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「うつわと暮らしを楽しむ秋」始まります。「うつわ×料理」Vol.1 掛合の食文化を守り受け継ぐ「うすの会」さんのお料理。

おはようございます。

本日より、オンラインイベント「うつわと暮らしを楽しむ秋」がはじまります。

ネットショップは朝8時にオープン予定。

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総数約350点の作品をご紹介しています。すでに作品は見ることができます。作り手ごとに楽しむこともできますので、ギャラリーをのぞく感覚で、どうぞゆっくりご覧くださいね。

そして、あわせて企画している「うつわ×料理」のコラボレーション。第1回としてご紹介するのは、雲南市掛合町「うすの会」さんです。

にぎやかなおばちゃんたちで構成されている(おじさんもいます)団体で、普段は地元・掛合町産のお米を使ったお餅や笹巻き、お漬け物などを製造されています。

今回はメンバーの朝山さん・坪倉さんに、「ザ・雲南の田舎料理」として、お煮しめと山菜おこわを作っていただきました。何度もおうかがいしているご自宅での撮影です。

到着したら、「まあまずコーヒーでも飲みなさいませ」と席に通されたのですが、お茶うけが栗の渋皮煮と手作りの羊羹、というハイレベルなおもてなし…!でもこれも特別なものではなく、「小豆があったからちょっと作ってみた」という感じなので、ごくごく当たり前のこと。その証拠に、うかがうたびに季節の果物や旬の素材で作られたお茶うけがさりげなく出てきます。

渋皮煮も、「今年は栗をいっぱいもらってほんとに困るわ~皮をむいてからごされれば(くれたら)いいのに」とか言いながら、大きなお鍋で大量に(本当に大量に…)作っておられました。

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渋皮煮を盛り付けたのは、鳥取県岩美町の「牧谷窯」杉本義訓さんの角鉢です。

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小さなサイズで、お漬け物や先付などを盛り付けるのに良いな、と思って仕入れたものですが、こうして栗を乗せてみると、良い!

※使用しているのは「mh1a 青×茶ライン」です。斜めに入ったラインが渋いデザインで、あらためて汎用性の高さを再認識しました。フルーツをひとり分乗せたりするのにもよさそうです。


撮影に際し、まずお願いしていたのは、雲南市または出雲地方で「ハレの日のお料理」といえばこれ!の「煮しめ」です。

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煮しめとは、たけのこ・にんじん・ぜんまい・油揚げ・こんにゃくなどをそれぞれ別々に煮て、お皿に盛り付ける雲南市の郷土料理です。

朝山さんと坪倉さんが作る煮しめは、とにかく色が美しい…そして、山菜が生き生きとしていて、本当においしい!

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そして何よりすごいのが、「材料はほぼ掛合町産」なのです。野菜やたけのこ・ぜんまいなどの山菜は言うに及ばず、お豆腐や油揚げ、こんにゃく、干ししいたけに至るまで…!なんて贅沢!なんて豊かなんでしょう。

「当たり前にあるものを、当たり前に手間をかけて作っとるだけだけどねえ」とけろりとした顔でおっしゃっていますが、食材を「ひとつひとつ」「別の合わせだしで」「味をふくませ、かつ色が変わらないように」煮ていく作業は、すっごく面倒くさいと思うのです。実際、おせち料理などでもこの手間を省くために、いわゆる「筑前煮」のようにまとめて煮る煮ものを作っている我が家。「そんなにめんどうなものでもないけどねえ」とおっしゃるおふたりの、暮らしの中に「手間をかける」ことが深く根を下ろしているようすが、本当に素晴らしいなあとしみじみ感じました。

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盛り付けは、こちらも「牧谷窯」さんの7.5寸の大皿に。坪倉さんが時間をかけて色合いを考え、手がけてくださいました。

素晴らしい…のひと言!お皿に存在感があり、土の持つダイナミックさのようなものも感じるので、煮しめとの相性もぴったりでした。これは真似したくなります…。

ふちの部分には模様がないので、こうして煮しめを盛り付ける際にも、食材の色の邪魔をあまりせず、かつ存在感も出せるのが魅力だと思います。


海のそばで育った私にとって、この「煮しめ」はまさに異文化であり、山の恵みの豊かさの象徴です。受け継がれてきたものの素晴らしさに心を動かされるとともに、ずっとずっと、この文化が残っていってほしい…!と願わずにいられません。私も次のおせちでは、頑張ってきれいな煮しめに挑戦してみたい!頑張ってみようかな。

ちなみに、おいしく作るコツは「材料を測らない」「歳をとったらおいしく作れるようになる」だそうです。つまり、味覚を頼りに何度も試行錯誤しろ…ということですね!

