見出し画像

ありがちな誤解を解きたい。

NPO法人として活動していると、「なんかNPO法人のこと、ちゃんと伝わってないなあ…」と思うことが多いのですが、今日の「時々、コラム。」はそんなテーマで書いてみようと思います。

「NPO法人として活動していて言われがちなこと」として挙げられるのは、

1.『ボランティアなんでしょ?』
2.『安く仕事(デザイン)してくれるって聞いたんだけど』
3.『行政からお金がもらえるんでしょ?』
4.『税金払ってないんですよね』

とかでしょうか。

1と2については、立ち上げ当初、本当によく言われました。
デザインのお仕事をしていると、「NPOだから安くして」と真顔で言われることもありましたし、友達にくらしアトリエについて話をしても、「それで、仕事は何してるの?」と聞かれることも。
「??え、これが仕事だけど」と答えると、「だってボランティアでしょ?」と言われてしまい、「違うんだよ…」とがっくりする、なんてことも、たまにありました。

確かに、NPO法人の中には事業収入がなく、寄付金や会費が主な収入源で、やりがいのために無償のボランティアで活動されているところも多くありますが、それがすべてではありません。
(そのことを否定するつもりもありません。たとえ無給でも仕事と言ってもいいじゃないか、と個人的には思います。)

NPO法人の中には「事業収入型」と言われ、ほぼ「会社と同じ」形態で活動されているところもあります。くらしアトリエも、目標はそこに置いています。あくまでも目標、ですが…。

ですが、例えばデザインのお仕事一つとってみても、一般的なデザイン会社とはアプローチの仕方が違うのかな、という気はします。

レシピブックのデザインや、ラベルのデザイン

私たちくらしアトリエのコンセプトは「地域と暮らしをつなげる」ことにあるので、お仕事を引き受ける基準はそこになります。

例えばお仕事を依頼された方の志が素晴らしく、地域を元気にしてくれるに違いない、と思った時、その方が支払える金額が当法人の定めているデザイン料金の規定より安くなってしまったとしても、「応援したい」という気持ちを重要視することがあります。
それが回りまわって「安くやってくれるんでしょ」という結論になっているのかもしれませんが、決して最初からそういうつもりではないのです……。

そして、最近立て続けに言われてちょっと微妙な気持ちになったのが、3と4。
「上からお金をもらって活動してるんですよね」と言われ、「上」の意味が分からなくてぽかーんとしたり。(その人にとっての「上」というのは、役所もしくは、政府という意味だったようです。)
「行政からお金が出るんでしょ?」と当たり前のことのように言われたり。

もしかして、読んでくださっている方の中にも「え、違うの?」と思っていらっしゃる方がおられるのかもしれませんが、違うんです。

もちろん、NPO法人の中には定期的に補助金や指定管理費などをもらっているところもたくさんあります。でもそれは決して「何もしなくてももらえるお金」ではありません。

例えば、補助金や助成金は、行政や団体から「公募」があり、その内容が自分たちの活動に合致していて、実施したいプロジェクトがあるのに資金不足で実現が難しい、という法人が「申請」します。そこから、場合によってはプレゼンテーションなどの「審査」を行い、適格と認められた場合にのみ、「採択」されます。
この場合、お金は「法人」に、というよりも、「プロジェクト」に対して支払われる、というイメージでしょうか。(たいていは1つの事業に対しての助成なので、採択されたからといって法人のすべてのことにお金が使えるわけではないのです。)

「公募」「申請」「審査」「採択」を経て初めて、事業に対してお金を受け取る資格が生まれます。
「審査」に関するプレゼンテーションは公開されることもあります。5分なら5分、10分なら10分という限られた時間の中で、自分たちがそのお金でどんな成果を上げたいのかというビジョンを、審査員に訴えます。

採択されたとしても、すべてのお金を助成してくれるわけではありません。例えば「3分の1助成」だとしたら、残りの3分の2は自分たちの自己資金でまかなわなければなりませんから、ある程度自分たちの足で立てる金銭的体力も必要とされるわけです。もちろん、不当に利用することはできませんし、成果を求められ、報告も義務付けられます。

