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成果とは何か。成果を出すのは習慣である

「成果って一体なんでしょうか?」

いつものごとく、彼は部屋に入るなり質問をしてきた。

「ふむ、成果ね。どうして成果を知りたいのですか?」

私の方は、ちょうど仕事に一息入れて珈琲を淹れようとしていたところだったので、自分の分と彼の分の両方を用意してカップをローテーブルに置いた。そして、向かいのソファに彼に座るように促す。

「よく『成果を出せ!』と言ったりしますよね。僕も上司から言われることがあります。確かに、どうも仕事がうまくいってないとき、成果は出ていないんだなってのは感じるのです。」

彼はため息をつきながら続けた。「それじゃ成果を出そうかと思ったものの、ふと考えてしまいまして。成果を出せって、さて僕は一体なにを出せばいいのやらと・・・」

「また、あなたの面倒くさい病気が出ましたか。良いですよ、休憩がてら一緒に考えましょう。」面倒くさいと言いながら、実は楽しくもある時間なのだ。私は続けた。「まずは・・・そうですね。結果と成果の違いはわかりますか?」

「結果と成果。言われてみれば同じ意味に思えます。違うのですか?」

「結果とは、良いことも悪いことも関係なく、何かしら起きた事象です。」

「たしかに。"悪い結果"といいますが、"悪い成果"とは言いませんね。」

「そう、なかなか冴えてますね。であれば成果とは、何か成し遂げた良い結果のことを言うのではないですか。成果物という言葉を使うことはありますが、結果物とは言いません。良いアウトプットが成果です。」

「なんとなく、わかります。だけど、それで私が出すべき成果というのが何かはわかりません。」

「そうですね、さっきまでのは一般論というか言葉の認識あわせに過ぎません。抽象的な話でしたね。では具体的な成果とは何か。これは、その人が立ち向かう仕事の中身、立場や役割、できることや外部環境、そういったものによって変わってきます。」

「決まった正解や定義がない、と?」

「社長の成果と、営業担当の成果は違いますよね。事業と研究では成果の尺度も違うでしょう。価値を出すこと、すなわち役に立つことは、良い結果と言えますが、そんな価値や役に立つということも状況や誰を相手にするのかで変わってきます。」

「価値が変わる?」

「現代の都会を歩く人に水を差し出すことと、砂漠を歩く旅人に対して水を差し出すことは、価値が変わってきます。価値は、労力だけでは決まらないのです。」

そう、絶対なものも、不変なものも、この世には無いのだ。あらゆるものが、その時々で意味も価値も変わっていく。私は、この世界をそう捉えている。

「なるほど。成果には決まった定義がない話は理解できました。となると、個別の仕事ごとに決めなければならないということですね。」

「そうです。普遍的な定義はないけれど、とはいえ何かしらの指標がなければ、どう行動して良いかわかりませんからね。」

「では、それぞれの仕事における成果は、誰が決めるのですか?」

「仕事に責任を持つ人でしょうね。仕事とは価値を生み出すこと、すなわち成果をあげることです。もし依頼をしてきた相手がいるなら、その相手との成果のすりあわせをするのも、その仕事に責任を持つ人の役割でしょう。そうしないと独りよがりの成果となって、それは本当の成果とは言えません。」

「あれ・・・仕事をする人ではなく、あえて責任を持つ人と言っているのは何か意図が?」

「今日は本当に鋭いですね。そうです、もし誰かに成果を決めてもらってする仕事だとしたら、それは責任を持っているわけではありませんから。私にしてみると、それは仕事ではなく作業です。」

「つまり、成果の尺度まで決められて手を動かすのは作業をしてるだけ、と。」

「ちょっとキツい言い方をすれば、頭を使っていないのが作業。誰かに定義されればできる作業は、早晩にコンピュータがやってくれるようになるでしょう。」

「・・・僕は、仕事がしたいですね。」

「そうですよね。ならば自分のする仕事の成果とは何か、それを自分の頭で考えなければなりませんよ。それこそが、仕事をすることの入口だからです。成果とは何かを考えることを放棄して誰かに委ねている限り、自分の仕事を自分でマネジメントすることなど出来やしません。」

「そうか、成果を考えることが仕事の第一歩なんですね。ちなみに、成果を考えるときのコツみたいなものってあるものでしょうか?」

「コツというか・・・成果を考える観点は、目的と目標です。」

その仕事の目的は何か。なんのためにするのか。誰のためにするのか。それをすることで何がなされるのか。そもそもの意義を確認すること。ゴールを考えることが出発点なのだ。

そして、どれだけやれば良いのか、それが目標になる。成果とするには、ある一定の量も必要になる。

「やはりガムシャラにやってても成果は出ないのでしょうか?」

「やり続ければ、いずれ成果は出るかもそれませんが、効率は良くないでしょうね。いわゆるコスパが良くない状態ですし、それでは仕事してるとは言いにくいでしょう。」

「コスパが悪い、と。あ、パフォーマンスって成果のことか。」

「もしも、そもそもから捉え直すことができれば、圧倒的な成果を出すことも可能になります。成果を見直して、必要最小限の労力で、最大限の効果を出すのです。」

「それは果たして僕にもできるものでしょうか?」

「どうでしょうね。少なくとも、どんな仕事であっても成果をあげようとする意思があって、目的に立ち返ること、そして試行錯誤を繰り返して改善していくことができれば、成果を出す習慣は身につけられるのではないでしょうか。」

「成果を出すのは習慣なのですね。」

「私は、優れた習慣を身につけることができれば、それは優れた才能に匹敵するのだと信じていますよ。」

彼はカップに残っていた、もう湯気の立っていないコーヒーを一息で飲み干してから立ち上がった。休憩は終わりらしい。

「珈琲ごちそうさまでした。僕、成果をあげるために仕事に戻りますね!」

***

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