効率的ではないけれど、ちょうどいい「わたしたちの働き方」。
くらしアトリエの中心スタッフは現在、「週休3日、社内勤務とリモートワークの融合」という働き方をしています。(他のスタッフは他の仕事をしながら、自分の得意な分野で可能な時間を使って手伝ってくれています。)
立ち上げ当初から土日は基本的にお休み(イベントや取材の際には出勤)でしたが、昨年から水曜日もオフに変わりました。
一般的な企業のように勤務時間が明確に決まっているわけではありません。
夏場の今頃はだいたい9時に事務所に向かい、お昼くらいまで仕事をして帰宅。(これは事務所にエアコンがなく作業効率が下がるからです。)
午後からは自宅で自分のペースで仕事をしています。
日々のnoteは朝の5時半くらいに更新し、SNSは6時半ごろ更新します。
夜も割と遅めまで起きて、Slackでスタッフ間のコミュニケーションをとっていますし、休日でも依頼があれば結局仕事をするので、決まった勤務時間があるようで、ない。都度都度フレキシブルに、というのが勤務形態の特徴と言えます。
また、春と秋は比較的長い間事務所で作業をすることができますが、事務所の冬場は逆に寒いのでほぼ仕事ができず(キーボードを打つ手がかじかんで仕事にならない)。
さらに今の事務所は、一度雪が積もってしまえば「通勤」自体ができなくなるので、ほぼ自宅で仕事、という具合。
第一次産業ではないのにかなり天候に左右される仕事の仕方で、自分でも時々笑ってしまいます。
思いっきり非効率な場所で今まで活動を続けてこられたのは、自分たちの目指す働き方に「効率性」という指標は必要なく、むしろ自然に左右されながら臨機応変に自分たちを変化させていくことが楽しかったから、ということに尽きると思います。
そのこと1つをとっても、自分たちがいかに一般的なビジネスの概念から外れているか、ということを実感します。
そして、そんな自分たちの活動が楽しいのです。
くらしアトリエでは「シマシマしまね」の運営のほかに、「地域デザイン事業」という事業軸があり、山陰地方を中心に自分たちのミッションに共感をいただいた企業や個人の方から依頼をいただき、パッケージやWEBのデザイン、写真撮影などのお仕事もさせていただいています。
くらしアトリエはいわゆる「営業」をしたことがありませんし、デザインコンペなどもあまり参加していません。
にもかかわらず毎年一定数の仕事を担当させていただけることは本当にありがたいことだと思います。
はたから見えれば好きな仕事だけを選んで、ゆったり悠々自適にやってる、みたいに思われているかもしれません。
もちろん他の企業とは比べ物にならないほどゆったりとした働き方だと思いますが、その分、労働の対価である金銭的な収入は一般的な企業とは比べ物にならないのも現状です(当たり前ですが)。
でも、その代わりにたくさんの「プライスレスな収入」をもらっている、と自分たちでは考えています。
「プライスレス」というのは言語化しにくくて、具体例を出そうとしても何だか軽くなってしまうのですが、それは確かに存在していて、自分たちの活動にとっては最も重要なもの、と言ってもいいかもしれません。
それは「やりがい」だったり「作り手のあたたかな気持ち」だったり、「サイトやSNSを見てくださっている方からの思いがけない励ましの言葉」だったり、時には「次の仕事の依頼」だったりするのですが、とにかくお金というベクトルでは計れないタイプの収入をその都度もらっているので、今のところは満足のゆく働き方ができています。
研修などに参加した際に自分たちの仕事のやり方を紹介すると、「もっとビジネス志向で仕事をしたらいいんじゃない」「もったいない」と言われるのですが、人から言われて修正することができているなら16年もこんなやり方を続けていないわけで、自分たちの仕事の仕方というのは、16年という歴史の中で絶妙に組み上げられたバランスのうえに成り立っているのだと言えます。
それはすなわち、
相手への共感や「応援したい!」という気持ちが仕事のモチベーションになり、その仕事の対価として「①金銭的な収入」+「②プライスレスな収入」
が支払われ、主に②がまた次の仕事へのモチベーションになる。
という流れで、①だけでもダメだし、②だけでもダメなんです。
NPO=ボランティアと思われがちですが、NPO法人でも当然、活動するには金銭が必要です。だけど、お金だけでも活動は成り立たず、「プライスレスな気持ち」が絶対条件。このバランスがうまくいっている時には、日々がとても充実しているのを実感します。
もちろん、いい時ばかりではありません。
モチベーション、と書きましたが、自分たちの仕事は「成果が見えにくい」ものです。
商品が何個売れたとか、野菜が何キロ収穫できたとか、今月いくら利益が上がったとか、そういう目に見えて実感できる数字的な成果が乏しい。
何しろくらしアトリエのNPO法人としてのコンセプトが「住んでいる地域を楽しむ」ということなので、たとえ「1000人が新たに島根暮らしを楽しめるようになった」と分かったとしても、それが自分たちのおかげだとは限らないわけで、数えようがない。
だから成果が見えなくなって不安になり、モチベーションが保てなくなることもたまにあります。
そこで「やっぱり頑張ろう!」と気持ちを立て直す原動力は、ひとつには先述した「プライスレスな収入」であり、もうひとつはスタッフがそれぞれのメンタルヘルスを安定させるための「自分自身の暮らしの充実」なのです。
梅干しを作ったりパンを焼いたり、おいしいトマトを買いに車で20分かけて出かけたり、そういう何気ない暮らしのひとつひとつが、仕事を頑張る原動力になっている。
暮らしと仕事は、つながっている。
まさに「ワークアズライフ」。
楽しく暮らすという大きな枠の中に「くらしアトリエ」という仕事が内包されている、そんなイメージです。
もっとガツガツ仕事をもらいに行く姿勢があれば、きっともっと多忙で、それこそ週休3日では成立しないのかもしれませんが、「自分の暮らしも充実させながら、納得のいく仕事をする」という今のスタイルが気に入っています。
自分たちは、中心的なスタッフが「夫が転勤族」という共通の境遇の女性で、正社員として就職をすることが難しかったために、時間の使い方や家族とのあり方について、同じ目線で向き合うことができました。
もしフルタイムで勤務しながら「くらしアトリエ」を続けることになっていたとしたら…今の働き方はもちろん実現していないと思うし、活動自体も続いていなかったかもしれない。
だから、いまの働き方は、経験を積み重ねて編み出された自分たちにとっての最適解、なのです。
このように自由に仕事ができるのは、ひとえに家族と他のスタッフの理解のおかげで、感謝しかありません。
「普通」とは少しかけ離れているけれど、こういう働き方があってもいいんじゃない?と言えるような時代が、ようやくやって来たように思います。
自宅で仕事をしていることだって、今や政府が推奨する勤務形態になりました。
16年前の自分に教えてあげたい…。
自分の暮らしを豊かにすることにも、クライアントの満足を超えるような仕事をすることも、島根という地域の魅力を伝えていくことも、どれも大切で、私たちにとっては必要不可欠なものです。
うまくバランスをとりながら、これからも思いっきり楽しみたいと思います。
*
お知らせ …「時々、コラム」は来週から8月後半までお休みとなります。ご了承ください。
サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。