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管理職のプロ?

#マネジメント

管理職のプロとは何か、私の体験から考察しました。

管理職の仕事

プロフェッショナルとアマチュアの違いは何でしょうか? プロになるには10,000時間が必要だと言われます。10,000時間と言えば、1日8時間ならば 1250日。月に20日ならば62ヶ月。1年は12ヶ月だから、5年と少々。

私はソフトウェアエンジニアとして社会人になり、ファームウェアの開発を4年ほど行いました。本格的なプログラミングは会社に入ってからOJT(On the Job Training :オンザジョブトレーニング)で学びました。研修期間も含めるとこれはプロにはなれなかったかもしれません。

それからさまざまな楽器の音をサンプリングして電子楽器の音源を作る音作りの仕事を7年やりました。さまざまな楽器の音を一音一音録音します。録音スタジオやホールなどへ出かけて録音しました。初めての経験なので、スタジオのエンジニアや音楽ディレクターの方といっしょに録音をしました。音楽の録音とは異なるので、エンジニアやディレクターの方たちも試行錯誤でした。

録音したデータはパソコンに取り込んで加工します。加工のやり方も試行錯誤でした。会社のスタジオにこもって一人で一日中繰り返し行っていました。この仕事も独学とOJT。これはプロになったと自信を持って言えます。

そして管理職になりました。マネジメントの仕事です。管理職は15年以上やりました。経験としては管理職もプロになったわけですが、さて管理職のプロっていったいなんでしょうか。

年功序列の時代は、管理職とは、業績を上げた社員を登用するポストでした。管理職はランクがつけられ、その階段を登っていくのがサラリーマンの出世コースでした。

しかし現代の管理職はそうした出世のためのポストではなく、管理職としての専門性、すなわち管理職のプロの仕事が求められるようになってきています。

管理職の仕事は、
1.チームをつくる
2.ミッション・ビジョンを説明する
3.ヒントを与える
4.チェックする
5.評価する
6.判断する
7.相談を受ける
8.育成する
9.俯瞰する
10.調整する
11.交渉する

だと私のメモ帳に書いてあります。

自分が管理職になった時は、出世コースの階段を一段登れた嬉しさが先行しましたが、やがて管理職の仕事で重要なのはチームビルディングと社員の育成業務であると痛感しました。

部下とのコミュニケーションをどうしたら良いのかをあれこれと学び実践していくことになりました。

部下に任せてサポートする(1on1ミーティング)

管理職になったら自分で担当者の仕事をしてはだめですね。担当者の仕事は部下に任せて、部下をサポートする事が重要になります。それが育成につながるわけです。任された現場は任されたからこそ知恵を出し合い工夫をします。任せたら任せっきりもだめです。部下の状況を把握してアドバイスしなければなりません。

部下の状況把握のために普通は進捗確認の定例会をやりますが、自分にとって役に立ったのは1対1の面談でした。昨今では「1on1ミーティング」と言って注目されていますね。定期的に部下と1対1で行う面談です。これで進捗確認や悩み事の相談を受けました。定例会よりも1対1の方がより細かく掌握できます。また出張や他社訪問に部下を同行させて、行き帰りでする雑談、これも効果的でした。

自分をさらけだす(心理的安全性)

自ら自分をさらけ出すことも大切だと学びました。かつては上司は権力があったのでいばっていましたから、自分の弱さをさらけ出すことはやってはいけないことだったように思います。しかし今は違いますね。自分の部下に「私にはできないことだから、ぜひ手伝ってほしい」と言えたら部下はプライドを持って仕事をしてくれます。

自分の部下に弱さや無知をさらけ出すことは、昨今言われる「心理的安全性」にとっても有効なようです。心理的安全性とは、ハーバード大学教授エイミー・エドモンドソンが提唱した組織行動学概念のひとつです。気兼ねなく発言できる雰囲気が、「チームの生産性を決定付ける重要な要素」になるそうです。これには同意します。

この気兼ねなく発言できる空気をつくるには、管理職自身が失敗を恐れず行動したり、能力や知識不足を開示したり、ときには初歩的や的外れかもしれない質問をすることが大事なのだそうです。

私は部下から「自分の失敗経験もオープン」「家族や自分の時間を大事にする姿」が良いと言われました。

上や脇からの外圧から部下を守る

管理職の大切な仕事は、部下が仕事を進めやすいように、上長や関係部門を自ら説得することですね。特に新規事業を進めるチームの場合、横槍があちこちから入りますから、部下が刺される前に社内調整をする事が必要です。

私が新規事業推進チームのリーダーだった時は上司のアドバイスで、経営陣への報告会、関連する部門の部長クラスへの報告会、課長クラス・担当者向けの報告会というように、相手に合わせて報告会を別々に実施し、報告内容を吟味し情報共有と理解を得る努力をしました。


細かいことに口出ししない。そのかわり自ら学ぶ(リスキリング)

管理職の教育について元上司と話しました。

「日本は社会人教育がまったく遅れている。特にマネジャークラスのミドル層。経験と勘、OJTで育っているから、体系立てて理論を学ぼうという気持ちが起こらない。日常に忙殺されて、調整仕事ばかりしている。終身雇用の弊害で、社会人になってから学校に戻るということも少ない」

元上司は大学の講師をしています。学生の講義のために改めて昔読んだ本を読み直すと、気づいていなかった発見が多かったといいます。

「マネジャー層がそんな状況だから、部下が学ぼうとしても足を引っ張る人がいる。『本なんか読んでいないで仕事しろ』『勉強会に行く前にやることあるだろう』。これではイノベーションは起こらない」

経済産業省がリスキリング(Re-skilling)という言葉を使って人材育成を進めようとしていますね。経済産業省の定義では、リスキリングとは、

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

だそうです。

世の中の変化のスピードは速く、しかも大きい。学びは会社のためではなく、自分の能力開発です。知ったかぶりをしないで聞くことも大切ですね。私の前職では社長自ら、デジタルマーケティングの担当者向け勉強会に参加して、質問しながら学んでいました。

管理職のための学びの本も増えてきました。管理職自ら自席で本を読む姿を見せることも部下の人材育成に効果があると思います。私は社長室に入ると本棚の本をチェックしていました。

管理職のプロについて書いてきましたが、現在フリーランスで一匹狼の自分は、前職の管理職時代を懐かしく思い出します。大変なこともありましたが、学びの多い、やりがいのある面白い時期でした。

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