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シナモンが好きな人生だったなら。

シナモンが苦手です。

もともと、「好き嫌いが激しい」と周りから言われることが多いのです。
小学生の頃、給食の時間は苦痛でしかありませんでした。何しろ牛乳が飲めない!

当時は「好き嫌いは悪、完食こそ美徳」の時代でしたから、お昼休みに入り、掃除の時間になっても私は教室の後ろで給食と向き合っていました。時に非合法な(?)手を使って牛乳を処分したこともあります…。もはや思い出したくない、黒歴史です。

ほかにも嫌いな食べ物はたくさんあって、プロセスチーズやレーズンも苦手です。でも、「プロセスチーズは嫌いだけど溶けるチーズは大好物」とか、「レーズンは苦手だけど東ハトオールレーズンは食べられる」とか言うと、好き嫌いというよりも「意味の分からない偏食」だと理解されることの方が多い気がします。

大人になれば牛乳を飲みたくなければ飲まなくていいし、プロセスチーズもレーズンも、避けて通れる食材なのでそんなに不便はないのですが、「シナモン」は何だか、「嫌いだと損してる気がする」と強く思う食材なんですよね。

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まず、シナモンが入っている料理ってなんだかカッコいいじゃないですか。
チャイとか、シナモンロールとか。ジャムとかにもひそやかに(私にとってはひそやかじゃないけど)入っていたりするし、なんか入ってると「いい感じ」「おしゃれ」。それが食べられないってなんだか人生損してる気がします。

大好きなパン屋さんでお取り寄せしたくても、パンセットにシナモンロールが入っていたら頼めないし、先日は松江市の「CARRE」さんが「午後からカレーパンの生地を使ってドーナツを作ってるんです」とおっしゃったので、え~おいしそう!絶対食べたい!と思ったら、「最後にシナモンシュガーをまぶして」とおっしゃったので、ひそかにうなだれました。

いいなあ、私もシナモンシュガーがたっぷりふりかかったドーナツ食べたい!
シナモンが好き!と言える人生が良かったなあ。

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それから、シナモンって油断すると不意にやってきますよね。思いがけないところから急に「どうも!シナモンです!」とドアを開けてくる、そんな気がします。

アップルパイやスイートポテトなども大好物なのですが、わーい!と思ってオーダーして、いざ食べようと思ったら香りで「…あ、入ってる…」ということも少なくありません。キャロットケーキやコンポートなど、かわいいお菓子も食べてみたら「…あ、遠くにいる…」と思うことが多いのです。

曲がり角を曲がったら苦手な人に会ってしまった、みたいな不意打ち感
があって、いつも微妙な気持ちになります。

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失敗したくないので、ずいぶん前から「これは怪しい…」と思ったときには「これシナモン入ってますか?」と聞くようにしています。
そう言えば昨日もさつまいもパウンドケーキをオーダーするときに聞いたな…。

何度も聞くからか、私がシナモンが苦手だということを分かってくださっているお店の方もいらっしゃって、「このチャイはシナモン入ってないですよ」とか「これシナモン入ってるけど大丈夫?」とか聞いてくれます。ありがたい限りです…。

原体験を探ると、多分子どもの頃に隣に住んでいた親戚のおばちゃんにもらった「ニッキ飴」がトラウマになっている気がします。甘いと思ったら全然違った、というあの感情、今でも忘れられません。

スタッフに話すと「小さい頃に感じた味だから、今はもう違うんじゃない?思い込みでは」と言われたのですが、うーんそうなのかな。アレルギーとかではなく、「好きじゃない」という理由なので、何とか前向きにトライしてみたい!という気もするのですが…。

でもそういえば、昨年「U-spice」さんに監修をお願いしたスパイスカレーキットには、シナモンスティックがまるまる入っていたのに、他のスパイスと組み合わせたら苦手な香りがなくなり、複雑で豊かな味わいに変わった!とすごくびっくりしたのでした。

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別の強烈なものと掛け合わせることでマイルドになったり打ち消されて別の香りになったり、そんなことがあるんだなあ、と、スパイスの魅力をまた新たに知った気がします。

たぶん、シナモンロールやシナモンシュガードーナツを食べることはこれからもできないと思うのですが、スパイスカレーキットの一件以来、「嫌い!」と一蹴してしまうのではなく、ちょっとはトライしてみよう、くらいまで克服したようにも思えて(これは克服じゃないのかもしれませんが)、新たな食の扉が開いた気がしたのでした。

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もしも、「シナモンが好きな人生」だったなら…。

辛いことがあったとき、仕事で越えなければならない壁があったとき、「これが終わったら〇〇のシナモンロールを食べよう!」と思って頑張ることができる。

秋になったらわくわくしながら、いろんなお店のアップルパイを食べ比べて楽しむこともできる。「お楽しみパンセット」の中にシナモンロールが入っていてもがっかりしないし、CARREさんのドーナツも毎日だって食べられる…。何だか今の自分の人生よりもハッピーなことがたくさんありそうです。

そう、「好きなものが多い人生」は、きっと楽しいことも多いし、幸せも多い気がするんですよね。それってすごく魅力的です!
食べ物の好き嫌いは嗜好の問題なので、自分の努力でどうにかなることではない、と思うのですが、「あっちの人生、楽しそうだな…」とちょっとうらやましくなります。

でも…。食べものに限らず人に比べて「好きなもの」が少ない気がして、それって何だか損をした気になってしまうのですが、それでもまあまあ楽しく生きていられるのは、少ない「好きなもの」を大切に磨き上げようとしているからかもしれません。シナモンは好きにはなれないけれど、他の好きなもの…例えば大好きなお店の果物のタルトとか、明日の朝が楽しみになるクロワッサンとか、そういうのを宝物にして暮らしていく生き方のほうを、知らずのうちに選んでいるのかもしれませんね。

人間の舌は子どもの頃が一番敏感で、年齢を重ねるにつれてどんどん鈍感になっていくそうなので、もしかしておばあちゃんになった頃に「シナモンいける!」という日が来るのかもしれません…。

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今のところそんな兆しはありませんが、子どもの頃から大嫌いだった「カリフラワー」が数年前から大好物に変わった私なので、奇跡が起こるかも。
とりあえず、スパイスカレーから少しずつトライしていこうと思います。


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