいます。

問題4 高齢化問題が深刻になる
仕事を求めて首都圏に労働力人口が集まるということは、首都圏は将来の高齢者人口を蓄積しているということでもあります。

故郷の国のように少子化が進み、人生100年時代といわれる超長寿社会に突入すると、首都圏も高齢化が激しくなります。

超高層ビルが乱立し、社会資本が過剰にある、とてつもなくお金のかかる構造になっている大都市は、税収が激減すると大変なことになります。

従来のように地方に頼って労働力人口を増やそうとしても、高齢世代の人口さえも減少して消滅の危機に瀕している地方が増えれば、その方法は使えなくなります。

大量の介護難民が発生するリスクも高まります。
原因は、医療介護サービスが不足する問題だけではありません。
生活コストのかかる首都圏で、年金が減り、医療介護の費用負担があがると、貧困に陥る高齢者が激増するリスクが高まるからです。
そういう事態になれば、お金がなくって医療介護サービスを利用できない高齢者であふれることになります。

問題5 食料問題が起こる
首都圏は食料の多くを地方に依存しています。
しかし地方が衰退し、農業や漁業に携わる人が激減すれば、食料を海外に依存するしかなくなります。

故郷の国でも、農業の担い手であった高齢者がいなくなるにつれ、食料自給率は著しく低下してしまいました。

人口減少で国力が低下すると、海外から食料を買う力も弱まってしまいます。

その上、食が豊かになる国が増えて(食料を奪い合う)競争が激しくなったり、温暖化の影響で不作や不漁が続いたりすると、余計に食料が手に入りにくくになってしまいます。

問題6 災害時のリスクが高くなる
人口密度が異常に高い大都市で大規模な災害が発生すると、その被害は地方で起こるのとは比べ物にならないほど大きくなります。

まず、高層ビルから避難するのが大変ですし、なんとか脱出できても外は人の海で身動きが取れないでしょう。

建物が密集しているので火災も広がりやすく、次々と倒壊する建物の下敷きになるリスクにも襲われます。

救助をしようにも消防車も救急車も足りず、混乱で前に進むのすら難しい状態。医療機関も急激な需要過多に対応できず、死傷者数は想定を超えるものになりかねません。

また、政治・経済・行政の中枢機能を首都に集中させているのも、被害を大きくします。
それらが壊滅状態になると、急所を破壊されたのと同じになり、国は死に体になってしまうでしょう。

一極集中では地方創生は成功しない

特定の地域に人口や重要な機能を集中させることは、力の集め方としては合理的であり、コスト面から見てもメリットが大きいといえるでしょう。
とくに私の故郷の国は小さな島国であったので、力を一つに集めるのは国際競争力を高めるのに正しい戦法であったのかもしれません。

ではなぜ、故郷の国は衰退してしまったのでしょう。
その理由を説明するのに、家族をたとえに使ってみます。

国家をひとつの大家族とすると、一極集中で成り立つ国家は、自立できない家族を一人の稼ぎで支えているのと同じだと言えます。

これでは財政が苦しくなるのは当然ですし、負担が増していく一方で支える側の体力が弱まっていけば、いつか潰れてしまうでしょう。

国力の高め方としても、首都だけを強くするのは得策ではありません。
それは、野球が一人の強打者の力だけで勝てないのと一緒です。

また地方も弱い立場になると、国からの無理な要求を断れなくなるなど、国と地方の関係が歪んだものになってしまいます。
地方創生の事業の提案も、国に気に入られるものばかりを目指すようになってしまうので、方向性を間違えてしまうでしょう。

故郷の国がとった地方創生策

故郷の国も、単純にお金を配るだけでは問題は解決しないと考え、地方創生を成功するために、次の3つの戦略をたてました。

  •  一極集中を緩和する戦略

  •  支援金を増やす戦略

  •  稼げる地方にする戦略

それぞれどのようなアイデアを出したのか、少し抜粋してみましょう。

■ 一極集中を緩和する戦略
一極集中を緩和する戦略では、故郷の国は2つの方向で緩和を図ることを考えました。

第一の緩和策は、地方の規模を大きくすることで格差を小さくする方法です。
発想は、競争力をアップするために、合併で会社を大きくするのと同じです。

そこで故郷の国は、市町村を合併させたり、さらにスケールを大きくして都道府県を広域にまとめる構想を練ったりしました。

第二の緩和策は、地方への移住を促進することで、首都圏の人口を減らす方法です。
それを成功させるために考えた手段は、次のようなものです。

  • 国の行政機関の一部や民間企業を地方に移すことで、人口を移動させる

  •  移住支援金や、教育費、子供の医療費、住居費などを安くすることを釣りにする

  •  インターネットを使って、地方に暮らしても仕事ができるようにする

■ 支援金を増やす戦略
国は地方への支援金を増やすために、応援したい自治体に個人や企業が寄付をするアイデアを考えました。

しかし見返りがなければ寄付をしてもらうのは難しいので、寄付金を税金から空除したり、返礼品を贈ったりすることを釣りにしました。

■ 稼げる地方にする方法
稼げる地方にする方法も考えました。
いくつかアイデアをあげると、次のようなものです。

  • 地方活性化につながる事業や人材育成に対して支援金を出す

  •  首都の発信力のある場所で、地方の商品を紹介するアンテナショップをつくる

  •  クーポン券を出して地方の商店街や宿泊施設を稼げるようにする

故郷の国が地方創生に失敗した理由

故郷の国の3つの地方創生策は成功しませんでしたが、的外れなものではありませんでした。
では、何が原因でうまくいかなかったのでしょう。

最大の原因は、首都と地方の格差が大きすぎて、何をやっても「焼け石に水」の効果にしかならなかったことです。

また返礼品を釣りに地方の収入を増やすやり方も、全体で見れば得になりませんでした。
単なる納税の移動で、しかもただ同然で配る返礼品に税金を使うことになるからです。これでは税収総額を減らすことになってしまいます。

首都の発信力のある場所で地方の商品を広める戦略も、税金の無駄遣いになってしまいました。
地価の異常に高い場所で儲からない商売をやり続けるのは赤字の垂れ流しになりますし、販路開拓の効果もあまりなかったからです。

クーポン券を出して商店街や観光施設を稼がせる方法も、利用期間が終われば客足が引いてしまい、継続的に稼げる効果は得られませんでした。

地方創生の成功に必要な3要素

私たちは故郷の星の失敗から学んで、地方創生を成功させるには次の3つを実現させることが重要だと考えました。

成功の秘策を見つけたぞ!

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