自分にしかできないことを探し続ける―自分で考えるマインド【妙高市・諸岡龍也さん】
自分で考えて行動する
「自分で考えることを伝えられる人になりたい」。これは小学校の頃の先生によるものだという。
「授業で教科書を使わないで歴史の教科書を自ら作ってプレゼンしたり、クラスに本を置きたいときは自分たちで金を稼ぐ方法を調べたりしたよ。環境事業局に空き缶持っていくと図書券に変えてくれる情報を得ると、みんなで放課後缶を集めた。町も綺麗になるし。そんな30年前の教育じゃ考えられないような、自分で考えるマインドを教えてもらったんだよね。」
今、日本が重視する思考力・自主性を育む教育を30年前にしていた憧れの先生のように、自分も小さい年齢の頃から何かを伝えられる人になりたい、一緒にできる人になりたいと思い、諸岡さんは保育士になった。
しかし、保育士として働いていたとき、子どもに何かを伝えられているのかと疑問に思った諸岡さんは、デンマークの自然保育「森のようちえん」に興味を持ち、行ってみないと分からないとデンマークへ行った。そこでは国の制度の違いによる保育や先生と手はつながずに道路のない森を木に印を付けて進む子どもなど、自分で考えて行動しながらも道中を楽しんでいる姿があった。
「日本とデンマークの制度が違って、保護者が保育園に送りに来てもまず一緒にしっかり遊んでから会社に行くんだよ。それが余裕のある輝いている大人というか、子どもがしたいことに向き合ってるなと感じたな。大人が楽しんで何かをやっているところに子どもがやってくるようなことを、自然を介して伝えるっていうのはいいなと感じたんだよね。だから自分はまだ自然の翻訳者となって自然を上手く使える人じゃないから、まずは自然を学ぼうって思った。」
暮らす場所
地域おこし協力隊になる前は妙高市に住もうと思っておらず、南の島に行ってのんびり暮らそうとしていた諸岡さん。しかし、妙高市で過ごしていくうちに雪が降らない場所で住むことに違和感を覚えた。
「雪が良いし、季節が巡っていくのがわかるのがいいなと。生活の中で季節を感じることが、都会ではカレンダーやイベントとかで季節感じるのは違うなと。」
イベントではなく、鳥の鳴き声や景色、作物の成長で日常的に感じる豊かさが暮らす基準の1つになっていた。
また、妙高市に住もうと思ったのは地域おこし協力隊のとき、地域の人に「尊敬しているお世話になった人に恩を返すため」と諸岡さんは話す。
「優しくしてくれたり、俺のやりたいことを一緒に楽しんでやってくれたりとか。あと、あるものでなんとかしようとする精神がかっこいいし、自分もそうなりたいと尊敬した。」
石屋だって大工だって重機だって田んぼだってなんでもやる。そんななんでもやれる働き方ができる環境が魅力的なのだ。
幅を持っておきたい
諸岡さんは、現在酒蔵で働きながら古民家宿「こつぼねの家」を営んでいる。「こつぼねの家」は地域おこし協力隊の任期が終了するときに、「諸岡さんに合う家があるよ」と役所の人に教えられた。内装は和室の状態が悪く、また水道が通っておらず補修が必要だった。そのため、補助金とクラウドファンディングで資金を用意し、住めるよう補修した。
「宿は仕事みたいな軸じゃなく幅を持っておきたいからやってる。家を紹介されたときからコミュニティの場を作りたかった。」
諸岡さんにとって宿は仕事というより、来たいと思う人、したいと思う人と一緒に思いを分かち合う空間であり、コミュニケーションツールなのだ。働くには何か「幅になる」ような自分の思いを大切にできるものが暮らしに必要であり、その思いが諸岡さんの場合、地域おこし協力隊のときに生まれた、来た人が多様な価値観を感じられること、地域の人や物の魅力を地域内外の人に伝えることであった。
やってみたらいい
デンマークに興味を抱いたら迷わず向かい、妙高の専門学校にも通った行動力のある諸岡さん。
「基本ためらいが無いかな。やるために考えるのは良いけど、やるまでに悩みこむのがもったいない。やりたいと思ったらやった方が良い。」
やりたいと思ったら即行動ではなくしっかり調べて、仲間を集めたり、これからすることを計画したりする。この考え方は小学校時代からの自分で考えて創り出す姿勢に基づいており、ただ行動力があるだけではないのだ。
「これからは家族や関わる人と暮らしを創ることを楽しんでいきたい。」
これからも諸岡さんの挑戦と歩みは続く。
編集後記
自分で創ることが根底にあり、今を楽しんで暮らしている印象。私は不安で行動できない性格だが、諸岡さんのようにしっかりと調べて計画することが不安を取り除いて行動できるようになる一歩なのかもしれないと気づいた。
また、なぜデンマークでそのまま就職して暮らさなかったのかと質問した際、「米や出汁が無くて食が合わなかった」と言っていた。編集室ネームが「食くん」の通り、食が好きな私にとって、働く場所、暮らす場所を決める基準に食の嗜好も選択肢に入ることは大きな発見であり、味噌の好みなど日本国内においても考えられることで他人事ではないと感じた。
諸岡さんが営むこつぼねの家HP ↓
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