見出し画像

トレンドブログをやめた人間が、プロの作ってくれた質問に答えてみる

 先日、なんの因果かABEMA Primeというニュース番組に出演させていただきました(僕は口下手が過ぎて三言くらいしかしゃべってません)

 ありがたいことに僕がnoteでモソモソ書いてた記事を見て、声をかけてくれたそうです。テレビの人、絶対忙しいのに、あんなに長い文章を最後まで読んでくれるなんてすごすぎる。


プロの質問技術がすごすぎて感動した

 実は番組出演にあたって、プロのひとが考えてくださった質問というのがあります。これがめっちゃ面白くて、答えたくて仕方がなくなるような代物だったのです。本番で僕がアワアワしていたせいで、このまま日の目を見ずに霧散してしまうにはあまりにもったいない。
 というわけで未練がましく使用許可をもらい、たのしく文章にしたためました。人が答えたくなる質問をするってすごい技術だと思ったので、プロの技術に対する感動と敬意をこめてお届けします。


Q. 今はやってない?(辞めたワケは?)

 今は全くやってません。
放置状態で月に1万円くらい広告収入があったのですが、色々整理してるうちにミスってブログごと消しちゃいました。ウソやん! って思われるかもしれないのですが、ガチの凡ミスです。恥ずかしい黒歴史を消すのってダサいと思ってたので、更新をやめてもブログ自体は残していたんですが……。正直な話、べつに消えてもいいやと思ってバックアップもせずに作業をしていました。未必の故意と言われればそれまでです。

 辞めたのは、じぶんのことがクズに思えたからです。ゴミを生み出す仕事に耐えられなかったともいえます。トレンドブログをやっていると、いいことも悪いことも、世の中のすべてが「アクセスがとれるか、とれないか」の二種類にしか見えなくなります。人の死、理不尽な出来事すら「お、アクセスとれそう」という濁った眼でしか見られない。シンプルに心が終わります。

 あとから思えばもうひとつ、「ブログ見せて!」と言われたときです。こんなクソみたいなものをじぶんと結び付けられることを耐えがたく思いました。ゴミを世に生み出しておきながら、自分がやったと人に言えない、くだらない自尊心にまで気が付いてしまいました。

 じぶんがこんな人間を許せるかというと、まあ許せないわけです。トレンドブログの書き方をひとに教えて、もっと荒稼ぎしませんかと声をかけられたこともあるのですが、同じ理由で断りました。


Q. トレンドブログって儲かるんですか?仕組みは?

 楽して儲かる? という意味なら、儲かりません。残念。イメージとしてはYouTuberみたいなものです。稼げる人はどえらい稼げるようですが、月1万稼ぐのに死ぬほど苦労する人も多いです。稼ぐコツをちゃんと覚えて実践すれば稼ぐことはできますが、普通にそこそこしんどい作業です。儲け話ではなく、一種の仕事と考えられる人でなければ、たぶん100円稼ぐ前にアッサリ挫折します。

 仕組みは広告収入です。テレビのCMと同じと思ってください。トレンドブログと相性が良いのはGoogleAdSenseというクリック報酬型の広告です。簡単に言えば、ブログに張られた広告がクリックされると、1クリックあたり20~30円の収益が発生します。ブログに掲載できる広告には他にも色々種類はありますが、トレンドブログはほぼクリック報酬型だと思います。

 僕は、一番多い時で日に1万円稼ぎました。がぽがぽ稼ぎ族からすれば立派なザコの領域です。知り合いで日に30万稼いだ人はいます。彼も扱うネタは炎上・特定系ではなくテレビ番組のまとめが主でしたね。

 ただ、始めたての頃は毎日2〜3時間書いて月収100円以下なんてこともふつうにあります。別に片手間に稼げるわけでも、コピペでアホほど儲かるわけでもないです。

 トレンドブログの場合、記事の賞味期限は夏場に常温放置した牛乳と同レベルです。つまりどんどん腐っていくわけで、収益のためにはどんどこ新しい記事をつくらねばなりません。日々の記事作成=作業量が多いんです。

 仕事終わりに飲みに行ったり、家族と楽しく過ごす時間を半年~1年犠牲にすれば、一応収益は出る、くらいのレベルです。そりゃまあセンスのある人はそれ以上稼げるがぽがぽ族になりますが、その成果が全人類に保証されているわけではないことはご承知おきください。

 SEO(Googleで記事を上位表示させること)の知識はちょこっと身につくので、それを使ってほんとうに人の役に立つ仕事をするのが、いちばんいいんじゃないでしょうか。


