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遺されては困るモノ

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前略

 他にも残されて困るモノはいろいろあります。たとえばエロ本やエロビデオのたぐいです。あるお宅で遺品整理を始めたら、亡き夫の書斎の物入れからそうしたモノが大量に出てきて、家族一同は仰天したそうです。夫は中学の校長を長年勤め、堅物と評判の人でした。

こんな趣味があったとは、と家族は当惑することしきり、廃棄しようにも、普通の雑誌や本ならば古書店に引き取りを頼むか、町内会の廃品回収に出せばいいのだけれど、こんな本はとても出せない。

 少しずつ千切ってゴミに出そうかとも思ったが、そんなことができる量ではない。それに何百本のビデオもある。結局、息子が遠くの町の廃棄場に持ち込みました。この夫は法を犯したわけではありませんし、趣味のコレクションを残しただけです。ただ、残された家族のことを考えていなかったのです。

 エロ本でなくても、昆虫の標本はどうでしょう。虫が苦手な人にとっては見たくもないと思うかもしれません。

 日本刀や猟銃などは所持する届を出してあるか、その書類はどこにあるかといった確認が必要ですし、処分の際は警察に届けないといけない場合もあるようです。また美術品、古美術品の価値もわかりにくいですね。トラの敷物やシカの頭のはく製、1メートル近い水牛の角はどうでしょう。

 これらと家族は暮らしたいでしょうか。 

『定年男のための老前整理』2014年 徳間書店 より

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