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「いかがでしたか系ブログ記事」を量産し、月収10万稼いで精神が磨耗した話

 「いかがでしたか? 今日は芸能人○○について、彼女はいるの? 両親の職業は? 出身中学についてまとめてみました」

 という、ブログ記事。
 見たこと、ありますでしょうか。
 あれね。鬱陶しいですよね。わかります。

 わかります。はい。
 だって僕、あれで月10万稼いだこと、ありますから……。

 ちょうど去年の2月ごろ。僕は、副業として運営していたブログで、月収10万円という実績を叩き出した。

 当時は本当に、それこそ家族に報告してそのまま焼肉を食べに行ったくらいには嬉しかった。だって、本当に大変だったから。

 しかし、結局のところ僕はいま、そのブログの更新を一切やめ、ここでこの文章を書いている。

 今に至るまでには本当に様々なことがあったので、今回は単純に、「トレンドアフィリエイトをやった人間の心は一体どうなるのか」という一点に絞って話をしようと思う。

 【注意】結構なダークサイドに脚を突っ込んでるので、ちょっと元気がない人にはおすすめできないです。

 ※ネットビジネス・副業に興味があるとか、聞いたことはあるけど実際やったらどうなるかとか、気になる方には参考になる話かと思います。 

 ※ちなみにこの記事は、トレンドアフィリエイトという手法を推進もしなければ非難もしません。ただ、僕の経験と、感じたことを文章にしています。

 ※ただし僕は結局「トレンドアフィリエイト」からは手を引いたので、その立場での発言になることはご理解ください。


1.トレンドアフィリエイトとは何か

 まず、アフィリエイトという商売方法の中に、トレンドアフィリエイトという方法がある。
 本当にざっくりとした解説になるが、トレンドアフィリエイトは、とにかくブログ記事に大量のアクセスを集めることで収益を得る方法だ。

 そもそもアフィリエイトとは、何か商品やサービスを紹介して、その商品が売れると紹介者に収益が発生する仕組みのことだ。テレビ番組でいうCMのようなもの、と思ってもらえばわかりやすいかもしれない。

 商品が売れずとも、その商品を紹介するための広告が見られる・クリックされることで収益が発生するものもある。

 僕が選んだのは後者の方で、「Google AdSense」という仕組みを使っていた。ブログ記事に広告を貼り付け、その広告が見られたりクリックされると、1クリックあたり数円から数十円の収益が発生する。クリックされればされるほど収益が増える仕組みだ。

 Google AdSenseは、特定の商品(たとえばサプリとかダイエット食品)に限定した記事を書く必要もなく、ただクリックされれば収益が発生するので、ビジネスの知識や特別なスキルがなくても始めやすい。
 初期投資も数千円程度と、個人で始めるビジネスとしては異常なほど安い。

 実際のブログ記事の内容はどうかと言えば、これは実例がネット上に山ほどある。

 Googleを使って芸能人の名前を検索するとたまに見かける、いわゆる「いかがでしたか系」のブログ記事。

 「芸能人○○の彼氏、彼女は?」「出身の中学校は?」「両親の職業は?」とタイトルに入っていたらそれは十中八九トレンドブログだ。

 ネット上のゴミと呼ばれることもあるし、見たことがある人も多いと思う。あれらの記事にはGoogle AdSenseの広告が貼り付けられ、そこからブログ主に対して収益が発生している。

 あの手の記事は、ブログに貼り付けてある広告がクリックされると収益が発生するので、記事はとにかく、アクセスが集まる内容である必要がある。

 だから記事の内容は、多くの人が注目する芸能人の話や、いま話題になっているニュースについて。各記事に関連はなく、ブログ全体で見るとまるで統一感のない記事が大量に存在している。

 都会の繁華街を思い出してみてほしい。雑居ビルの立ち並ぶ通りには色とりどりの看板がごちゃごちゃと並び、人の目を惹こうとやたら彩度の高い色で主張しまくっているが、まさにあんな感じだ。路地裏の目につかないところでゴキブリが地面を這いまわっているところまでよく似ている。

 誤解を恐れず端的に言えば、僕が1年ほどやってきて感じた、トレンドブログの特徴は以下の通りだ。

 ・まったくの初心者でも、一応稼げる
 ・初期投資がとにかく安い
 ・「稼ぐ」ことだけ考えれば続けられる
 ・もちろんスキルは身につくので、悪いことばかりではない
 ・ただ、もし、自分の書いた記事を知人や家族に見られたら
  顔が真っ赤になるでは済まないレベルで恥ずかしい
 ・すこしでも良心が息を吹き返すと辛い