Q. なぜ始めようと思った?

 シンプルに金がなかったから。家の事情で返すべき負債が多く、会社の給料だけでは到底足りませんでした。さらに生まれる性別を間違えたせいで正しい戸籍を手に入れるのに100万ほど必要だったり、大学の学費を全部じぶんで払ったりしてたんでそりゃまあ金がなかったんです。

 思えば中学の頃から、空腹を紛らわせるために水道水をがぶがぶ飲んで寝るような生活をしていました。起きる頃には空腹が度を越して何も感じなくなっているので、そのまま登校し給食で栄養補給、みたいな。生まれついての貧民です。だからお金には貪欲でした。

 きっかけは知人の紹介で、ブログで稼ぐ的なメルマガを読んだこと。そこで10万円くらいの情報商材(ブログ収益化の教科書)を購入し実践しました。ここにもいろいろ闇属性の話はありますが、長くなるのでやめときます。
 あ、べつに情報商材は買わなくてもいいです。もちろん有益なものは多いけど、必須ではない。大学受験の予備校みたいなもので、自分に合っていて導入するメリットが明確であれば購入を検討する程度のものだと思います。買わなきゃ稼げないと言って煽ってくる人は、あなた以上にお金に困ったたいへんな人です。生暖かい笑顔をかまし、音もなくブロックしましょう。


Q. 目的はお金だけ?正義感でやってた部分は?

 お金だけです。暮らす金欲しさにやりました。正義感では絶対にやりません。むしろ正義感でやってると言う人がいたら教えてほしい。えんがちょするから顔と名前を知っておきたい。

 犯人特定コンテンツで大はしゃぎするのは、僕にとっては正義ではありません。自分は安全圏にいて、悪人だとみんなが言う誰かを好きなだけぶっ叩くのは、趣味の悪いエンターテイメントです。ブレイブメンロードって見たことありますか。あれと同じです。正義感からやっているという人がいたら、僕は迷わず距離をおきます。その人の近くに立ってると、いつかあなたも平気な顔してぶっ叩かれるから気を付けた方がいいよ。

 正義ってなにかって、難しいですよね。ただ一つ言えるのは、「人から聞いたから」「みんなそうだと言っているから」という伝聞形式の義憤なら、僕は正義とは呼びません。僕のすきな小説のなかに「世間というのは、君じゃないか」という言葉があります。太宰治という作家の書いた『人間失格』ってお話にでてきます。正義とは、あなたの道はなんですか、あなたは何を正しいと思いますか。というはなしです。

 僕の正義は、常に、加害者である自覚をもつことです。


Q. やりがいや嬉しい瞬間は?

 無い。少なくとも、やりがいは無いです。トレンド追うのにやりがいを見出すって、たぶん疲れ切って頭がヘンになってるだけです。ぽかぽか陽のあたるたんぽぽ畑でお昼寝した方がいい。うれしい瞬間ですか? アクセスが跳ねた時は単純に嬉しいですが、それだけです。自分の狙い通りにアクセスが来るのをゲーム的に楽しんで、うまく続けられる人も中にはいます。


Q. 逆にしんどかったことは?

 やめた理由でほとんどすべて書き連ねてしまいましたが、がんばって時間をかけて生産したゴミが100円の収益すら生み出してくれないときは、虚しさに拍車がかかりましたね。


Q. 書いた中で印象深い記事は?

 特にないです。こっちはゴミを作ってるんですよ。書いた端から内容なんて忘れます。それほど思いを込めて作っていないんです。ゴミを毎日丁寧にラッピングしていたら、心より先に頭がやられますよ。


Q. 書くときのポイントは?

 人の求めるものは何か常に考えること。ニュースや番組を見た、視聴者の行動を予測すること。えげつない方向でのコツなら、「人は常に、堂々とぶっ叩ける悪人を求めている」説を念頭に置くこと。ついでに、多くの人は、身近な人に相談しづらい悩みや不満の答えをインターネットで探すというのも、知っておくと役に立ちます。


Q. よく「人には知る権利がある」っていうけど?

 「知る権利」を都合よく解釈しすぎです。それこそ一度「知る権利」でググってみてください。決して、安全圏にいる人が、娯楽目的で他人の人生を根掘り葉掘りする権利ではないし、そんな権利は誰にもありません。
 そこまで知りたいのなら正しい手順を踏んでください。特に他人のプライベートなあれこれについて。相手に面と向かって聞けないような質問を、ネットで検索するのはお門違いだと思います。


