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温度差があってもいい。結局、地域づくりは「自分ごと」が出発点だと思う。

先週のこと。
久しぶりに1日予定がなかったのですが、県外に暮らす娘から「食料を送ってほしいな」という連絡が来たので、どうせなら島根のおいしいものをいろいろ用意しよう!と思い立ちました。

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まず、出雲市の「くるみ市」さんで新鮮な旬の野菜と、おいしいと評判を聞いた柑橘を購入。隣接する「パンと焼き菓子」さんで、オーナーさんに「県外に送るんですけど、このパンって日持ちしますか?」と相談しながら、これまたおいしそうなベーグルやパンを購入。

帰り道に斐川町の「鹿糠」さんの工房に伺い、塩麴クッキーや酵母スコーンをいくつか。ついでに自分用にもいくつか。

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そして平田町に向かい、地元素材が充実しているスーパー「グッディー(地元の人は愛着を込めて「ぐっでー」と呼ぶ)」に立ち寄り、簡単に調理できそうなわかめのスープや、生姜焼きの素(出雲産の生姜を使って作られたペースト)など、地元素材を使って作られた商品を購入し、手作りしたお惣菜などと一緒に、結局段ボールで2箱分の食料を無事に送ることができました。

お店はいくつも回ったけど、人見知りを発動したのでそんなにたくさん話ができたわけではなく、会話をした人も片手に余るほど。だけど、自分的にものすごーく充実し、満足な気持ちで1日を過ごすことができました。

自分が「いいな」と思っているお店に行って、大切な人のために、大切に育てられたり作られたりした商品を買う。出来上がった段ボールの中身は、島根のおいしいものと、母の愛(笑)でぎゅうぎゅうに詰まっている。ありがたいなあ、いいところに暮らしてるなあ、としみじみ感じたのです。

お店の数は多くないけれど、自分の「お気に入り」さえちゃんとあれば、幸せに暮らすことができる、ということをあらためて実感しました。

こういう、「いいところに暮らしてるなあ。島根に住んでて良かったなあ」という気持ちは、すごく個人的なものです。
私が思う「島根っていいなあ」と、別の人が思う「島根っていいな」は、たぶん全然違う。
つくづく、地域へのかかわり方って「個人の問題」なんだと思います。

つい最近まで、そういう「島根っていいな」という個人的な郷土愛を、みんな一緒に、同じ方向を向いて「一元化」することが良しとされてきたように思います。

さあみんな一緒に「島根っていいな」って言いましょう!カメラに向かって笑顔で叫びましょう!一緒にポーズをとって集合写真を撮りましょう!みたいなのが、一般的な「地域活性化の手法」として認知されていたのではないでしょうか。

くらしアトリエはそこにちょっとした違和感を感じていました。

もちろん、気持ちを一つにして何か大きなものに「見える化」することはとても大切かつ必要なことです。見えるようにすることで説得力が増すし、今まで気づかなかった人にも訴えかけることができるのだから。

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自分たちも、「島根っていいな」という気持ちをどうにか可視化したいと考え、「シマシマしまね」という施設を作りました。
「島根っていいな」を確かめ合い、共有するには、場所が必要だと考えたからです。

実際、「シマシマしまね」に来られる方と直接お会いすることで、今まで見えなかった「ひそやかな郷土への思い」「胸の奥に秘めた"ここで何かしたい"という熱」をじかに感じることができて、「今まで見えにくかったけど、やっぱりそう思っている人は確かにいるんだ」と感じることができました。
おかげで、活動はとてもしやすくなったし、心強い応援もたくさんいただいています。この場所を通じて法人の活動を知ってくださった方も多く、始めて良かったなあ…としみじみ感じています。

でも、だからこそ、平板化した「島根っていいところだよね」というメッセージをただ漫然と発信して「ひとつになった気になる」のではなく、もっとひとりひとりの「ひそやかな思い」に寄り添う活動が求められるんじゃないかと考えるようになりました。

コロナ禍を経て、地域活動、地域づくりはますます多様化し、「都市部と地方」とか「不便と便利」とかの境界がオンライン化によってあいまいになりつつあります。
どこで暮らすか、という問題もそれに伴って多様化しているように感じます。

そんな時代だからこそ、ひとりひとりにていねいにかかわって「地域と暮らしを近づけ、つなげる」ことが必要であり、その集合知が結果的に「地域を元気に、豊かに」することに行き着けば良いのでは、というのが、私たちの地域活動へのスタンスです。


「地域への誇り」や「郷土愛」は本来、行政や知らない誰かが考えてくれることではなく、ひとりひとりの「個」が思い描くことであり、言ってみれば「自分ごと」が出発点です。
そんな「個」の思いを、「そうそう、ここっていいところだよね」とnoteやSNSで発信・共有したり、「シマシマしまね」のネットショップオンラインサークル、シマシマキャラバンや「シマシマ編集室」など、多角的な活動に参加していただいたりすることで、少しずつ地道に積み重ねていく。それがくらしアトリエのNPOとしての役割ではないか。そんな地域づくりの手法があってもいいんじゃないかな。

「個」をしっかり見つめ、「個」の思いをひたすらていねいに、丹念に積み重ねていくことが、バラエティ豊かな「島根っていいな」を増やすことにつながり、それが最終的に地域活性化につながると、私たちは信じているのです。…というか、自分たちにはこういうやり方しかできないのかもしれません。

だから、みんなが同じ方向を向かなくてもいい。温度差があってもいい。
だって、地域への思いは結局は「自分ごと」が出発点なのだから。

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たまに、Instagramやメールなどで「いつも応援しています…!」「遠くて施設には行けませんが、元気をもらっています」というメッセージをいただいたりすることがあるのですが、その方がどれだけ勇気を振り絞ってコメントを送ってくれたのかと思うと、めちゃくちゃいとおしくなります。

私たちのこと、島根のこと、地域と暮らしのことを「自分のこと」として抱えてくださり、その思いを「伝える」という行為につなげてくださったことが、ただただ嬉しい。
そういう方たちのためにも頑張って活動したいなあ、という思いが強くなります。

ひとりひとりに、やわらかーく、ていねいに発信をしていくことに、今年はさらに力を入れていきたいなあ…。
これからの活動のあり方をスタッフ間で話し合いながら、そんなことを考えています。


サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。