女性活躍についてのお話会「知・共有・行動 女性活躍再定義 vol.2 仕組みづくり」/2023年12月26日開催
こんにちは!暮らすroom'sです。
今回は2023年12月26日に開催された女性活躍についてのお話会「知・共有・行動 女性活躍再定義」の2回目「仕組みづくり」をレポートします。
ゲストスピーカーは上田市を中心として活動中の1135shinshu(いい産後信州)を運営されているよしざわまほさん、斉藤加代美さんです。
理不尽さを感じても、みんながクリアしているから
よしざわさんはご自身の妊娠・出産の際に、自分も含め世の中の人が「妊娠・出産について知らないことが多すぎる」ことに驚かれたそう。
そこでその体験を元に結婚・妊娠・出産といったライフイベントについて多くの人と共有したい、と思われたことが1135shinshuを立ち上げるきっかけになったとお話してくださいました。
よしざわまほさん(以下、よしざわさん):自分が結婚をした際に、妊娠・出産について自分が知らないことがたくさんあること、また理不尽さ、我慢しなければいけない、「仕方ない」で片付けなくてはいけないことがたくさんあることに驚きました。
例えば、
結婚したら絶対にどちらかが名字を変えなければいけない。
本籍地を一つに絞らないといけない、しかも番地まで決めなければいけないから夫の実家を本籍地にしなくてはならない。
「それいるか?」「この仕組みなんなの?」と思うようなことがライフイベントとして目の前にやってきましたが、「みんながクリアしているから」という理由で自分も対応せざるをえませんでした。
けれど、子どもの世代までこんな理不尽が続くのか?と、自分の子どもが生まれた時から危機感を強めていきました。
1135shinshuの活動
私の活動は「選択的夫婦別姓 陳情アクション」から始まりました。
この活動を進めていくうちに「妊娠・出産について感じたことを共有したい」、「意思決定の場に女性が少なすぎて、出産や子育て、生理の話、婦人科疾患のことなどがなかなか動いていかないんだな」といった想いがより強くなったと思います
2020年9月、上田市議会に結婚しても夫、妻ともに苗字を変えずに法律上の夫婦になれる制度、選択的夫婦別姓を国に議論してもらうための意見書を請願しました。
この制度は30年近くにわたり国に対して働きかけている方々がいらっしゃいますが、家族の絆が失われる、日本人のアイデンティティを損なう変更だといった理由で議論が進んでいません。
2021年2月には1135(いい産後)ラジオを開始しました。
1135と付けたのはたまたま1135が語呂合わせで「いい産後」と読めるからつけただけなのですが、子どもを産んでいようが産んでいまいが、「自分は女であり、子どもを産んでみたいな」と思った人が対話できる繋がりを作れたらいいなと思って始めたことです。
もちろん自分の人生で子どもを産まない、と選択することは尊重されるべきであるし、同時に子どもを持たない選択をした人が子育てに関わることも問題ないとも思っています。
いい産後の「いい」とは何かですが、「いいか悪いか」、「正しいか間違いか」ではなく、自分が「産んでよかった」とか「この選択をしてよかった」と思えることです。何に良さを感じるか、満足を得るかというのは人それぞれですが「私はこれだ」と自分で思えたらそれで良くて、その人それぞれの「いい」を共有したいと思っています。
2023年度は上田市の『活力あるまちづくり支援金』をいただいて「あったか産前産後応援事業」というタイトルで講座などを10回開催し、助産師さんと一緒に母乳をあげるコツを妊娠中の方と学んだり、女性の大敵冷えについてを教えていただいたり、保育園の副園長先生には幼児期をどう捉えるかについて話していただくなど、妊娠中から出産、子どもの幼児期に至るまでのケアを学ぶ場を作りました。
個人的なことは政治的なことである
個人的なことは政治的なことである。
これはフェミニズムに掲げられるスローガンですが、本当にそうだと思っています。
例えば生理痛。これは個人差があることですが、個人の痛みや個人的なことも社会活動に影響しますよね。
結婚についても、結婚してもお互いが名前を変えないでいいとか、同姓同士で結婚してもいいと思っているし、国に決めつけられたり制限されるべきことではないはずだと思います。また結婚の延長で妊娠、出産、子育て、仕事についても「自分で選んで決められる」ことが大事だと思います。
自然なお産を選びたい人、無痛分娩を望む人。片方が正しくて片方は間違っているということはないだろうし、母乳とミルクどちらを選んでもいい。色々な選択肢があって、どれを選んでもいいのに対立させられることが苦しいなと感じます。
働き方についても産休を取る、取らない。
どこで暮らすのか。
1人で育てるのか。
なんでもいい、自分がこうしたいと思うものを選ばせてくれよ、という気持ちです。
ただこれらの選択を支える仕組みがないから「そうしたいなら個人で頑張れば?」という目が向けられてしまうとも思っています。
保育園の制度、色々な支援に対する所得制限。決められた学校制度に合わなければ出ていってください、と言うような形の不登校。
細かい話で言うと予防接種の接種券、「私はいつまでこんな小さな欄に子どもの住所や名前、出生体重を書かなくちゃいけないんだ?!」そういった小さな不便がいつまでも残っている。
そんな小さな不便の一つ一つが「子ども産みたいですか?」となった時の障壁となっているなと感じます。
自分が当事者だからこそ感じている小さな不便に声をあげていかないとどうしても流れていってしまうので、身近なところで共有して声をあげていければいいかと思います。
小さな困りごとに対する声も集めれば大きな声になる
斉藤加代美さん(以下、斉藤さん):私は上田市の市議会議員を2期つとめています。
嫁、妻をしながらも、女でいたい。キャリアでいたい。と欲張りながら3人の子どもを育てました。これは周りに助けてくれる人がいたからで、仕事も1年の育休だけでやってこられたという環境があって続けられました。
