見出し画像

曲を作るように小説を書いてみようとした

普通あまり言わないだろうしあえてこんなこと言うのも格好の悪いことかもしれませんが、このシリーズをnoteではじめてしまったので、最後まで書きます。私の小説の書き方についてです。

詞先(しせん)、曲先(きょくせん)という言葉が最近一般的に知られているようです。歌のついた曲をつくる時、詞を先に書いてからメロディをつけるか(詞先)、先にメロディを決めてから歌詞を書くか(曲先)という意味で使われますが、私が曲を作る時はほとんどの場合まずメロディが出来てから詞を書いていくという順番なので、私は「曲先」ということになります(ごくたまに例外もある)。

人それぞれ好きなやりかたがあると思いますが、詞を先に作ってしまうとそれに付ける節回しが限定されてしまうのもあるし、なんとなく説明的でくどい歌詞になりがちなので、個人的にはあまり先に歌詞を作るのは好きではないです。私が曲を作るときは、まずメロディがある程度出来上がります。そうしているうちに、鍵となるメロディの部分になんとなく単語やフレーズが浮かんできます。よく「降りてくる」と言いますが、まあそんな格好良いものでも無いですが雰囲気的にはそんな感じです。そして最初にできたその一部分のフレーズが核になって、前後の言葉がだんだんと浮かんできて一曲分の歌詞が出来上がる、というのが私のやりかたです。そうやっていると時々、調子の良い時は新しい言葉が芋づる式に脳内からずるずると勝手に引き出されてくるような感覚になることがあって、そんな時はかなり気持ち良くなって一人電車の中とかで興奮状態になっていたりします。

さて、「書きます」と勢いで言ってしまった2015年発行予定の棕櫚第四号に掲載していただくはずの処女作。小説の書き方は勉強したこともないし、さてどこから始めようかと正直困っていました。プロットという言葉はなんとなく知っているけれども、最初から最後まで物語の筋を決めてから書き始めるのかなと思ったら、何故か自分に気恥ずかしさを感じてしまったというか、良いものができそうな気が全然しませんでした。今まで曲の歌詞は何十曲も作ってきたし人に伝えたい事もあるにはあるのですが、最初から最後まで設計図を書いてから何かを書くというのも何となく自分の素の部分がうまく出せなくなる気もして、どうしたものかと。

そこで少しズルいかなとも思いましたが、自分が作った曲のサイドストリー的なものを書いてみたらどうかと思いたちました。ちょうどその頃に発表したアルバムの中の「ストライダー」というリード曲の歌詞の一部からイメージを広げて書いてみることにしたわけです。

誰かのために生きたって
いつか一人になるんだよ 
そろそろ、好きな事、しなさい

という歌詞の一節があって、自分でもここがとても気に入っていたので、そこからヒントを得てイメージを広げていってみようかと。(なお、過去に誰かに言ったかどうか忘れましたが、この部分の歌詞は自分の母親に対する思いを書いたものなのですが)

そうと決めたら急に、物語の前半の展開が映像になって自分の頭の中で再生されていくような感覚になりました。後半の展開はまだ具体的になっていなかったけれども、浮かんだ映像をとにかく言葉に変換していこうと書き始めたところ、なんだかやたらと気持ちよくなってきて、そのまま何時間も集中して文章を書き続けてしまいました。そして書いていくうちに、見えていなかった後半の展開がまた脳内に映像となって勝手に再生されるようになってきたので、私はもっと気持ちよくなって、ほんの二日間くらいで最後まで書き終えてしまい、これはなんだか結構良いのが出来たんじゃないかなという気分になってしまいました。ああ、これは曲を作って歌詞を書くときの感覚と一緒だな、ということで、以後私はこういう小説の書き方を続けています。

他の作家さんたちはどういう書き方をしているのかな。あまりじっくり聞いたことがないけれども、少し興味がありますね。

棕櫚第四号は売り切れになってしまったようなので当面このストライダーという物語を読んでいただくことは叶いませんが、一応曲の動画を載せておきます。歌っているのが私です。まあこれはバンドの宣伝ではなく小説を読んでいただくための文なので、もしも興味を持っていただいたらですけれども。

次回は何について書こうかな。まだ浮かんできませんが、それではまた。

最新号「棕櫚 第七号」予約開始!

マルカフェ 文藝社公式サイト

マルカフェ 文藝社通販サイト


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?