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経済と環境を両立する交通システムをつくった星の成功術

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。
その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。
ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は、宇宙移民の考えた住居費の負担を軽減する住宅イノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。
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目次はこちら
理想社会の設計方法について

今回の話

今回のテーマは交通イノベーションです。

さて、我が国では1960年代にマイカーが普及し始め、今では生活に欠かせない移動手段になっています。
自動車の進化もめざましく、環境性能に優れたハイブリッドカーをマイカーにしている人は珍しくなくなり、自動運転の実用化も現実のものとなりつつあります。

しかしそれで、地球温暖化に明るい展望が見えたという話は聞きません。
また、インフラの老朽化や買い物弱者、高齢者ドライバー問題など、有効な解決策が見つからない問題も山ほどあります。

これらの難題を解決する交通イノベーションを、宇宙移民のつくった理想社会を使って紹介します。

質問交通イノベーション

従来と違う交通イノベーションが必要になる理由

従来のイノベーションとは、モータリーゼーションを進める交通イノベーションです。

もちろん、モータリーゼーションの進展で得られる成果もあります。
例えば、モータリーゼーションが進めば、活動範囲が広がったり、輸送効率があがったりします。
その結果、人々の生活は便利になり、経済も発展していくでしょう。

しかしその代償として、交通事故が増えたり、渋滞がひどくなったり、交通弱者には住みにくい環境になったりするなど、様々な問題が発生します。
なかでもモータリーゼーションによって引き起こされる環境問題は、取り返しのつかない大きな問題に発展します。

交通弱者モータリゼーション

これらの問題は、モータリーゼーションが原因で起こったものなので、自動車中心型の交通システムのイノベーションでは解決できるものではありません。
だから、従来とは違う交通イノベーションが必要になるのです。

自動車依存を進める交通イノベーションはなぜ失敗するか

「自動車が環境問題を悪化させる原因になっているのなら、もっと環境性能に優れた自動車を発明すればいい」
「事故をおこさない自動車を発明すれば、交通事故を撲滅することだって可能だ」
そういう発想があるかもしれません。

しかし自動車を進化させることで問題解決をしようとする交通イノベーションは、必ず行き詰まります。
方向性を間違えた対処になるからです。

確かに、自動車の環境性能や安全性能を向上する技術革新は、問題解決に有効な一案になります。
しかし自動車が起こす問題の多くは、自動車の数が増えすぎたことに原因があります。
モータリーゼーションを進めることは、それを助長することになるので、この交通イノベーションは打開策にならないのです。

いくら環境性能に優れた車でも、製造には大量の資源とエネルギーを使います。
たとえば、電気自動車や水素自動車は走行時にはCO2を排出しませんが、製造過程で火力発電を使えばCO2を多く排出してしまいます。
また走行時に使用する電気や水素も火力発電でつくられたものならば、CO2を排出していないといえないでしょう。

非化石のみの電源構成にすれば、製造過程でもCO2の排出はなくなりますが、これはまた火力発電とは別の問題を起こします。
太陽光発電は森林伐採の問題がありますし、原子力発電は原子力事故のリスクと放射性廃棄物の問題があります。
自動車も電気自動車以外の使用を禁止すると、電力消費量が激増するので、それらの問題を大きくしてしまうことになります。

またモータリーゼーションが進めば、渋滞が増えたり、居住エリアが無秩序に拡大したりします。
それに伴い新しい道路が次から次へとつくられれば、自然環境はどんどん破壊され、エネルギーの浪費も増してしまいます。

インフラが増えすぎると、その維持コストが増大するので、十分なメンテナンスがしにくくなります。
それに、気候変動が進行して災害が激甚化すれば、復旧が必要な道路が増えてしまうことで予算不足が生じ、老朽化したインフラの対応はますます難しくなるでしょう。
このように災害が頻発したり、インフラの安全性が低下したりすれば、いくら自動車の安全性能が向上しても事故を撲滅することはできなくなるのです。

無秩序な居住エリアの拡大は、交通弱者の利便性も低下させます。
居住エリアが無秩序に散らばってしまうと、公共交通の充実が難しくなってしまうからです。
またマイカーで移動する人が圧倒的に多くなれば、公共交通の利用者が少数になってしまうので、公共交通の維持も困難になります。

このような大きな欠陥があるのに、どうしてモータリゼーションをやめるのが難しいのでしょう?

それは、自動車産業が経済成長の重要な柱になっているからではないでしょうか。
また自動車関連の仕事で働く人が多くいれば、自動車依存度の低い交通システムにチェンジすると、大量の失業者を発生させてしまうことになります。それを恐れて、自動車産業を小さくする選択をとれないのでしょう。

しかし自然環境には、そのような人間の都合は通じません。

また技術革新で万事を解決しようとする手法に、ついていけなくなる人が増えていくことも予想されます。
なぜなら、莫大な開発コストをかけてつくられた革新的な自動車は、誰もが買いやすい値段にするのが難しいからです。
一部の裕福な人にしか普及が進まなければ、せっかくの技術革新も十分な効果をあげられませんし、その新技術に適応した交通システムの拡充も進めにくくなってしまいます。

水素自動車

この失敗は、少子高齢化が進む国ほど起こりやすくなります。
生産年齢人口が縮小していくことで、個人も国家もお金の余裕がなくなってしまうからです。
そういう国が増え、世界人口が減少していけば、自動車の販売台数は右肩下がりになることは避けられません。

世界人口が増加し、モータリーゼーションの進展が続いたとしても、待っているのは悲劇的な結末です。
なぜなら、
人口が増え続ける→人口爆発を起こす
自動車の数が増え続ける→資源と環境の利用許容量を超える
モータリーゼーションが広がり続ける→住んでいる星全体に環境破壊が広がる
ことになるからです。

いずれにしても自動車産業が繁栄し続けることはありえませんし、自動車中心型の交通システムでは持続可能な社会をつくることもできません。

成功する交通イノベーション

では、成功する交通イノベーションとは何か?

究明
成功の秘策を見つけたぞ

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