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読書紹介 第6冊 夏へのトンネルサヨナラの出口

『夏へのトンネル さよならの出口』 著:八目迷


SF+青春小説といった本作品。

図書館にて読んでみようという気になったのは
他でもない、

タイトルが良かったから、である。


みるからに爽やかそうな
それでいて儚げで、少しセンチメンタルな
気分にさせる。
おおよそ、夏とはミスマッチに思えてくる。

タイトルに惹かれて
本を借りる、というのは久しぶりだったので
少し新鮮な気分である。

そんなタイトル◎な作品であったが、
内容についても保証したい。



大まかなあらすじとしては
妹を亡くした主人公が、何でも手に入ると噂の
『ウラシマトンネル』に
転校生の女の子と挑む、
といったものだが、

この『ウラシマトンネル』が実に厄介。
数秒過ごしただけで
現実では数時間経過しているのだ。

欲しいものを手に入れるために、
時間という代償を払えるか?
主人公とヒロインの女の子(転校生)の決断はー。

と、SFらしいといえばSFらしいといえる。



主人公の語り口が若いため
スイスイと読み進めることができ、頭の痛くなるような解説はない。


また、その過程での登場人物達の成長や
心の揺れ動きが、実によく表現されている。

どうして登場人物達が
そのように考え
そのように行動するか、というのが
ハッキリ分かるのが良い。

そこにきちんと
生きている人間を感じられるのである。

これはこの本に限らず
名作の条件な気もするが
本気で突き詰めると、卒業論文すら書けてしまいそうなテーマであるため割愛。


唯一気がかりなのは
『ウラシマトンネル』の発生に関する説明が
一切なされないところだが、

そこは読み手によって評価が分かれるところであろう。

作者としては
『ウラシマトンネル』を通しての 
主人公やヒロインの成長や葛藤を描きたかったであろうから

舞台装置の『ウラシマトンネル』について
発生の条件や因果が
詳細に語られることはない。


しかし
全部を説明して欲しい、それを読みたいんだ!!
という要望をもってしまうことも、十分に理解できるので
唯一マイナスポイントとなりうる可能性がある、と付け足しておく。



総じて
このような青春小説は
思えばあまり読んでこなかっただけに
新鮮な気持ちで読み進められた。

SFの視点からみても
ギミックは単純なだけに分かりやすいため
入門もとしてもオススメ。


日々の糧を得るため
東奔西走している我が身には
眩し過ぎるが
十分楽しめる作品であった。






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