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フランス革命に惹かれ、開拓期アメリカに導かれる

読書を習慣としていると、読む本読む本に連続して同じ単語が出てきたり、意図せず連鎖的に同じテーマの本を読み続けていたりする。

まずわたしに、鮮烈を与えたのは入院に際して持って行った幾冊か本にヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』が登場したことだった。

『レ・ミゼラブル』の存在は、前から知っていた。お気に入りの俳優エディ・レッドメインに釣られて映画館にも赴いたし、大学のキリスト教入門の授業でも取り上げられた。

しかし、文庫で5巻もあるそれを自ら買おうとは思わなかった。しかし、心のどこかに引っかかっていた本である。いつか読みたいと思いつつ重い腰を上げられずにいたのだ。

閉鎖病棟でのわたしの娯楽は、読書に尽きた。その中で繰り返しユゴーの名と『レ・ミゼラブル』を発見した。

日曜日、病棟の公衆電話で母に電話をかけて「レミゼを買ってきてほしい」とお願いした。

数日後、母から届いた紙袋の中には文庫本が5冊しっかり入っていた。

決して読みやすい作品ではない。1か月程度の入院中には読み切ることはできず、その後一年がかりで読み終えた。

あの美しい映画のシーンを思い起こさせる場面に心躍り、映画では描かれなかった登場人物たちの内面、生活、関係性に引き込まれた。

また、都市や歴史さえも主人公に変えてしまうユゴーの文学はわたしにとって新しい文学体験となった。

革命を生きたそれぞれの幸福、他から見れば不幸にも思われる幸福を噛み締める人々の姿が文章から浮き上がる。

関連性のない本と本が繋いだわたしの大切な読書体験だった。

そして今、携帯の乗り換えでもらったポイントを全て本につぎ込んで買った本たちはわたしを開拓期のアメリカへ導いている。

意図して選んだ訳ではない。しかし、次から次へ手に取る本は、荒涼として土煙の立ち上るアメリカ南部へとわたしを連れて行ってくれる。

どこまでも続く平原と高く聳える山脈を、わたしの心に写してくれる。

偶然が導く読書の旅は、わたしの心を離さない。新たな本へまた手を伸ばす。そうすれば、わたしは地球のどこへだって行くことができるし、歴史を遡り過去を生きた人々と接することができる。

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