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自分も地域のひとしずく。

いまさらですが、くらしアトリエはNPO法人。
2007年に法人化したので今年の11月で15年になり、「ひとつの節目だね」と話しているところです。

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撮影のお仕事をしたり、いろんなプロダクトをデザインしたり、うつわのイベントをしたり、はたまたサンドイッチのおいしいお店を紹介したり、いろんなことを発信していますが、「くらしアトリエとは何ぞや」と疑問に思った方には、こちらの記事を読んでいただけたらと思います。

この記事の中で、「活動を通して私たちが目指すこと」について、下記のように説明しています。

◆年齢やいろいろな立場などに関係なく、島根の、山陰の豊かさや素晴らしさを伝え、共有し合えるよう多角的に提案します。また、発信するだけではなく、多くの方との情報交換・共有を行い、ストックした情報を還元することで、地域のコンシェルジュとしても機能していけたらと考えています。

◆住んでいる土地を楽しみ、誇りに思うことの重要性や楽しさを、山陰地方以外の方にも広く発信していきます。それぞれがそれぞれの土地を楽しむことで、各地にシビックプライド(=地域を誇りに思う心)の輪が広がることを目指します。

◆素敵なものは素敵だ、と素直に、課題は課題として真剣に。自虐ではなく、ありのままの土地の姿を感じ、伝えることが自分たちの役割だと考え、前向きな活動を続けていきます。

この記事はプロフィール記事として2020年3月に書いたもの。世の中が少しずつ不安に包まれている時期でした。2022年のいま読んでも自分たちの考えに変わりはありませんが、このような社会情勢の中で、自分たちの活動のコンセプトを再確認しておいた方が良いのではないか、と考えるようになりました。

というのも、ここ数か月しみじみと考えるのです。「地域づくりって、結局は個の気持ちによるところが大きいよなあ」と。

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住んでいる土地を楽しむことも、別の地域に興味を持ってかかわるのも、新たな場所へ魅力を感じて移住するのも、結局は「個」の問題であり、それを「地域づくり」という大きな言葉で定義付けするのって、無理があるような気がしてきているのです。

同じようなことを去年にも感じていて、コラムにも綴っていました。

2020年春から現在まで、世界が稀有な時間を過ごしたことで、「大きい(多い)ことはいいことだ」の概念は意味がなくなってきたと思います。

個人が考え、右にならえではなく自ら選択していくことが基本になってくるでしょう(そう願いたい)。

地域の魅力のあり方も同じで、たくさん人が集まればよい、という時代ではなくなってきました。地域づくりも関係人口も、あくまでも個人の意識がベースなんだと、私たちは考えているのです。

私たちがコンセプトに掲げていることばの一つに「シビックプライド」があります。

シビックプライドとは、まちに対する市民の誇りを指す言葉です。「郷土愛」のように、単に自分の出身地・ふるさとへの愛着を示す言葉とは少し違い、対象となるのは出身地でなくてもよく、「この町をより良い場所にするために、自分自身が関わっている」という、能動的な意味合いが強いのが特徴です。

いわば地域を「自分ごととして考える」気持ちのこと、と私たちは捉えています。

通常、「シビックプライドを高める」のは行政や公的機関の役割で、そのために各地でいろいろなイベントを開催したり、モニュメント的なものをつくったりしています。世界に目を向けると2004年のアムステルダムのプロジェクトが有名ですね。

行政ベースの「モニュメントを作る」ような大きなプロジェクトとは異なる、「日々の暮らしからのシビックプライド」というのが、くらしアトリエの主張するコンセプトです。

正直、私自身は15年にわたってNPO活動をしていますが、それを離れたところで、実際に暮らしている自分の町に対して、「何ができるだろうか」と主体的に考えて催しに参加したり、「みんなで考えよう!」と率先して行動することはほとんどありません。