 副業ブログでの経験に関してTwitterでぽろっと弱音を零したら、「それですそれ……」と首を縦に振るしかないコメントを頂いた。本当にそれなのだ。

 トレンドアフィリエイトをしていると、遅かれ早かれ「良心」と「罪悪感」には向き合う羽目になる。
 トレンドを続けていくには、頂いたコメントにもある通り、「強靭な精神」か「罪悪感の麻痺」が不可欠だと思う。


2.ゴミを生み出している自覚はある

 まず第一に、我々にもゴミを生み出しているという自覚は少なからずある。
 そもそも芸能人の不倫だの彼氏彼女だの、ブログ記事を書いている側ですらまったく興味がないケースが98%くらいじゃないだろうか(※くらやの体感です)

 だから、記事の更新を続けていくと、「これは一体誰のどんな役に立っているのか?」「これってやっぱりゴミ記事なんじゃないか?」という疑問が頭をもたげてくる。疑問というか、ほとんど事実だったりするのだが。

 上記のような疑問を抱えていると記事更新の手が止まってしまい、そこでブログをやめてしまう人も結構いる。続けられる場合は僕のように、「罪悪感から上手く目を逸らすことができた」ケースに当てはまるだろう。

 僕が行った方法は主に下記のものだった。

 ・まず、事実として記事にはアクセスが来ている。つまり誰かが見に来ていて、そこには需要があるという事だ

 ・自分は、ネット上にある情報を一か所(自分の記事)にまとめるという"作業"をしている。ネット上のあらゆる場所に散らばった情報を集めるのは手間だし、実際、自分の見たい情報が一記事にまとまっていたら便利だろう

  ……こういう理由を考え、自分を納得させていた。

 当時はこの"理由"があれば何とか作業を続けることが出来たので安心したものだが、今思うと「そんな理由を自分で組み立てなければ良心がやられるようなことを、何故やっているんだ」という話になってしまう。

 何故と聞かれれば、僕の場合「お金が欲しかったから」。その一点に尽きる。過去にいろいろあって、とにかく何でもいいから「自分で稼ぐ」方法が欲しかったのだ。

 そして、トレンドアフィリエイトを実践する人には、僕と同じように「お金に困っている」人が少なくない(無論全員ではない)
 本業が薄給だとかブラックだとかで「どうしても今の仕事を辞めたい」人。
 それから、「パソコン一台で月○万円」「経済的・時間的に自由な生活」など、いわゆるフリーランス的な生き方に憧れ、それを手に入れたいと思っている人もそうだ。
 他にも、子供が小さく外で働けない人、自身や家族の病気・障害が原因で在宅ワークを探していた人……など、総じて「いま、思うように仕事ができず困っている」人がそこそこ多い。

 だから、「いかがでしたか系」記事の量産は「良心がやられようが何だろうが、続けなければならない」ことだった。
 つまり、ああいった記事を書く側の人というのは、そんなことをしなければならないほど追い込まれた人たちである可能性があるのだ(繰り返しになるが、もちろん全員ではない)。

 こうして罪悪感を麻痺させて「稼ぐ」ことだけに集中できれば、おそらく1年かそこらは続けられるだろう。逆に言えば、そこに意識を集中しなければ数か月ほどでやめてしまう人は多い。本当に、多い。

3.人の心の「すきま」で稼ぐようになる(事件事故系トレンドは、本当にやばい)

 「いかがでしたか系ブログ記事」を書く人は、ほとんどの場合その記事で扱うネタについて毛ほども興味がない(記事を書くときまで知らなかった、というケースも多い)とは先述した通り。

 それは僕も例外ではなく、少なくとも芸能人のゴシップにはまったく興味がなかった。それからニュースで話題になっている人、たとえば池袋プリウス暴走事件を起こした人の経歴なんかにもぜんぜん興味がなかった。

 でも、アクセスが取れるから書いた。本当に恥ずかしいことだとは思うが、書いた。

 そうしたら本当にアクセスが来た。

 ほらやっぱりな、と思った。僕の中の、おそらく良心に一番近い何かが少し、欠けたような音がした。

 ともかく、一事が万事そんな調子で、世の中のすべての情報を「アクセスが取れる(=稼げる)か否か」で判断するようになる。そういう思考プログラムが作り上げられていくのだ。

 ものすごく極端な例を挙げると、テレビのニュースで「飲酒運転でトラックが乗用車に突っ込み、死者が出た」というニュースがあったとする。 当時の僕がこのニュースを見たとするなら、おそらく速攻でスマホを立ち上げ、鬼のような速さでその事件に関する記事を書き上げただろう。

 「飲酒運転の○○(加害者)経歴は? ○○勤務って本当?」とか何とか。いま思い返すと胸が悪くなるが、Google検索を駆使して集めた情報を切り貼りした記事に、そんなタイトルを付けて投稿したと思う。