私は18年くらい前に産院というお産の場を守る活動をしていて、それが私の今の仕事にもつながっています。
当時は産科不足でどの地域でも産科集約化の動きがあったのですが、それに反対する署名を10万人分くらい集めて上田市では上田市産婦人科病院が継続することになりました。ただこれも今年度(2023年度)で集約されることとなりました。
18年ほど前に産院存続の活動をしていた時は産科医が不足していて、産科医の先生と当事者の意思疎通がなかなかうまくいかない、先生にうまく言えないという状況がありました。そんな中でも助産師の人たちには苦しいことも言えるし、支えてもらえるしで、私がお産をしたとき助産師さんは私たちの「神様」みたいな人で、こういった助産師の人たちを地域から無くしてはいけないという思いで活動しています。
その気持ちは今も変わらず、1135shinshuという形で、自分たちがいいと思えるものをたくさんの選択肢から選べるような地域でありたいなと思っています。
参加者間の話の中では、次のような声が聞かれました。
・産後については里帰り出産でも、夫婦だけで頑張るにしても、みんなで支えてあげたほうがいい、どんな場合においてもオープンにヘルプがあったほうがいいということを感じます。
アメリカでは「ミールトレイン(赤ちゃんが生まれた家庭に無償で食事を持って行くボランティア活動。専用のWEBページ上で支援を受ける側がアレルギーや好み、持ってきてもらう場所、時間などをリクエストでき、支援者がそれに合わせて自分の可能な範囲内で支援ができる。)」というシステムがあるそうです。このシステムの中では助けたり、助けられたりの中で生じるめんどくささを回避できたり、助けてもらう側がうまく相手に甘えられて、助け合いがフラットな関係の中でできるようになっており、この制度の日本版が作れたらと思っています。
また、広くつながり合える場というのは大切だなと思います。民間や個人で繋がって、小さな声を大きくして行政に伝える、そんなこともできたらいいなと思います。
・結婚するのは紙切れ一枚で成立するのに、銀行の通帳から何から名前を変えなければならず、印鑑まで作りにいかないといけない、どうして私だけが。という不便を感じたことを思い出しました。
また自分の孤独だった子育てを振り返って、孤独感を感じていながらも出てこられないお母さん、彼女たちにどんなサポートができるのか、するのかということが重要だと思っていて。
外に出ていけるお母さんたちにサポートがいらないわけではないとは思うのですが、むしろ家の奥へ奥へと隠れていってしまうお母さんたちをいかに探してコミュニティに入れて行くのかということがどこの地域でも難しいところだなと日々感じています。
今回のお話会には、これから妊娠を考える方、子どものサポートを考慮に入れてフルタイムではない働き方を選択されている方も参加されており、それぞれが今感じることについて意見を交流し、その話題は子育て中に受けられる支援について、助産師さんについてなど多岐にわたりました。
斉藤さん:今は「言っても無理だろう」と諦めちゃってる風潮がある気がしています。そこを諦めないで、例え生活の困りごとでも、小さな困りごとでも集めれば大きな声になるので「みんな声を出していこう」とゆるめていく活動をしていこうとしていると私は思っています。
外に出て行ける人、声を出せる人はどんどん活躍してもらえればいいと思いますし、同時に隠れてしまう人、奥へ奥へと行ってしまう人をどのように掘り出して行くのかというのは悩みでもあります。
女性、男性と区別してしまうのはあれですが、やはり女性の方が感性がいいと思います。理論的にどうこうではなく、感性で感じてそれを言葉で出す。それが政治に生かされていけばもっと住みやすいやっこい(やわらかい)地域になるのではないかと思います。
よしざわさん:今で言うと圧倒的に男性の方が政治の場に多いから「頑張らないと聞いてもらえない」ように感じます。
先ほどの名字の話にしても、みんな少しずつ憤っていたり不便に感じていますよね。子どもの世話を女性である自分が引き受けるということも、それを望んでいないわけではないけれど夫か妻か、男性か女性か、どちらかが引き受けざるを得ないみたいなね。
名字に関しては自分が変えるしかないなと思って改姓を引き受けたのに「望んでやったんでしょ?」と言われて黙らされちゃうみたいなところがあります。お互いのためを思って私は良かれと思って引き受けた役割なのに「そんな感じでくる?」と思うことはあるんじゃないかなと思います。
最後にゲストのお二人にこれからについても伺いました。
斉藤さん:2023年度はいいプログラムができたので、来年度もママ向け、パパ向け、孫育てといったプログラムを実施したり、妊活であったり出生前診断といった知識を共有できる講演会のようなものができたらいいなと思っています。
これからも「あったかい活動ができたら」という思いで諦めずに行きたいと思います。
よしざわさん:自分が困っている時、自分だけが困っている気がしてしまうけれど、妊娠前や、産んだ直後、それぞれのタイミングごとに大変さがあって「いつも初心者」だなということを子どもを産んでから思います。
これが嫌だったとか、自分のお産がどうだったとか、こういった話をみんなあまり人にするものじゃないと思ってしまいがちですが、それこそが他の人と繋がれるキーワードになったりするので「声を出す」ということは大事だなと今回改めて思いました。
周りのサポートを受けながら自分が当事者としてできることをやっていければいいなと思います。
よしざわさんと斎藤さんのお話は、私たちが違和感を感じているのに見て見ぬふりをしていたことに正面から向き合っていて、とてもかっこいいなと思いましたし、日常生活で感じた小さな違和感に、子どもたちの未来のためにも、少しずつでも正直に向き合わなければと考えさせられました。
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