見出し画像

名前をデザインする ~私たちのこだわり。

先日、打ち合わせの帰りの車の中で「チキン南蛮はカフェのランチメニューとして有りか無しか」という話になりました。

…よくこういうふざけた話をしているのですが、結論から言うと私の個人的見解としては「無し」で、理由は「チキン南蛮の"蛮”の文字の印象と"ばん”という音がカフェのイメージとかけ離れているから」です。だから、例えば「カリカリチキンのスイートビネガーマリネ」とかなら有りかな。「豚の生姜焼き」が「ポークジンジャー」になる、みたいな。あくまで個人的見解ですが…。

まあこれは一例なのですが、くらしアトリエスタッフは「ものの名前」に変なこだわりがありまして、活動の中でもたびたび悩むことがあります。特にイベントの名前は、語呂や語感で印象が全く変わってしまうので気を遣います。

例えば昨年の1月に開催した

おいしい珈琲、おいしいうつわ

というイベント。何気なくつけた感じの名前ではありますが、これが例えば

「おいしいコーヒー、おいしい器」

ではなんか違和感があって、

「美味しい珈琲、美味しいうつわ」

でもダメなのです。

文字にしたときの重量感(それがイベントの内容とマッチしているか)。硬いか・柔らかいか、呼びやすいか、などなど。特に日本では、ひらがな・カタカナ・漢字・時に英語などの外国語を織り交ぜて使うことができる独特の感性がありますよね。なので、頭に思い浮かべただけではまだ完成せず、文字にして並べてみて、ことばの順番を変えたり、漢字をひらがなにしたり、試行錯誤します。

(思えば、私たちが活動している地域の名前「はたひよどり」も、ひらがなにするととてもかわいいのですが、漢字だと「畑鵯」となり、なんだか卑しさが前面に出てしまって、あまり良くない。日本特有のおもしろさでもあります。)

また、「フライヤーに入れたときの印象」もこだわりの大切なポイント。明朝体で、フライヤーに配置したときのイメージをスタッフがお互いに考え、「うーんいまいちかな」「良さそう」などとジャッジして決めていくのです。フォントはもちろん文字と文字の間隔やサイズ感などにいたるまで。ここはフライヤーだけではなく、イベント全体のデザインイメージを決める重要な局面でもあります。

過去に開催したイベントの名前の一部はこんな感じ。

「融通の利かないかばん展」(2015年)

「はたひよどりの朝ごはん、朝読書、朝さんぽ」(2012年)

「秋のおむすび朝市」(2011年)

「春いろ朝市」(2010年)

「落ち葉とおさんぽ朝市」(2008年)

「森の冬じたく朝市」(2007年)

どれもシンプルな名前ですが、けっこう頭を使って、紙にいろいろ書きながら考えた記憶があります。「デザイン」と言えばパッケージやパンフレットなど、紙やウェブで目に見えるものだけを想像しがちですが、「名前のデザイン」もかなり重要な要素なのです。

そうそう、雲南市のお仕事で製作をさせていただいた冊子「ふるさと、ごはん。」、これはタイトルが「降ってきた」感じでした。雲南市の郷土料理と、この地域で馴染みのある食材を使って作られた「普段のお料理」のレシピ集。あたたかみがあって親しみやすいタイトルを、と考えた時に思いついたものです。1つ目の候補で「あ、いいね」「決まり」ということもたまにあって、それはそれで印象深い。

ちなみにこの「ふるさと、ごはん。」、一緒に製作をした市役所の職員さんに「あれ評判いいよ〜、なんだっけ、"おうちごはん”だっけ」と言われて脱力しました…。

クライアントさんからデザインのお仕事を頂く時も、「なんか雰囲気がいい名前考えてよ」と言われ、考えることもあります。

この「なんかいい雰囲気の名前」ってのが難しく、ソフトタッチだけど、聞いた人も「いいね」と思うような名前を心がけて考えています。

「一畑電車株式会社」さんからお仕事をいただいた「旅するカレンダー」。

島根広告賞でSP部門金賞をいただきました!


雲南市関連では、「ほっこり雲南」「ゆっくり子育て」「これからunnan」など、WEBコンテンツの名前も考えました。


施設の「シマシマしまね」という名前はよく「しましま島根」「シマシマシマネ」「しましまね」などと間違えられますし、「くらしアトリエ」も「くらしのアトリエ」「暮らしアトリエ」などと書かれることが多々あります。あえて指摘はしないけど、その都度地味に凹みます…。なので、こちらが例えば作り手さんの名前を間違えて記載してしまった時などは、ああ悲しい思いをされているに違いない!とめちゃくちゃ落ち込みます。名前って大切。

私たちが求めるのは、当たり前にあることばを使って、「目立つこと」や「面白いこと」よりも「美しさ」や「心地よさ」を大切にした名前です。普通のことばを使うから間違えられやすいし、それは「パリッとした分かりやすさ」を追求するデザインとは離れるのかもしれません。

でも、やっぱり「何となく心地いいね」「行ってみたいな」という気持ちを誘発できるような、そんな名前にこだわっていきたい。そのこだわりが自分たちらしさ、すなわち「くらしをつくる工房=くらしアトリエ」らしさにつながると思っています。

来年度以降も、私たちのつけた「名前」に少し注目していただけたら嬉しいです。

サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。