センス溢れる画家の荒々しい素描のような
ゾエ・イェニー「花粉の部屋」は、ドイツ語圏の文学賞を独占した繊細で果敢な作品。
幼い頃、父と母は離婚し、母は新しい恋人と海外へ、父もやがて再婚していく。
娘を顧みない子供のような親、抵抗の術を知らない子供。
少女ヨーの子供時代と母の元で過ごした短い季節が淡々と描かれる。
ヨーは親に期待せず簡単に捨てられる。この安易さが家族の<今>なのだろうか。
壊れ切った家族への切実な思いが感情を殺した硬質な文体で淡々と綴られていて、寂しさがこみ上げる物語。
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