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読書メモ『老人ホテル』原田ひ香

面白かったです。一気に読みました。以下感想文。ネタバレです。

両親が仕事をせず、生活保護で暮らしている7人兄弟の末っ子の日村天使(エンジェルと呼びます)の話です。

日村家はテレビ取材の対象になり、シリーズで「なかよし日村さん一家」という番組になります。子どもたちは母親の餌食になりテレビで世にさらされます。

子どもたちの名前が脳裏に焼き付きました。
長女 大天使(ミカエル)
長男 堕天使(ルシファ)
次男 羅天使(ラファエル)
次女 我天使(ガブリエル)
三男 亜太夢(アダム)
三女 衣歩(イブ):26歳
四女 天使(エンジェル):24歳

エンジェルは16歳で高校を中退し、家を出て姉の家に世話になり、ガールズバーでバイトをします。19歳になりキャバクラに仕事を変え、そこで店のビルのオーナーの老婆と出会うのです。とある事件で老婆と話ができたエンジェルはお金の儲け方を教えると言われはげしく興味を持ちました。しかし話を聞く前に老婆はいなくなってしまいました。

エンジェルは老婆を探し、数年後ビジネスホテルで暮らしている老婆を見つけます。そして老婆から儲ける方法を聞き出したく、募集していたホテルの清掃員になります。ホテルには長期滞在している老人が何人もいました。だから『老人ホテル』と呼ばれていたのです。それがこの本のタイトルです。

ここまででもかなり興味深い話です。調べてみると、生活保護費は子どもが多いとけっこうもらえるのです。

現実にホテルに長期滞在している老人もいるようです。そういうば、亡くなられた映画評論家の淀川長治さんもホテル住まいでした。そういえば私も会社のプロジェクトで出向していた時はアパートが借り上がるまで3ヶ月間ビジネスホテル住まいでした。ホテル暮らしはお金さえあれば、掃除もしてもらえるし、光熱費もかからないし、楽なものです。

さて気難しい老婆はなかなかエンジェルを受け入れようとしませんが、ある日突然エンジェルは老婆の部屋に招き入れられ、お金儲けのやり方を教えてもらうのです。老婆は不動産投資で儲けていたのでした。社会常識を教わっていないエンジェルに節約のしかた、家計簿のつけ方や、正社員がなぜ良いのかなどお金の基本から教え、また不動産情報の見極め方など不動産投資のノウハウを伝授しようとします。

エンディングはどうなるのか。ハッピーエンドを期待しましたが、まあ、そう単純ではありません。なんともモヤモヤするエンディングでした。

ミステリーではないですが、イヤミスの女王、湊かなえさんのいくつかの小説のエンディングと同じです。読者の空想がその後の物語を作って、自分なりのエンディングを考えて物語を終わらせるのでしょうか。未回収の伏線も残っているので、続編が出版されるかもしれませんね。

Audible で聴きました。Audible にすすめられたのです。朗読がなかなか良かったです。

作者は原田ひ香(はらだひか)さん。大妻女子大学文学部日本文学科の出です。脚本も書かれているのですね。代表作は『三千円の使いかた』だそうです。ドラマにもなりました。『老人ホテル』も未回収伏線の回収も含めて、テレビドラマにならないかなと期待します。


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