ジェネレーションギャップ
今まで、こんなふうに考えたことはありませんか?親は気持ちを分かってくれない。子供の考えていることがわからなくて、時々、怖い。先生は全然分かっていない。上司は考え方が古い。
分からなくて当然です、古さを感じるのも仕方のないことです。一緒に住んでいる家族だって理解しきれていないのだから、他人なら尚更。
この理解不足の一つの要因にジェネレーションギャップがあります。自我が育ち多感な時期を過ごす十代までを、どのような環境で過ごしたのか、こういったことが思考にも大きな影響を与えます。人は周囲の環境から常に影響を受けています。環境には教育も含まれ、教育システムも内容も時代と共に変化していきます。大学受験制度も然り。環境の要素は教育に限らず、広範囲に渡ります。それぞれの時代でその時々の文化や社会を育み反映されていきます。異なる環境に身を置けば、異なる考え、価値観を持つことはごく当たり前のことです。
流行や人気の音楽、映画やドラマは当然、その時代を反映したものになります。過去の各年代の映像を見て違和感を感じることがあれば、それがジェネレーションギャップの一端でもあります。今期のTBSの金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は昭和61年と令和の現代が舞台となり、二つの時代を行ったり来たり。まさにジェネレーションギャップを顕著に比較した象徴的な作品です。昔のTVドラマなどを見ると、未成年設定の演者が飲酒、喫煙、暴行するシーンが放送されていましたが、今ではこういったシーンにお目にかかることは極端に減り、代わりに映倫によるレーティング表示による細かな差別化も当たり前になりました。
社会は経済状況の影響も強く受けるので、好景気と不景気、それぞれが異なる思考を作り出していきます。バブル期の1980年代後期から1990年代初頭は、未だかつてない好景気で社会全体が浮き足立っており、バブル後の失われた20年の間いもは、株価が低迷し不動産価格は大暴落という暗黒世界。当然、学生の就職活動は困難を極め、『就職氷河期』などと呼ばれていました。フランスの占星術師ノストラダムスは著書『予言集』の中で、1999年7月に人類が滅亡すると記していました。続けてアメリカではドットコムバブルが弾け、更には同時多発テロの影響で世界的に不穏なムードが広がります。2008年のリーマンショックは日本経済にも衝撃を与え、2011年には東日本大震災により、日本社会全体が沈痛な雰囲気に包まれます。コロナ禍には入学式も卒業式も、修学旅行や運動会も小規模開催。Youtuberという新たな職業が脚光を浴び、一攫千金を夢見る子供たちの憧れの職業にもなりました。ウクライナとロシアの戦争は石油価格を釣り上げたり、海外の物資運搬のスケジュールに遅延をもたらしたりもしました。
こういった様々な社会イベントを十代で経験するのか、経済的な自立を必要とされる二十代、三十代で経験するのか、扶養家族がいる四十代、五十代で経験するのかで、個人の生活への影響も異なります。その結果、大別すると各世代ごとに異なる価値観、思考性となって反映されていきます。そもそも、社会のごくわずかな一部分として過ごす十代までと、社会経験を積み重ねた親の世代では、経験値もスキルレベルも全く異なるので、同じ考え方ができるわけがありません。
更に視野を広げて国境を越えれば、価値観そのものが大きく異なることも珍しくはないので、相互理解は更に難しくなります。多様性に対して排他的な傾向がある日本の場合は、LGBTQが社会的に公に認識されるようになったのは最近のことです。親世代や祖父母世代では、頭では分かっていても、本質的には抵抗のある人も少なくないでしょう。女性蔑視も同様で、女性を差別するような社会で生まれ育ち、周囲も差別的な言葉を日常的に口にする環境に身を置いていれば、知らず知らずにそういった思考が刷り込まれてしまいます。特に幼少期などであれば、本人の意思にかかわらず洗脳される可能性もありえます。
しかし、上記のLGBTQや女性差別のような例は、常に最新の社会認識にアップデートすることが要求され、それに合わせることができなければ非難され、立場によっては社会的に抹殺もされかねません。
上記のように、ジェネレーションギャップは、それぞれの環境の違いによって培われた差異の結果です。気に入らないから、不愉快だからと否定的に捉えるばかりではなく、社会学習の一環として考えてみると、新たな発見につながるかもしれません。
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