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おすすめ本のご紹介。「山の図書室」の本棚から。

おはようございます。

春眠暁を覚えず…と言いますが、最近は夜に本を読んでいるといつの間にか寝落ちしている、ということが多いです。

「読書って体力がいるんだな」というのも、最近分かったこと。「リタイアしてからゆっくりと読書したらいいや」と思っている若い方々には、歳を重ねると本を読むのも体力勝負ですよ、と言いたい。実家の父親が寝床にずっと同じ本を置いているのが、今になって理解できるようになりました。

さて、そんな中でも隙間時間で読書を楽しんでいます。今日も「山の図書室」の蔵書からおすすめ本をご紹介しますね。春からの新生活、通勤などで本を読む時間ができる、という方もいらっしゃるかもしれません。参考にしてみてください。

「山の図書室」とは…シマシマしまねに付属するちいさなちいさな図書スペースです。
公立の図書館のように蔵書がたくさんあるわけでもないですし、勉強ができるスペースもありませんが、スタッフが実際に読んで心を動かされた本や、おすすめしたい本を中心に、ちょっと立ち寄ってみたくなるような本の場を目指しています。
現在鋭意準備中、貸し出しができる体制を整えつつあります!


「古典を読んだら、悩みが消えた」 安田登 著 大和書房

「世の中になじめない人に贈る あたらしい古典案内」という副題がついていて、この副題に惹かれて手に取ってみました。

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著者は能楽師という職業のかたわら、古典の新たな世界を広める活動をされている方。この本では、現代社会のいろいろな「悩み」に対して、古典文学や能の演目などからその答えを探ってみよう、という試みをされています。

思ったよりもくだけた内容で、「もうちょっと深く知りたいな…」という感じで各章が終わるので、久しぶりに古典を読んでみたくなります。「平家物語」の章では、現在放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で出てくる戦いについて述べられていて、「おごれるものも久しからず」というテーマの深さを知ることができました。また、「論語」の章では、今まで「漢文の練習問題」としてしか対峙してこなかった書物について、あらためて知ることがたくさんありました。ゆるっと読めてしまうので、国語好きな方はもちろん、あまり興味がない、という方でもすんなり世界に入れるのでは、と思います。


「認知症世界の歩き方」 筧裕介 著 ライツ社

以前から、読んでみたいなあ…と思っていた本。他のスタッフからも「ぜひ蔵書に」という声があった話題の本です。

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認知症、決して遠い世界の出来事ではない問題です。自分の身の周りでも、いつ起こるか分からないし、すでに起こっているところもあります。もし自分が認知症になったり、家族が認知症になったりしたときに、この本を読んでいるとある程度心づもりができるんじゃないか、そんな気がします。

前半は認知症の当事者のエピソードがたくさん紹介されています。「認知症世界」という世界へ放り出された人たちが、「自分で自分のことが理解できない」という不安を抱えており、それを13種類の「旅」になぞらえてストーリーが展開されています。また後半では、実際に当事者になったらどうしたらよいのか、具体的に、やさしく説明されています。

正直、読んでいるとどんどん不安になります。一度読んだだけでは、心臓がバクバクして「怖い怖い」で終わってしまうので、何度も繰り返し読んだり、13種類の旅を1つずつ考えてみたり、と、折に触れて読み返すのが良いかもしれません。大切なのは、認知症はひとりひとり、それぞれに見えている世界が違うということで、決してこの1冊ですべてが解決するわけではない、ということ。入門編として、先述したように「心づもり」ができる本かな、と思います。


「自由と成長の経済学」 柿埜真吾 著 PHP新書

副題に「『人新世』と『脱成長コミュニズム』の罠」とあります。こちらの本は、2021年のベストセラーでもある斎藤幸平氏の「人新世の資本論」への、いわばアンサーソングともいえる本。なので、この1冊を読むのではなく、まず「人新世の資本論」を先に読んでから、こちらを読むほうが絶対にいいと思います。というか、そうしないと著者の「脱成長コミュニズム批判」の熱に負けてしまう気がします。

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私は両方読んだのですが、「人新世の資本論」では、資源が枯渇し温暖化が進む現代で、環境問題を解決するために人々は「脱成長」を目指すべきだ、という主張が展開されていました。みんなが幸せになり、温暖化を止め、貧富の差をなくすためには、みんなが必要なものはみんなでシェアできるような世を目指すべきだ、ということ(めちゃくちゃ雑にまとめると)です。

「自由と成長の経済学」では、それを真っ向から否定しています。詳細は実際に読んでいただきたいのですが、著者の柿埜さんの論調が畳みかけるように次々とデータを使って攻めていきます。

資本論

個人的には、「人新世の資本論」で感じていた違和感が論理的に説明されていて、すっきりしたな、という印象です。

両者の主張を比べたり、それぞれが抱えている危機感を読み解くことで、未来がどうなっていくのかをまた新たな視点で考えることができるようになると思います。経済の本ではありますが、2冊ともすごく読みやすいのでおすすめです。

今回は、小説やエッセイではなく、どちらかというと手の出しにくいジャンルの本を3冊紹介しました。普段はあまり読まないけれど、こういった本を完読すると、知識の引き出しが増えたような気がして(あくまでも気がするだけですが)、充実感があります。皆さまもぜひ、読んでみてくださいね。

「山の図書室」には、ほかにもいろいろなジャンルの本が並ぶ予定。とっておきの1冊と出会い、ここから好奇心の輪が広がっていく、そんな場になれば、と思っています。詳しいことが決まりましたら、またお知らせしますね。

過去のおすすめ本については、こちらのマガジンからどうぞ。







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