 ただし同じ自動車事故でも、加害者に飲酒運転といった落ち度がなく、被害者も軽傷であれば記事にはしない。それは、アクセスを稼げないと瞬時に判断できるからだ。

 人の生死をなんだと思っているんだ、という感想を抱く人はいると思う。

 当時の僕なら、「あんたらこそ、人の生死をなんだと思っているんだ?」と返すだろう。完全に精神が磨耗している人間の返事だ。

 「だって、そんなこと言いながら僕の書いた記事、見に来てるんでしょう? その検索ワード、わざわざ自分で打ち込んだんでしょう?」

 ……そう、思っていた。

 いわく、どんなゴミ記事にも需要はある。
需要があると確信した誰かの手によって、記事は量産されているからだ。確信に至るには相応の理由がある。その理由というのが、まあ、かなりダークなのだ。

 例を挙げれば、当時、僕にはある確信があった。アクセスがあって、収益の出る記事には共通点がある。

 少なからぬ人が、堂々とぶっ叩ける悪人を求めている。

 だから、どこの誰が見ても「悪い」と言える、人の後ろ暗いところを知ろうとする。不倫、浮気、スキャンダルや悲惨な事故。そこにこそ、過去の僕のような人間が稼ぐ「すきま」が生まれる。

 もっと言えば。事故系の記事であれば「飲酒運転」で、加害者が「公務員」で、被害者が「親子」だとものすごいアクセスが来る。被害者の車が軽自動車だと、現場写真が派手になる(車両が大破するケースが多い)ためアクセスが増える。
 そんなことまで、僕は知っていた。トレンド系の中でも特に、事件事故を扱っていると光の速さで精神が摩耗する理由がここにある。

 堂々とぶっ叩ける悪人がいることを世に知らしめることで、お金を稼げてしまう。

 これはまずい。本当にまずいことだと思う。

 不幸の手紙なんてもんじゃない。
 ネット上に転がった情報を切って貼って、これ見よがしに人の怒りや義憤を駆り立てるだけ駆り立てて、自分が何を言うかと思えば「いかかでしたか」である。
 さすがに当時の僕でも、2か月もたずに事件事故を扱うのはやめた。それほどまでに、何かを失っていく実感がすごかった。

 できれば僕だってこんなこと、やっていたとは言いたくない。
 でも、やっていた人間にしか伝えられない、とも、思った。

 どうせやってしまったのなら、これは伝えないとなあ、と。そう思ったからいまここで、こうして形にしているのだ。


4.トレンドアフィリエイトを辞めてから

 長くなりそうなので要点だけまとめたつもりが、それでも長いし重苦しい話になった。書いてみてはじめて自覚したが、僕は相当、トレンドアフィリエイトで消耗していたようだ。この記事を書いている間、胃袋のあたりがなんだかぴりぴりしたし、肩もガチガチに凝っている。

 冒頭に書いた通り、僕はいま、トレンドアフィリエイトから手を引いている。今後はこのnoteや、新しく立ち上げる予定のブログで発信を続けていくつもりだ。

 トレンドアフィリエイトで失ったものや曇ったものはいろいろあったが、同時に得たものもたくさんあった。ビジネスについての知識もそうだし、WEB上で発信するための最低限の力は、あの経験のおかげで得ることが出来た。それは事実だ。
 僕は今後、そのスキルを使って仕事をしていくわけで、それを求めてくださるお客様もいる。そこについては本当に心底から感謝している。頑張ってよかったとも思っている。

 ただ、それはそれとして、やっている最中に感じたことや現在、後遺症のように残っているモノというのも、事実として僕の中にある。

 今後はそれを整理して、より人の役に立つような形に昇華していけたらと思う。

 たとえば過去の僕なんかは、さっきの文章の中で相当な悪役扱いしてしまった。しかし彼は当時、僕のために身を粉にして頑張ってくれた。
 そして、今現在、過去の僕と同じように精神を磨耗させながら頑張っている人が、きっとたくさんいる。

 トレンドアフィリエイトから手を引いた僕ができるのは、いまも何処かで心を削り続けている彼らに対して発信することだと思う。
 どうしたら心を削らずに済むのか。そうは言ってもお金はないしこれしか方法がないんだと、必死で手を動かし続ける人たちに、こんな道もあるよ、あんな方法もあるよと示し続けること。

 それが、いまの僕にできることではないか。そう考えて、今に至っている。

 目下のところは、この記事を読んで不安にさせてしまったかもしれない誰かのために。いまトレンドアフィリエイトに関わって、なにかを削り続けている彼らに向けて、文章を書いていくつもりでいます。

 最後まで読んでくれて、ありがとう。

 今日はここまで。それじゃあ、また。


 

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