くらしアトリエは今年度、島根県の「しまね社会貢献基金 寄附者設定テーマ事業」という制度に申請し、プレゼンテーションを経て採択されました。助成金に申請したのは久しぶりのことです。
「私設図書館『山の図書室』魅力アップ事業」として、蔵書を増やしたり、閲覧しやすい棚を購入したりするための費用を助成していただいています。
ここだけ切り取られると、「行政からお金をもらってる団体」みたいに言われるのですが、「何もしなくてもお金が降りてくる」というのとは、明確に違うわけです。

「しまね社会貢献基金」は、NPO法人やその他社会貢献活動を行う団体の活動を支援し、島根県における社会貢献活動のより一層の推進と活性化を図る目的で、県民や企業の皆様からの寄附金と県の拠出金を原資に、島根県が創設し管理・運営を行っている基金です。

令和5年度しまね社会貢献基金寄附者設定テーマ事業募集要項より

なぜNPO法人がこうした助成金や寄附などに頼りがちなのか、なぜこういう制度があるのか、というと、「NPO法人の目的」にそのカギがあります

たとえば「生活困窮者を助ける」「障がい者の就労支援をする」「不登校の子どもたちをサポートする」といった目的を持っている団体にとって、利益を受ける側は「弱い存在」であることが多く、その人たちから直接対価(お金)をもらうことが難しい場合が多い。その場合、株式会社などでは運営が困難になります。

それに対し、NPO法人として寄付やボランティアスタッフを募ったり、助成制度を利用したりして、「直接利益を受ける人とは別のところからお金をもらう」ほうが活動しやすい、NPO法人はそういう活動に向いている、ということがあるのではないかと思います。
そこには、本来行政が担うべき役割の一部、手の届きにくいところをNPO法人をはじめとする団体が担う、という役割分担の意味で、補助金や助成金が役立っているとも言えます。

私たちが申請して採択された社会貢献基金の場合も、「私設図書館」という「利益が生まれにくいが、社会的に意義がある活動」を活性化させよう、という仕組みによって、サポートを受けているのです。

こうした社会の仕組みの「お金」の部分だけがひとり歩きをして、「NPO法人は”みんな”公金をもらっている」という先走った情報が、まるで真実であるかのように広まっているのかなあ、と思いました。

また、NPO法人について前述した1や2に関連し、「儲けちゃダメなんでしょ」というのも本当によく言われることですが、これは、「NPO法人」が「特定”非営利”活動法人」の略称であり、「非営利」という言葉がついていることに理由があると思います。

ここでいう「非営利」とは、「儲けない」ということではなく、「儲けてもいいけど、その利益を個人に分配しない」という意味なのです。生まれた利益は会社のように株主に配当するわけではなく、自分たちの事業に使わなければならない、という決まりがあります。さらに活動をステップアップするために使うなど、公共の利益に寄与することに使うことが定められているのです。

ここがうまく伝わっていないのが、すべての誤解のもと、な気もします。

くらしアトリエは先述したとおり、「地域と暮らしをつなげる」ことを目的に、山陰の魅力を自分たちの目線で発信することを事業の核としています。

物販をしたり、デザインの業務をいただいたりして、その対価としてお金をもらう「事業収入」がおもな収入源です。その仕組みは株式会社とあまり変わりません。
とはいえ、慢性的な資金不足は立ち上げ当初からずっと続いていて、寄附も随時受け付けています。

「NPO法人」という「何をやっているのかよく分からない人たち」みたいな印象が、「なんか胡散臭い」「怪しい」というイメージに結びついているのかもしれませんが、世の中の大半のNPO法人は、ミッションの達成のために真摯に活動している、ということを理解していただきたいですし、もっと身近に感じていただけるように、理解していただけるように頑張らないとな、とも思います。

法人化した当初、法人格は「社会的信用」の看板のようなものでした。私たちはそれが欲しくて法人化したわけですが、あれから15年以上が経ち、「法人格の有無」の持つ意味は前ほど重要ではなくなっている気もします。

とはいえ、やはりNPO法人に対して偏ったイメージを持たれるのはちょっとモヤモヤするな…ということが続いたので、ちょっと専門的なことも含め、思いを綴ってみました。




サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。