Q. 肯定派の意見として、こんなものがあります。


1.ユーザーが欲する情報を届ける事は悪いことではない。
  食べたい人に商品を提供する飲食店と同じ。

 いや、悪いことですよ。飲食店だって、原材料の産地を偽装してたら怒られるじゃないですか。明らかに間違っていたり、嘘の情報を拡散するのはさすがに無責任です。というか、ほとんどの人が責任をとる気すらないのが一番の問題です。
 僕はブログにお問い合わせフォームを設置してましたが、人の名前を間違えた件で烈火のごとく怒られたこともあります。だからってわけじゃないですが、できるだけ誤情報は書かないように気を付けてました。
 トレンド記事のほとんどは「間違ったことを言って怒られるのは怖い」という気持ちすらない人の発する情報ってことです。飲食店にたとえるなら、手洗い石鹸のない厨房で作られた料理ってところでしょうか。それでもお客の注文に応えているからOK、とはさすがに思えません。


2.トレンド要素を活用するのは立派な戦略

 おっしゃるとおりです。むしろ王道の戦略です。でも、どうせならいい意味で使いましょうよ。悪い意味でしかトレンドを活用できないのって、シンプルに実力がないんだと思いますよ。ソースは僕です。


3.そもそも世の中はデマだらけ、結局は読む人次第じゃない?

 世の中がデマだらけだからといって、新たに増やしていい理由にはなりません。交通事故は毎日起こっていますけど、だからといって飲酒運転が許されるわけじゃないでしょう。第一の責任は発信する側にあります。余談ですが「ひとそれぞれ」という結論に落ち着くのは一種の思考停止だと思います。


4.インターネットは「自由」な世界では? 

 ええと……、こういう文脈で「インターネットは自由な場所だろ!」というとき、その「自由」はちょっと苦手です。たしかにインターネットは「自由」だし、僕はその「自由」さが好きです。何度も救われてきました。でも、世界のどんな場所でも、他人の人権をふみにじったり、尊厳を傷つけていい自由なんてないんです。


Q.デマを拡散する受け手の側の責任は?

 まずは、書く側が悪い。これは大前提です。でも事実として、読まれない記事は書かれません。この記事でもボヤいたのですが、受け手側は「なにかを見る」というだけでも、「私はこの記事を見ました=ほしいと思っています」という意思表示をしていることは、知っておいてくれると嬉しいなと思います。
 見るだけでも、クソパクリ畑に養分をまいているんです。この機会に少しずつ畑から距離をとっていただければ、僕はとてもうれしく思います。


おわりです。

 いかがだったでしょうか?
そんなわけで、思う存分、質問に答えてみました。とても楽しかったです。最後に、僕に声をかけてくださったディレクターさんにお礼をしたためて終わります。個人あてにメールで長文をおくりつけることも考えたのですが、ABEMA Primeはすごくいい番組だな~~と思ったので、それを少しでもお伝えしたいという意味でここにしたためます。


ディレクターさんへ

 非常に丁寧かつ真摯にお誘いをくださり、ありがとうございます。
名前と顔の上半分出しますよ~と言い出した僕を、僕より心配してくださいました。

 クソパクリ界隈ではDMで意味の分からない情報商材を売りつけられることがよくあるので、最初DMでご連絡いただいたときも新手のDM詐欺かと思い一瞬警戒してしまってすみません。

 よく読んでみると詐欺にしては文章がとても綺麗で知性にあふれていて、完全にちゃんとした社会人の方がお書きになられたご依頼メールだったので、どうやらほんとうのことらしいと認識してちょっぴり手汗をかきました。

 本番については、僕ははじめから、主役は出演者の方だと思っていて。まあカレーに添えられた福神漬けくらいの役割が果たせればいいかなと考えてました。ちゃんとできてたらいいなあ。

 正直に言って「テレビの人、だいたい人間を消費することしか考えてない」っていう偏見にまみれた自衛意識をもっていたのですが……。あなたがとても細やかに、番組でやりたいこととか、思いを伝えてくれたおかげでクソみたいな偏見がだんだん融けていくのがわかりました。お声をかけていただき、本当にありがとうございました。楽しかったです。

 以上です。ああ楽しかった。
またいろいろ考えて、書いたり悩んだりしようと思います。
それでは、またこんど。


いつも応援ありがとうございます! サポートいただいたぶんは主に僕の摂取する水分になります。