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行儀が悪いけどおいしい。特別感のある食の記憶。

今朝、朝の某番組で鳥取の「板わかめ」が紹介されていました。ご覧になった方、いらっしゃるでしょうか。

マーティンがごはんに板わかめをオンザラ~イス!して食べておられました。

「板わかめ」は鳥取の特産品ですが、島根の特産品でもあります。つまり山陰名産。こうやって「おいしい!」と紹介していただくのはすごくうれしいです。

いたワカメ

「板わかめ」をご存じない方に向けて紹介すると、わかめを板状に乾燥させたのが「板わかめ」で(そのまんまですが)、海水の塩分だけで味付けされたシンプルな味わいですが、磯の香りも感じられ、オンザライスはもちろん、お酒のあてにしたり、そのまま茎のところをしゃぶったりと、重宝する商品。
(写真がないので、イラストですみません)

天然ものの板わかめはけっこういいお値段がしますが、子どもの頃はそんなに高いものだという自覚もなく、季節になれば台所のテーブルにいつも置いてある、そんな存在でした。

山陰の家庭なら、食べかけの板わかめが湿気でしんなりしないように、洗濯ばさみで封をしてテーブルに置く、というのがスタンダードな風景ではないでしょうか。

茎の部分が塩辛くて敬遠されがちで、最終的に茎だけになっちゃったりするんですよね…ふふ。

ところで今日、「テレビに板わかめが出てた」という話から、

「あの、板わかめの袋の底の方に溜まった細かーいわかめを、ごはんにさらさらっと乗せて食べるのがおいしいよねえ」

という話題で盛り上がりました。

いたワカメ2

ビニールの袋の下の隅っこに、砕けた乾燥わかめが溜まるんです。

それが、手でちぎったのとは違ったおいしさがあって、あったかいごはんに乗せたりおにぎりにまぶしたりして食べるのがたまらなく「特別!」だったのでした。

袋の中が残り少なくなると、きょうだいで虎視眈々と底のわかめを狙ったものです。共感する!という方、おられたらいいなあ…。

そういう、ちょっと行儀が悪いけど背徳感のあるおいしさ、みたいなのを思い出していたのですが、子どもの頃すごく楽しみにしていたのが、「アラ!」の瓶です。

「アラ!」とは「ご飯のお供」です。

あら


いわゆる佃煮で、瓶に入ってます。この「アラ!」の瓶が我が家では朝の定番で、ごはんにのっけて食べるのが日常だったのですが、「アラ!」が残り少なくなってくると、「アラ!」の中に逆にごはんを入れて、ぐるぐるっと周りの佃煮をごはんにまぶして食べる、という特典(?)があり、3人のきょうだいで誰が「アラ!」にごはんを入れるか、争奪戦でした。

あら2

親からしたら「行儀が悪い」の極みみたいな行為ですが、これがすごく魅力的だったんですよね~。自分がその番に当たったときには嬉しくて、変な背徳感を感じながらごはんをぐるぐる、したものです。

今は「アラ!」を常備していないので瓶の中でごはんをぐるぐる、はできませんが、たまーに見かけると鮮明にあの風景、あの味を思い出します。

今思うと、「普段はごはんにかけるのに、逆にごはんを瓶に入れる」というのが妙な特別感があり、うきうきしてしまったんですよね。

スタッフは「カレーを食べ終わった鍋にごはんを入れて、鍋肌にこびりついたカレールーをごはんにまぶしてチーズとかを入れて食べる」と言ってましたが、それも同じ原理かも。

「残り物までちゃんと食べる、そして行儀が悪いけどおいしい」みたいなの、何だかちょっと面白い。ちなみに兄は「なめたけ」の瓶でもやってましたね…。
あの瓶はごはんを入れたら取り出しにくいと思うなあ…。

余談ですが幼い頃、「ごはんに醤油だけをかけて食べる」というのにハマった時期があり、親に隠れてこそこそとごはんに醤油をかけていたのですが、当然バレて、めちゃくちゃ怒られた記憶があります。でも、「アラ!」にごはんを入れるのは容認されてたんだよな~。その辺のあいまいさも、食の記憶として鮮明に残っています。

こういうちょっと変わった食の風景、どこのご家庭にもあるのではないでしょうか。

うちの父親は晩ごはんがおでんの時にはかならず煮汁にゆで卵を溶かして、その汁をごはんにかけて食べてましたし(「おいしいで?やってみ?」と言われたけど、やったことはない)、お味噌汁にごはんを入れるいわゆる「猫まんま」なんて、割と日常的に行っていたように思います。

こうやって書くとけっこういろいろ、行儀の悪いことやってましたね…。

私が「アラ!」の話をスタッフに話したら、「それはご飯文化ならではなんだろうか?瓶の中のジャムが残り少なくなったらパンを突っ込んでぐるぐるしたりするんだろうか?」という新たな問いが返ってきました。どうなんだろう…外国には外国ならではの、残りものをおいしく食べるルールがあるのかもしれませんね。

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その家庭ごとのマイルールがあって、結婚したらそのルールが違っててびっくりしたり、新たなルールがまたできたり、食にまつわるエピソードは本当に興味深い。…という、まあ何というか別に結論があるでもないお話でした。

とにかく、「行儀が悪いけどおいしい」というジャンルがあり、そのジャンルについて考えるのはなかなか楽しいものですね。


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