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「答えがないもの」に惹かれる。〜そもそもなぜこんなに一生懸命うつわを売っているのか。

ここのところ、ずっとうつわの話ばかりしていて「どんだけうつわが好きなのか」という感じですが、今日の「時々、コラム」はうつわの話かと思いきやそうではない…でも結局うつわの話、みたいな内容です(すいません)。


10月12日から始まった、うつわのオンラインイベント「うつわと暮らしを楽しむ秋」。

毎年11月に「シマシマしまね」の施設で開催していたうつわイベントを、今年はオンラインで開催しよう、と企画しました。

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実際に始まって感じたこと…お客さまと直接作品の魅力を語り合ったり、説明したりして選んでいただくのと、オンラインで見ていただくのは、もちろん手法や手間のかけどころは違うのだけど、でも根っこは同じだなあ、と実際にやってみて分かったことがあります。

それは、「モノの向こうにある見えないものをどれだけていねいにお伝えし、お客さま自らの意志で能動的に選んでいただけるか」ということ。

そしてそのことは、うつわに限らず私たちくらしアトリエが15年前から考え続けてきた、地域づくりや地方の発信にも通じるところがあります。

見えないものを届け、自らの行動に変えてもらう、というのは難しく、正解もない。

そういう、「答えのないもの」にくらしアトリエは惹かれるのかもしれません。やっかいな性分です…。

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そもそも、なぜくらしアトリエはうつわイベントを行っているのでしょうか。

ネットショップ「だけ」をご覧になっている方は、うつわ屋さんなのかな、と思っておられることでしょう。
また、うつわイベントに関して言えば鳥取や広島といった「島根以外のもの」も販売しているので、「シマシマしまね」のコンセプトをご存じの方は、余計に「なんで毎年やってるんだろう」と思われるかもしれません。


端的に説明すると、「うつわ=暮らし」だから。
暮らしを見つめ、自分なりのものさしを持って生活することが、くらしアトリエの目指すゴールのひとつだからです。

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うつわには、日常をちょっと楽しく、豊かにしてくれるスイッチのような役割があるように思います。

このうつわに盛り付けたい、とお料理を想像してわくわくしたり、家族で囲む食卓がちょっとにぎやかになったり…いつもの食事を「ちょっと良い時間」に変えるスイッチを、うつわは持っている。そして、「モノ」としてのうつわが例えば壊れたりしてなくなってしまったとしても、その「ちょっと良い時間」の記憶や思い出は心に残る。「モノ」としての実態がなくなってしまったとしても、記憶や思い出も含めての作品だとすれば、うつわはいつまでも存在している。そのことを大切にしたい、と思うのです。

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暮らしを変えるスイッチはひとりひとり違うから、私には「これ素敵!」と思えるうつわであっても、違う人はそうは感じないかもしれない。作り手はひたすらに使う人のことを考えて手や心を動かし、作陶されるけれど、選ぶのは使う人自身で、すべての人のスイッチにはなり得ないわけです。うつわは、自分が選び取る「暮らしのスイッチ」とも言えます。

だから、イベントではいつも「なぜそのうつわを選ぶのか」を考えてほしい、と思っています。

有名な窯元だから、とか、みんながいいって言っているから、とかいう理由ではなく、「自分自身が日常の中で使う道具としてどうか」というところをとことん、時間をかけて考え、選んでほしい。そういう意味では、ネットショップで時間をかけて選ぶというのも、これからのうつわの買い方なのかもしれません。

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もうひとつ、私たちがうつわにこだわる理由は、「うつわを手にすると作り手の思いが分かる」と信じているから。非科学的なことはまったく信じないのですが、実際にうつわを手にしたとき、確かに何か伝わるものがあるのです。これは本当に不思議で、根拠もありませんが、実感として信じていることです。

作り手に「伝えたいこと」があるうつわは目をひき、手にせずにいられなくなる。なぜなんだろう…とずっと考えていましたが、一見「見えないもの」を感じているようでいて、実は作り手が試行錯誤した「痕跡」が見えているんじゃないか、と思うようになりました。

人類がずっとずっと太古の昔から使い続けてきた「うつわ」。そもそもは、土(あるいは木)と火で作られ、合理的に食事をするための道具でした。

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そして今、たくさんの作り手が使う人のことを考え、日常で使う楽しさや美しさを追求し、使い勝手やデザインを極めるために、試行錯誤しながら作品を作ってくださっています。そのひとつひとつのこだわりや熱量が、最終的な形となって作品ができあがる。だから、「加えたところ」「削ったところ」「迷ったところ」などがフォルムや質感に顕在化し、それが手を通じて伝わっている…んじゃないか、と思うのです。作り手の試行錯誤の跡を感じたとき、「なんかいいなあ」と感じる、のではないでしょうか。

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ネットショップでは直接手に取ってその熱を感じていただくことができないのですが、だからこそ、どうしたら作品の形、の向こう側にある作り手の思いまでをお届けできるのかを私たちも考え、「伝われ~!」と念じながら日々発信をしています。なぜなら、作り手を応援し、求めている方に向けて発信する、というのもくらしアトリエのミッションのひとつ。より多くの方にうつわの魅力を感じてもらえたら…という気持ちで、イベントを毎年企画しているのです。

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…と考察してみたところで、結局「スタッフがうつわが好き」というのがイベントを毎年開催している最大の理由なわけですが…(たくさん食器を持っているわけではなく、うつわを見たり手にしたりしてわくわくすることが好きなのです)。でも、自分たちの中ではしっかりと「くらしアトリエ」のコンセプトの中で活動しているつもり。暮らしを楽しく、日々を豊かに過ごすためのきっかけのひとつとして、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

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「いい買い物したなあ」と選んだ自分を誇りに思えるような、自分だけのスイッチになり得るうつわを、自分の感覚で選び取ってほしい。

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そんな思いから、1か月という通常よりも期間を設定して、じっくりゆっくり見ていただけるように企画しました。


そして、自分の持っているうつわをもう一度見渡して、なぜそのうつわが食器棚におさまっているのかを考えていただきたくて、ネットショップ以外に「うつわにまつわるエピソード」の発信も行っています。

買ってほしいけど、買わなくてもいい。
一度、ご自身が持っているうつわについてゆっくり考える時間を持ってほしい。

そんな思いを込めてのオンライン開催「うつわと暮らしを楽しむ秋」。
ネットでの販売は11月10日まで、その後11月12日から14日までの3日間、出雲市斐川町で直接の販売会も予定しています(予約制となります。詳細は来週以降お伝えいたします)。

見えないものをお届けするのは難しいし、答えは出ない。でも、やりがいがあるし楽しい。

残り約20日、どうぞよろしくお願いいたします。



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