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⑩ダメ押しアンドダメ押しの無理イベント

最終面接の会場にいた学生は、私を含め3人だった。

前回同様、数人の面接官に対して学生達全員とやりとりする形式だったため、他者の経歴や志望動機は否応なく耳に入ってきた。

私以外の2人は体格の良い男子学生で、体育会の部活に所属し、全国大会や世界大会で結果を出していることが分かった。

そんな中で私の勝ち目はないと直感し、何も結果を出せていない私がなぜ呼ばれてしまったのだろうという戸惑いしかなかった。

あわよくば、この3名全員が採用であってほしいという願いもあったが、どう考えても私だけが場違いであった。

おそらくとても偉いであろう重鎮感漂う方々と、想像を絶する努力の末に栄光を手にした貫禄ある学生達に挟まれ、テンションダダ下がりの中で面接は終わった。

やれるだけのことはやったつもりだったが、手ごたえなど微塵も感じられず、まともに息すらできない悪夢のような時間でしかなかった。

さらにそこで終わりではなく、健康診断も執り行われた。

どうせ不採用だから受けたくないという気持ちもありつつ、一縷の望みを託して臨んだのだった。

しかしここで大きな問題に直面した。
健康診断には、採血の項目がある。

私はどうしても採血が苦手なのである。

採血と聞くだけで手や身体の力が抜けてしまうのだ。
針を血管に刺して血を抜き取るなんて、なんとも恐ろしい行為である。

そんな採血がこれから行われるなんて、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

腕に素早くチューブを巻かれ、痛いほどの力で腕が消毒され意気消沈し、いざ針が入ると絶対にそのシーンは見てはいかんとばかりに、ありえない向きまで首を背けて臨む。

ようやく終了すると、握っていた手のひらには複数の爪跡がくっきりと残り、首や腰は微かに痛くなっているのが常である。
そして、終了してしばらくは放心状態が続くのだ。

場合によっては、気持ち悪くなって長椅子に横になったり、異常に喉が渇いて砂漠で行き倒れそうになる人のごとく水を求めるのである。

そしてある時、採血が苦手な人はベッドで横になって受けられることを知り、そのようにしたら精神的にも肉体的にもとても楽であった。

可能であれば今回もそのようにしてもらいたく、その旨を年配の看護師さんに恐る恐る申し出た。

通常であれば、軽い感じでベッドに案内されるのだが、今回だけは違った。

(つづく)

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