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どちらも大切。クリエイティブと、地域とのおつきあいと。

今日の「時々、コラム」は、くらしアトリエ、同時にいろいろやってます、というお話です。

イベント「しまねの秋の、お楽しみ」が終わり、くらしアトリエは本格的に移転に向けた準備に入りました。
臨時総会を経て移転手続き(定款変更、届出、登記など)のため、現在は絶賛準備中。書類を作ったり、日程調整したりといった作業をおこなっています。

同時に、イベント前からずっと頭を悩ませていたのが「お引越し」です。

特大サイズの事務所テーブルや冷蔵庫など、大きな什器類は自分たちで運べないので、先月のうちに引っ越し業者にお願いをして運んでもらいました。

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業者の方は見積もりに来られた際に「いやあ、こりゃすごいところだわ。部下にいい土産話ができた。」と驚かれ(あまりの田舎度にびっくりしたそうです)、新しい事務所に運んでもらった際には「記憶に残る引っ越しだった。」という名言(?)を残して去っていかれました。
どういう意味?

それはさておき、そのほかのこまごまとした備品や書類など、13年の間に増えた荷物は自分たちで何度も通って車に乗せて運ばなければなりません。これも、あともう少し…というところまで進んでいます。不要なものは処分したりしますが、これも日を決めてやってしまわなければ!

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そして、自分たちが移転の山場ととらえているのが「13年間お世話になった地域の皆さんへのごあいさつ」です。

はたひよどりの自治会の皆さんには、なんの縁もゆかりもない私たちを暖かく迎え入れてくださり、時に異文化交流のように、時に人生の先輩として、いろいろご指導をいただきました。
本来ならば皆さんお一人お一人を訪ねてお礼とお別れを言うべきところですが、ちょうど月に1度の常会(自治会の集まり)が近々行われるということだったので、菓子折りを持って代表者2名がうかがうことになりました。

この1週間は「どんな菓子折りを持って行くか」ということにかなり時間を割き、これでけっこう疲れました…。柔らかいものがいいのか…いや、あれでけっこう皆さんおかきとかバリバリ食べるよねえ…本当はお酒がいいんだろうけど、今年も忘年会はないらしいし…などと議論を重ねましたが、一番重要視したのは「かさばること」。中身はどうであれ、大きなものこそ喜ばれる土地柄なのです。これも田舎あるある。

(そもそも、なぜこんなに移転に伴う諸作業をバタバタと片付けているかというと、雪が降ったら何もできないからです。荷物の運び出しも、あいさつも、雪が積もる前にやっておかねば!と思うと、自然とタイトなスケジュールになってしまいます。)

移転にかかりっきりになれればそれでもそんなに大変じゃないかもしれないのですが、「イベントの後片付け(会計処理を含む)」「うつわのネット販売」に加え、「ゆるっとショップコーナー」も始めてしまったので、頭の中は「総会の案内出さないと」「饅頭にするかおかきにするか」「図書コーナーの本はどこにしまうのか」「うつわの在庫チェック!」「灯油買っとかないと~」「発送作業もあるぞ」といった感じで、この時点で主要スタッフ2名ではもういっぱいいっぱい。

そして、ここに来て年末までに仕上げないといけないデザインのお仕事をいくつか新規で頂き、資料集めや試作に奔走しています。ありがとうございます!

さらに先日は、イベントをおこなった「オープンスペース.美南」さん隣の集会所へ。3日間のイベント会期中はお天気が悪く、臨時駐車場としてお借りしていた集会所の広場にタイヤの轍(わだち)がついてしまっていたので、それを整地するためにトンボがけをすることになったのです。

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寒い中ジャージと長靴でトンボがけ…いい運動になりました。

こうして列挙していても、自分たちの活動に基づく作業がいろんな方向にとっ散らかっているなあ、というのを感じます。

会社なら総務や経理の専任スタッフがいたりするのだけど、そこは小さなNPO法人なので、一人何役もこなさないといけません。

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そもそも、自治会の方への手土産を「饅頭にするかおかきにするか」という問題と「あのパッケージデザインは白でいくか青でいくか」という問題が同じ重要度を持っていることがおもしろいな、と我ながら思います。

地域で活動するNPO法人であり、デザインも大切な生業のひとつである私たちにとって、建前ではなく本当に、どちらも軽んじることはできない。そうやって「クリエイティブ」と「どっぷり地域暮らし」を両輪にして続けてきた活動なんだなあ、と今さらながらに実感しています。

はたひよどりにしても、新しい拠点となる出雲市斐川町にしても、スムーズに活動を続けていくためには、ちょっとウェットなお付き合いもしていかなければなりません。

どちらも「相互監視」に基づき、周りを気にして足並みをそろえて暮らすことが求められがちな土地柄という印象です。そこには言語化できない「あいまいさ」があって、本心が見えにくかったり、一見すると無駄に思えたりするものもたくさんある。

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でも、そういった「地域でのあり方」がデザインワークにいい影響をもたらしたり、役立ったりすることもあるし、逆にデザイン業をしているからこそ地域で重宝がられることもたくさんあると思うのです。

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限界集落で活動をしてきたからこそ見えてくるものが、間接的に影響して、自分たちにしかできないデザインに表れているんじゃないかな。

どちらも当事者の目線で見ることができるから、カッコよさだけに偏ったデザインにはなり得ないし、クリエイティブな中にも「島根らしさ」を含ませるような思考になる。

また、地域の雑多なことも「誰かやっといて」という考えにはならない。無駄に見えることにも何か意味があるんじゃないか、と、好奇心を持って踏み込むこともできるような気がします。

どちらに振り切るのではなく、両方をちゃんと続けてきたからこその、今のくらしアトリエなんじゃないかと思っています。

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新たな土地でもきっといろんな「あいまいな」ことがあって、時には「それは意味があるのか」と理解に苦しむことがあるかもしれません。
でも、そんなことも俯瞰で見て楽しみながら(たいていのことは笑い話に変えられるのが自分たちの強みです)、「くらしアトリエ」らしい仕事のあり方をこれからも続けていきたいものです。




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