誰もが高性能住宅に安く住めるようにした星の話
物語の設定
宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。
その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。
ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。
前回の話
前回は、宇宙移民の考えた食費の負担を軽減する農業イノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。
最初の記事はこちら。
次の記事はこちら。
目次はこちら。
理想社会の設計方法について
今回の話
地球温暖化の影響で起こる高温や豪雨による被害、いつ起きてもおかしくない大地震。
これ以上、地球温暖化を進めないためにも、自然災害から人々の暮らしを守るためにも、環境性能と耐震性能に優れた住宅の普及が必要になります。
しかし高性能住宅はとても高価で、年収が高い人でないと買えません。
また我が国は、少子高齢化という大きな問題を抱え、国際競争力も低下しています。
先行きが暗いなか、大きな借金を抱えるのは、自分の首をしめることになりかねません。
この物語のなかで登場する宇宙移民は、我々の常識を超えた方法で、誰もが高性能住宅に低負担で住める世界を創造しました。
今回は、宇宙移民の考えた住宅イノベーションを紹介します。
住宅イノベーションが必要な理由
将来のことを考えずにマイホームをつくると、対応に困る問題を増やすことになります。
大きな問題をあげると、次の3つになります。
1つ目は、環境問題です。
マイホームは環境破壊を進めることで、人類を加害者にします。
住宅は個人の所有物のなかで最も大きなものです。なので、その建設と廃棄において、自然環境に大きなダメージを与えることになります。
もちろん、住宅の建て替え頻度が高まるほど、そのダメージは大きくなります。
環境問題が大きくなれば、人類は被害者にもなります。
温暖化がもとで起こる異常気象で激甚災害が頻発するようになると、被災は他人事ではなくなるからです。
2つ目は、空き家の問題です。
マイホームをもつのが普通の世界になると、空き家は必ず増加します。
親から独立して子供がそれぞれマイホームをもつと、親のいなくなった後の家に住む子供がいなくなってしまうからです。
そして自分のした行いは自分の子供に返されるという連続で、空き家は各地に拡大していきます。
世帯数よりも家の数が上回ると、当然、老朽化した空き家は売れにくくなります。少子高齢化が進むほど買い手が減るので、その傾向は強まります。
しかし解体をするにもお金はかかるし、更地にすると、軽減措置がなくなって固定資産税があがります。更地にしても売れる見込みがないと、住宅ローンの返済に追われ生活に余裕のない相続人は、空き家の放置を選択してしまうでしょう。
3つ目は、マイホームが貧困問題を拡大する原因になりうるという問題です。
住宅ローンは、一生かかるほど大きな借金になります。
そして背負った借金の額は、世の中が変化しても変わることはありません。
それに対して、収支は変動します。
競争と変化が激しい時代には安定経営は難しいですし、AI化が進んで雇用が大きく変わる可能性もあります。これはつまり、生存競争が厳しい時代になれば、誰でも仕事を失ったり、収入が減ったりするリスクが高くなるということです。
また少子高齢化が進めば、国も社会保障を維持するのが大変になります。
そうなると、社会保険料や税金が増えても年金の支給額は減っていくばかり。おまけに、物価もあがる一方となれば、住宅ローンの重圧に押しつぶされる人が続出することになりかねません。
そういう悲惨な未来にならないために、住宅イノベーションが必要なのです。
失敗する住宅政策
失敗する住宅政策とは、新築の家を建てることを支援することに偏った住宅政策です。
それが失敗につながる理由は、前にあげたような対応に困る問題を増やすことになるからです。
新築住宅の大量生産を促す住宅政策の目的は、経済成長のためです。
確かに、何世代にもわたって古い家に住み続けられるよりも、次々と新築の家を買ってもらったほうが経済成長にはプラスになります。
また、親と住まいが別になれば、それに付随して家電でも何でも別に買い揃えたり、光熱費や税金も別に払ったりしなければならなくなります。広範囲にその恩恵を及ぼすという点においても、新築の家が増えることはメリットがあるといえるでしょう。
それを狙って政府は、借りるより買うことを選ばすために、買うことのみ手厚い補助をしたり、いつまでも実家をでないのを恥とし、早く独立して自分の城をもつのが立派だという価値観を植えつけたりします。
しかし、短い寿命の使い捨て住宅が増え続けることは、環境にとってはプラスにはなりません。
長い目で見れば、それは行政にとってもプラスにはならなくなります。
独立して新築の家を建てる住民が増えることで居住エリアが無秩序に拡大し、インフラ維持コストがかさむことになるからです。
それに対して住宅の使い捨てで、空き家は増えるばかり。その上、大都市への人口流出が増加したり、少子化が進んだりして、ますます世帯数が減っていったらどうなるか…。
溜まりに溜まったそれらのツケを相続することになるのは、未来の子どもたちです。
そして、恐ろしいほど重い負担を背負うことになる彼らは、新築の家を建てる余裕を失ってしまうでしょう。
そうすれば、新築住宅着工戸数を増やすことで経済成長をすることはできなくなってしまいます。
大量生産・大量消費・大量廃棄をさせることで経済成長を達成することを目指した政策では、経済成長と環境の両立どころか、そのどちらも失うことになるのです。
成功する住宅政策
では、成功する住宅政策とは何か?
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