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おすすめ本のご紹介。「山の図書室」の本棚から。

おはようございます。

寒い日には家の中で読書が進む、という方もいらっしゃるかも…ということで、今日は春にオープン予定の「山の図書室」の本棚から、おすすめの本を2冊ご紹介します。

「山の図書室」とは…シマシマしまねに付属するちいさなちいさな図書スペースです。
公立の図書館のように蔵書がたくさんあるわけでもないですし、勉強ができるスペースもありませんが、スタッフが実際に読んで心を動かされた本や、おすすめしたい本を中心に、ちょっと立ち寄ってみたくなるような本の場を目指しています。
現在鋭意準備中、貸し出しができる体制を整えつつあります!


「暮らしを手づくりする」 山本教行 著 スタンド・ブックス

鳥取県岩美町にある「岩井窯」という窯元をご存じですか?土のあたたかみあふれる、おおらかなデザインや機能的な作品が人気で、ギャラリー「クラフト館 岩井窯」には食事や喫茶が楽しめるスペースもあり、贅沢な時間が流れています。

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この本は岩井窯の山本教行さんが、ものづくりに至った青年時代から現在までのこと、日々の生活のことや仕事のことなどを綴られたエッセイです。
少し前から家に置いてあった本なのですが、なかなか気持ちが乗らず、棚に飾ってありました(表紙も素敵なのです)。

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それが、先日から民藝についてあらためて考えることが増え、そう言えば…と手に取った1冊です。

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(同じく鳥取の「柳屋」さんの土人形と一緒に。)

個人的に、「ものづくりをする人が、その”もの”に出会い、夢中になるきっかけ」という部分にとっても興味があるのですが、本の中で16歳の山本さんが吸い込まれるように陶芸の道に進まれた経緯が、とてもみずみずしく描かれていて、山本さんにとってその経験が本当に素晴らしいものだったんだなあというのが伝わってきます。

先日、NHKの「こころの時代」のアーカイブスが放映されていて、島根県出雲市にある「出西窯」の先代・多々納弘光さんが過去にお話をされているのを観ることができました。

その中で多々納さんが、窯を立ち上げるに至った経緯についてお話されていたのですが、その時の表情が本当に、青年に戻ったかのようにはつらつとされていて、ああ、こういう体験をされたことが、ものづくりの根底にあったんだなあ、きらきらとした原体験があるからこそ、ここまで努力することができたんだなあ、と腑に落ちたのです。

そのことと、今回読んだ「岩井窯」山本さんのお話とが重なって、すごく心が動いたのですが、読み進めるうちに山本さんの修行先が出西窯だったことを初めて知って、勝手に「おお~!」となりました。

陶芸には、他のものづくりよりもなぜか、本当に如実にそのお人柄が作品にあらわれる、ように思うのですが、こうして山本さんの綴られた文章を読むと、俄然作品を手に取って使ってみたくなります。

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そして、読んだ後には自分が持っているお気に入りのうつわに対しての愛情もさらに高まりました。「うつわのよさは うんと使わないとわからない」という言葉が文中にありましたが、窯の名前とか作家の名前とかではなく、「自分にとって心地よく使えるもの」と出会えること、それをいとおしんで使い続けることが、暮らしを豊かにしてくれるんだなあ、とあらためて感じることができました。

岩井窯といえば土鍋が有名ですが(私にとっても憧れの作品です)、土鍋を使ったレシピや、日々の食卓からおいしそうなごはんのレシピも掲載されています。素朴で、しみじみおいしそうなお料理ばかり。お料理好きな方にもぜひ、読んでいただきたい1冊です。


「幸田家のきもの」 青木奈緒 著 講談社

青木奈緒さんは、幸田露伴の娘さんである幸田文さんのお孫さんです。そして、お母さまもエッセイストの青木玉さんです。

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私が初めて読んだのは青木玉さんのエッセイでした。そして昨年「山の図書室」で選書イベントを企画した際、司書のキシノさんが幸田文さんのエッセイ「季節のかたみ」を持参してくださり、久しぶりにこの時代の、何というか軽快でいて言葉に重みがあるというか、しゃきっと背筋が伸びるような文章に触れ、ああ、こういう女性が書いた文章をたくさん読みたいなあ、と思ったのです。(実は女性のエッセイは得意ではなく、あまり読んだことがありません。)

古本屋さんでたまたま見つけたのが、お孫さんである青木奈緒さんの「幸田家のきもの」でした。この本には、青木さんが今までに袖を通したさまざまな着物についてのエピソードが綴られています。

お子さんのときに初めてお祖母さま(幸田文さん)にあつらえてもらった、ウールの着物。正絹の着物ではなく、家の中で動きやすい、子どもにはぴったりの素材。きっとお祖母さまが、着物を着ることの楽しさをまずは感じてもらいたい、という思いで選ばれたんだろうなあ、と思うと微笑ましいです。

青木さんがご結婚される際に、ご主人となる方がおうちに来られるにあたり、お母さまである青木玉さんがどうしても、とこだわられた「蕨の帯」に込められた思い。その秘密を知ると、親が子を想う気持ちに胸が熱くなります。

時おり、実際に着物を着用されたお写真が入っているのも嬉しい。この本を読んで急に「着物っていいな!」と思い始め(すぐ感化される)、着付けもできないのに「家で洗える 着物」で検索したりして、もうちょっとで買っちゃうところでした…。危ない危ない。

私はほんっとうに不器用なので、帯を締めるのはたぶん無理じゃないかな…と思ってはなから着付けには興味がなかったのですが、ちょっと調べただけでも今はデニムの着物など、動きやすく扱いやすいものがたくさん出ているんですね~。そして、20代くらいのうら若き女性たちが、率先して着物をアレンジして着こなしておられるのも素敵!

いつか自分で着られるようになったらいいなあ…と、夢を持たせてくれた1冊でした。

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今回ははからずもエッセイ2冊、そして文化や暮らしがテーマのものが重なりました。これらの本は、春からの「山の図書室」でも貸し出しできますので、どうぞお楽しみに。

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「山の図書室」には、ほかにもいろいろなジャンルの本が並ぶ予定。とっておきの1冊と出会い、ここから好奇心の輪が広がっていく、そんな場になれば、と思っています。詳しいことが決まりましたら、またお知らせしますね。

過去のおすすめ本については、こちらのマガジンからどうぞ。




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