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そして、もうひとつお願いしていたのが「山菜おこわ」。

こちらも掛合のもち米で作られています。弾力があって懐かしい味わい…!山菜は、旬の時期に朝山さんたちや、ご主人たちが山の中に入り、それをていねいにていねいに塩漬けにして保存されているものです。手間をかけるスタート地点が、山に入るところだからすごいですよね…もっと言えば、その山をきちんと守り、管理しているところからだから、もう食と自然が一体化していて、これぞ本来の食のあるべき姿…という感じです。

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おこわは、広島県で作陶されている「朴禾」さんのプレートに盛り付けていただきました。


こちらも「南天の葉でも飾ってみるかね」「赤い葉と緑の葉、どっちがいいだろうか」と、おふたりでわいわいにぎやかにディスカッションしながら仕上げていただきました。

「カレー皿」と名前を付けていますが、深さがあり、ふちの部分が立っているのでおこわにもぴったり。朴禾さんの作品の持つ素朴な雰囲気にもよく合っていると思います。

ちなみにおふたりによると「おこわは皿で食べるもんだ」とのことで、こうして大きく盛り付けたおこわを、各自が平たいお皿にとって食べるのだそうです。「茶碗じゃないのか…」というのが地味に衝撃でした。


こちらもすべて手作り、掛合産の野菜の漬けものアラカルトとともに。

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いや~色合いが美しい!江津市の「嶋田窯」のお皿に、色あいよく盛り付けてみました。糸瓜、梅、みょうが、ふきなど。和の食材と石見焼の相性はさすが!という感じです。

比較的お手軽な価格で手に入るのが石見焼の特徴のひとつ、ともいえるのではないでしょうか。「うすの会」のおふたりも、どちらかというとこういう和食器的なデザインのほうがお気に入りだったようです。

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雲南市の(私たちが言うのもなんですが)本当に山深いところで、いつも明るくからからと笑っておられる朝山さん・坪倉さんは、私たちスタッフの心の支えです。「私たち笑顔がいいでしょう」と自らおっしゃっているとおり、おふたりが笑っておられるのを見るだけでこちらの気持ちも軽くなります。そんなおふたりが作る料理だから、おいしくないはずがない!

「うすの会」の名前からも分かるとおり、一番の看板商品はお餅です。

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ちょっと塩味の黒豆餅がすごーーくおいしいです!
こちらは朝山さんのご主人が中心となって、今の時期から冬場は毎週土・日曜日に製造されています。「こづき」という、蒸したもち米をうすの中でこづいてまとめていく作業が何より大切なのだそうで、これがおいしいお餅になる秘訣とのこと。ご夫婦で息の合った作業であっという間につきあがるお餅、つきたては本当に絶品です!

販売されているのは雲南市掛合町の道の駅に隣接する「グリーン掛合」という産直市。7時半から作り始め、10時半には終わるらしい(早い…)のですが、お餅をついている間にもひっきりなしにお客さんが来られ、10個、15個と売れていくそうです。地元でも評判のおいしさなのです。

こちらのお餅、11月12日からの「オープンスペース美南」でのうつわマーケットで販売させていただく予定にしていますので、良かったらお試しくださいね。

また、年末にはお正月用のお餅の注文も受け付けておられます。こちらについてはまた時期が迫りましたらお知らせいたします。

お餅のおいしさについては、こちらの動画をぜひ!ご覧くださいね。

おいしい料理に、魅力あふれるうつわたち。当たり前のことですが、やはり料理を乗せて初めて、その作品の良さを感じることができる部分も多いと思います。

ぜひ食事の際には、「どれに盛り付けようかな」と考える時間を作ってみてくださいね。

*先週末の「時々、コラム」は、うつわとともに食卓に欠かせない「箸」がテーマ…というか、そこから考えたいろんなことを綴っています。

こちらも良かったらご覧ください。なお、今週の「時々、コラム」はお休みとなります。


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