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森博敬さんによる「マンボウ」の造形から、ゴッホの「自画像」へのワープ~黄色いチューリップによる媒介~

画像は、造形作家、森 博敬さんによる「マンボウ」の造形です。

森 博敬・作「マンボウ」2022年

マンボウは、大きな体で、ユーモラスな風貌をした、空想のキャラクターのような生き物です。森さんは、オーブン陶土でリアルに造形したマンボウを、水色に着色した砂のうえに載せて、水中をゆったりと泳ぐ姿を表現されました。金平糖のような形をしたマンボウの幼魚が後ろからついてきていて、景色のアクセントになっています。マンボウは、ぎょろっとした眼をして、口を尖らせています。

傍らでは、褐色の花器で水栽培していたチューリップの球根が、黄色の花を咲かせ始めました。

水栽培のチューリップ

数日前に前に倉敷の花屋、アトリエ・トネリコで購入したものです。小振りで、花びらが少し縮れていて、原種に近い品種だそうです。


むむむ・・、チューリップとマンボウの造形が並んだ光景に、強い既視感を覚えます!

「マンボウとチューリップの光景 」2022年

それは、かつて観たゴッホ、34歳の「自画像」でした。

フィンセント・ファン・ゴッホ作「パイプと麦わら帽子の自画像」1887年 1)
 (ファン・ゴッホ美術館・蔵  )

パリに在住していたときのもので、貪欲に印象派から学んでいた時代でした。
屋外の写生に欠かせない黄色い麦わら帽子を被り、画家の仕事着である水色のスモッグを着ています。顔は、よく日に焼けています。
印象派の影響を受けた、明るく鮮烈な色使いが印象的です。

ゴッホは、ぎょろっとこちらを見て、唇をちょっと尖らせて、パイプをくわえています。

ゴッホに関する図録を紐解いてみると、筆者は国内でこの絵に、名古屋と神戸で2回遇っています1)2)。強い既視感は、そのためだったのでした。

森博敬さんの作品「マンボウ」に、チューリップが取り合わされた偶然から、19世紀末にパリに居たゴッホの世界に回帰するという、シンクロニシティの導きに、びっくりしました。


文献
1)シラール・ファン・ヒューフテン, ウォルター・ファンデル・フェーン, 大橋菜都子, 森美樹, 塩津青夏, 中野悠・執筆 東京都美術館, 愛知県美術館, 東京新聞, 中日新聞社, TBCテレビ・編:ゴッホとゴーギャン展. 東京新聞, 中日新聞社, TBCテレビ, 2016. P64-65


2)ベンノ・テンペル, 小野尚子, 岡本弘毅, 岡里崇, 坂元暁美・執筆 小野尚子, 岡本弘毅, 岡里崇, 坂元暁美, 藤本聡, 河野朋子, 和泉さなえ, 櫟原千寿帆・編:ゴッホ展. 産経新聞社, 2019. P168-169


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