でも、住んでいる町は大好き。パンはここで買う、コーヒーはここで、という「お気に入り」が点在していて、野菜がおいしくて安いお店があって、魚を買うならこのお店、というのもある。
町の中だけど自然もたくさん残っていて、ちょっと足を延ばせば宍道湖とお城が見え、散歩をしていても楽しい。最高だな、と思っています。

私と同じように、「住んでいる町は大好き。だけど、その町のためにミーティングに参加したり、課題解決のためのアクションを起こしたりしたことはない」という方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

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くらしアトリエは、「それでもいいんだよ」ということをずっと、伝え続けています。

いいところだなあ、としみじみ感じながら日々を過ごし、風景に癒やされ、それをSNSで発信したりする。おいしいお店を見つけたら嬉しくなってシェアするし、旬の地元の野菜を見かけたら買って帰って料理する。

そういう「何気ない日常」にも、「それも!シビックプライド!!」と声をかけたい、そう思っているのです。まちの魅力や誇りって、何かと比較して良いとか悪いで作られるものではなく、個人の暮らしの中から生まれてくるものであるべきで、それこそがシビックプライドなんじゃないか、と。

シビックプライド=個人それぞれの気持ちの持ちよう、と考えるとすごく抽象的で、モニュメントを作るみたいには可視化しにくいのですが、個人レベルで地域への誇りが積み重なっていくと、自然とその地域は元気になると思います。

住んでいる人の多くが「ああ、ここっていいところだ~」と感じているなら、必然的にその場所はいいところになりますよね。

まちは、住んでいる人の誇りで輝くべきものではないでしょうか。

そこから、さらに問題意識を持ってアクションを起こす人が出てくるなら、それはとても素晴らしいこと。課題を見つけて解決していけば、さらに地域は住み良く、みんなにとって良い場所になるでしょう。

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でも、みんながみんな同じようなその一歩を踏み出せるわけではありません。
だから、「特別な活動をしなくても、シビックプライドは高められるんだよ」と言い続けています。

そして、この状況下で皆さんにあらためて伝えたいのは、「ひとりひとりが地域を作るんだよ」ということ。

能動的に動くことがなくても、数字に表れなかったとしても、あなたという人間が地域に対して感じる「いいなあ」という気持ちは確実に、まちの元気の素になる、ということを知ってほしいのです。個の力って、意外に大きなものなのだと。

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スタッフとは「地域づくりって、川に注ぎ込むひとしずくの水のようなものだよね」と話しています。ひとりひとりは、僅かなひとしずくかもしれません。でも、そのひとしずくが集まり、いつか大きな「誇るべき地域」という川になる。

だから、あなたという「ひとしずく」が基本であり、大切なんだよ、と強く伝えたいのです。

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つまりは、

住んでいる土地の良いところを見つけて、楽しく豊かに暮らす。
自分が「いいところだな」と思ったなら、それを家族や友人と分かち合う。
次の世代へつなげていく。

どれも特別なことじゃないけれど、地域づくりの最も大切な、根幹の部分だと信じています。

”自分も地域のひとしずく”ということをちょっと意識してみるだけでも、目の前の風景は変わって見えると思います。

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コロナ禍で、都市と地域の境目はますますあいまいになりました。

それまで「都会に負けるな」的な精神で一生懸命自分たちの存在意義を磨き上げてきた地方たちですが、そんな都会の大きな企業が「もう国内のどこで仕事してもいいですよ~」「都市とか地方とか、もうそういう概念は無しでいきましょう!」と言い出したことで、はしごを外されたような気持ちになっているところもあるのではないでしょうか。

今まで「都会に比べて○○がある」「都会よりも△△だ」という比較論でオリジナリティを保っていた地域にとっては、「うちの魅力とは」を自問自答する時期になっている気がします。

そういう時にこそ、町に暮らすひとりひとりの力を信じていきたいものですね。

ひとりひとりがシビックプライドを持って暮らしている町があったとしたら、めちゃくちゃ素敵じゃないですか?

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島根がそんな地方になったらいいなあ。くらしアトリエは常にそう願いながら、その一助になれば、という思いで活動しています。





サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。