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さとり世代のその後~「同じ」がいいのか「違う」がいいのか

以前「時々、コラム」で、こんな2つの記事を綴りました。

まず大学の入学式のスーツに多様性がまったくない、ということに驚愕したという記事。

そしてそこから約半年を経て、実際に子どもたちが入学を迎えるにあたって書いた記事がこちら。

くらしアトリエスタッフはシャイなのに人と同じことをするのに抵抗がある、というちょっとめんどくさい性格をしているのに加え、行動のひとつひとつをいちいち「これっておかしくないか?」と考えてしまうのですが、コラムでも一貫して「多様性」について、またそれに伴う「生きにくさ」について考えてきました。そしてそこから派生する、「多様性を認めろ!」という同調圧力(それはもはや多様性とは真逆の思考である)についても思いを綴ったこともありました。

※ちなみに入学式のスーツを選んだときには店員さんに「就活でも着るなら黒」「就活で黒以外のスーツを着てたらダメ」「黒以外だと新たに買わされますよ」と言われ、「うっそだあ、そんなことあります?」「ありえんわ」と意見をして娘たちに「黙っといてよ!」と煙たがられ、結局はいはい、という感じで黒いスーツを買ったのでした…。

コラムの中で書いていますが、

もっとみんな、いろいろな中から好きなものを選べる時代であってほしい。「私はこれが好き!」「うちはこれがいい!」というスタイルを、「私とは違うけど、それも素敵だね」と言い合える世の中であってほしい。切に思います。

と、まあこれに尽きるわけです。

で、高校卒業→大学入学を経て、次に来るのは何ぞやというと…それは「成人式」です!と言ってもまだ1年近く先の話になるのですが、昨年末くらいからいろんな着物のお店からのチラシが自宅に届くようになりました。

まわりの人に聞くと、「早く予約しないと、他の人と柄が重なったりするらしいよ!」とのこと。

…ええ…?入学式ではみんな同じものを着ることにあんなに必死になっていたのに、成人式では逆に人とは違う着物を着ないといけないのか。人と同じことが今度はタブーになるのか。

「成人式では着物を着るべき」という思考がまずしんどいな…あえてジャージで行くような強者はおらんのか、と、ひねくれた私なんかは思うわけで、でもうちは幸い手持ちの振袖があるのでまあそれはいいか、一生のうちで振袖を着ることもそうないだろうから楽しみだな、でもあれだな、襟に巻くあの白いほわほわ(名前が分からない)は買わないといけないのかな、あれたぶん成人式以外に使い道ないよな、ああめんどくさい、などと思っていたら、先日娘たちから新たなる情報が。

成人式の後の同窓会では、女子はみな「ちょっとよそいきのドレッシーな服」を着ることが恒例になっているというのです。

「…そ、それはどういうやつなの、〇〇歌劇団の娘役の人が着てるワンピースみたいなやつなの?」と聞くと、「そうそう。なんかちょっとテカっとパリっとした生地のドレスみたいなやつを着るんだよ」ときっぱり。それもやっぱり他の人とかぶったらダメなのだそうで、どんなのを着ようかと思いを巡らせているようでした。

娘たちは今どきの若者なので、「〇〇するべき」というレールがあったらそこをとりあえず歩いておきたいタイプの人間です。そこで妙な自己主張をしたり、時流に反抗したりすることは「労力の無駄」であり、「めんどくさい」ことなのだと思います。合理的で、空気を乱すことに意味を見出さない。

だから私が自分の若者時代の無駄な青春の話をしたりすると、心底呆れた顔をするし、「なにそれ」と一蹴して終わりです。私から見たら、過去の思い出なんてほとんどが「無駄」で出来ているし、無駄な時間や回り道が何より記憶に残って現在の自分を形成しているように思うのだけど…。

この子たちが本当の意味で「自分探し」を始め、オリジナリティのある生き方をする時は果たして来るのだろうか?ちょっと不安を覚えつつも、「…長く着られるようにシンプルなワンピースがいいんじゃないの?そのうち友だちの結婚式とかでも着るだろうから」と当り障りのない返答をしてしまう母なのでした。

今年も3月に入って、フレッシャーズスーツのCMが流れ始めました。無事に入学式、執り行われると良いのですが、すでに中止となっているところもあるようです。
あの時紳士服ショップの女性店員さんに「入学式ですか、では黒のスーツですね」と当たり前のように言われたけれど、実際に出席してみたら紺色のスーツの子もけっこういました。ブラウスもみんなかわいいのを着たりしていて、大学のカラーにもよると思うけど、それなりに自己主張をしてる子もいたなあ。なのでもしこれからスーツを選ぶという方がおられたら、黒一択ではなく、お子さんに似合う色のスーツを探してあげてくださいね。

このコラムはまた成人式の後に続編を書くことになると思いますが(笑)、「選ぶ」ことの楽しさと難しさ、オリジナルを求めることのわくわく感とリスクは、これからも子どもたちの人生につきまとうのだと思います。

繰り返しになりますが、「私はこう思うからあなたとは違うけど、あなたの考え方も素敵だね」と言えるような、認め合える世界を!切に願います。



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