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ありがとう、さようなら。はたひよどりでの日々を想う。

今日は2021年最後の「時々、コラム」です。

思い返せば…と言ってもすぐに忘れてしまうので、過去の記事を読み返していたのですが、今年もいろいろありました。

5月の「出張シマシマしまね」、そして11月の「しまねの秋の、お楽しみ。」という2つの催し。

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「出張シマシマしまね」は予約制でのんびり開催。

「しまねの秋の、お楽しみ。」は本当に久しぶりの予約なしイベントで、うつわの展示あり、選書イベントあり、と、いささか「やりたいこと」を詰め込み過ぎたかな、という感もありましたが、おかげさまで無事に終了することができました。

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また、今年新たに販売を開始したオリジナルプロダクト「しまねマグ」。

現在も少しずつではありますが、お買い求めいただいております。
手前味噌ですが、このマグカップ本当に本当に飲みやすくて形がいいんですよ!込めた「シビックプライドを持って暮らそう」という思いはもちろんですが、カップそのもののテクスチャーやデザインにも注目していただけたらと思っています。


そして何よりも、今年は私たちくらしアトリエにとって大きな転機の年となりました。6月の記事でお知らせしたとおり、雲南市大東町から出雲市斐川町へと移転することになりました。

この記事にあるとおり、昨年の7月に施設の裏手が土砂崩れを起こしたことがきっかけとなり、新たな拠点探しが始まったのですが、記事から半年が経ち、無事に移転登記も完了。現在はさまざまな手続きを行っているところです。

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移転については葛藤もありました。

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当時はほぼオンラインで活動をしていたので、事務所がどこであろうとそんなに変わりはないという側面もありましたし、13年間にわたって過ごしてきた「はたひよどり」での日々は、そのまま「くらしアトリエの歴史」と言ってもよく、なかなか重い腰を上げられなかった、というのが現実でした。

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何しろはたひよどり、本当にいい場所なんですよ~。

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春夏秋冬、13年間ずっと通っていたけれど、飽きることがまったくありませんでしたし、

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田んぼの風景(夏には「ねこばす」が通りましたよね)も私たちを癒やし、元気にしてくれました。

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地元の方々が管理されている展望公園も、四季折々いろんな楽しみ方ができて、イベントを開催するだけじゃなく、

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「お弁当食べに行こうかな」「コーヒー飲みたいね」など、景色をごちそうにしながら過ごした時間は本当に宝物で、ほかの場所には代えがたいものがありました。

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春の萌黄色、夏の緑と田んぼをわたる風、秋の稲穂と山々の紅葉、冬の銀世界。

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普段まちなかにいるとなかなか味わえない「里山の風景」「自然の営み」がダイレクトに迫ってくる。そんな場所です。

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もちろん、冬場はひたすら寒くキーボードを打つ手もかじかむほどでしたし(室内気温2℃を観測したことも)、

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それ以前に通うことが困難な日もたくさんありました。虫も多いし、今となっては笑い話ですが、家の中にヘビがいたり、鳥が迷い込んで大騒動だったことも何度かあります。

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毎年の草刈りも大変だったなあ…。

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悪戦苦闘しつつ、田舎暮らしを実践するための極意も着々と身について、いいことも悪いことも、平らかな気持ちで受け止めることができるようになっていました。何よりこういう限界集落で活動することが、地域づくりのひとつのモデルになったらいいな、という気概もあったのでした。

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それでも移転を決意したのは、ひとつには今後の活動のあり方をとことん考えたときに、この場所にずっといても限界があるのではないか、と考えたこと。逆に言えば、新たな地に新たな可能性があるんじゃないか、と感じ始めたことです。

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例えば建物は絶えずメンテナンスをしなければならず(経済的負担)、また山の上の、さらに坂の上にある施設に自分たちはいつまで通えるのか?(身体的負担)と考えると、自然と「これからどうしていこう」という根源的な問いに至って、スタッフ間で何度となく話し合いました。

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はたひよどりでずっと活動をしていくという道も、もちろんある。広いし、周りの自然も素敵だし、近くには公園もあってイベントもしやすい。

…でも、果たしてこれからの自分たちが、屋外イベントを頻繁に開催するだろうか?わーっと人を呼んでわーっとモノを売るような催しは自分たちの役割ではない、ということを、すでに私たちは悟っていたのです。

そもそもこの時代に(裏手が土砂崩れを起こした当時、島根でも多数の感染者が出ていました)わざわざ辺鄙な山の上に人を集めることが、やるべきことなんだろうか。

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また、立ち上げから15年近くが経って「地域づくり」の概念もどんどん変化していく中で、「限界集落で活動する地域づくりのモデル」は私たちではなくてもいいのでは?という気持ちも生まれてきました。

田舎で活動してます、というのがオリジナリティだった時代はもう過去のもの。もっと違う部分で「自分たちらしさ」を磨き上げたい。そんな風に考えるようになっていたのです。

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ぐるぐると悩んでいた時に移転を決意させたのは、新たな拠点となる「オープンスペース.美南」さんの存在でした。

もし移転先の目星がついていなかったら、そのままはたひよどりでの活動を続けていたかもしれません。(実際、いろいろな賃貸物件を調べては「なんか違うなあ」と話していたのでした。)

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「シマシマしまね」のお客さまからよいご縁をいただいて「オープンスペース.美南」さんの離れをお借りする、という案が浮上してからは、「果たして本当に実現可能なのか」というのを両者で模索し、歩み寄っていく作業でした。

実際に荷物を入れてから分かることも多々あり、現在もいろいろ考えながらではありますが、ひとまず「事務所」としての機能がしっかりと果たせる場所を得て、ホッとしています。

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美南の事務所をご覧になった方からは、「素敵ですね」「くらしアトリエさんの雰囲気に合ってますね」などとお声がけ頂いています。

私たちも、悩み続けたことなどはほとんど忘れ、今となっては何か「流れのままにここに行き着いた」かのような自然ななりゆきに思えています。まだ何も成し得ていないのにおかしいのですが…。

そして何より嬉しいことは、イベントや蚤の市などでお越しくださった方が「はたひよどり、本当に好きだったんですよ」「あの場所、本当に心地よかったですよね」とおっしゃってくださったこと。

あの場所での13年間があったからこそ、今の自分たちがある。

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空間の作り方、発信の仕方、地域でのふるまい方、すべてあの場所が教えてくれたものでした。

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厳しい自然や、人びととの交流、あたたかさ。全部忘れないでいよう、と思います。

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あらためて、はたひよどりでの活動にご尽力いただいた関係者の皆さま、ワークショップやイベントにご参加くださった方々、地域の皆さんやサポートしてくださった行政のスタッフさんたち、皆さんおひとりおひとりに感謝の気持ちでいっぱいです!

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思えばはたひよどりを事務所に選んだ時、とある偉い方から「なぜこの場所にしたのですか」と公開プレゼンの場で質問され「ひと言で言うと縁ですね」とドヤ顔で答えたことがあるのですが(笑)、今回の斐川への移転も「縁ですね」と言い切れるように、これからの自分たちの活動を進めていきたいと思っています。

何ができるのか、何がやりたいのか。

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新たな場所での、新たな化学反応を楽しみにしながら、2022年も自分たちらしく歩んでいけるように。

これからの「くらしアトリエ」にもどうぞ、ご期待ください。

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◎今年の「時々、コラム」はこれで最終となります。2022年は1月14日(金)より再開いたします。1年間ご愛読いただき、ありがとうございました!

◎通常の更新は12月27日(月)まで。2022年は1月11日(火)から更新します。どうぞよろしくお願いいたします。

サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。