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【連載小説】犬と猫④

「あっごめんね。つい。」
「別にいいよ。大きいね!身長!心愛がジャンプしても届かないや」

 そう言って、ぴょんぴょん跳ねていた。

「心愛なにやってるの。届く訳ないでしょ。まったく悩んでたのが馬鹿みたいだよ。」
「悩んでたの?ほらお姉さんに話してご覧なさい。」

 と得意げに言う心愛が可笑しくてつい往来の激しい池袋で抱きしめてしまった。抱きしめたまま心愛の耳元で囁くように伝えた。

「心愛が好きでたまらないんだ。付き合ってよ。」

 消え入りそうな声で伝えるとまるで漫画のように耳まで真っ赤にして、コクと頷いてくれた。とても35歳の女性とは思えない。まるで少女のようだった。ぎゅっと抱きしめてた心愛を離すと胸元を引っ張られ強引にキスをされた。突然のことで驚いた。唇が離れると心愛はイタズラに笑った。

「仕返しだよ。ありがとう。よろしくね。」

 そんな心愛の手を取りそっと手をつないで、水族館に行った。色とりどり魚を見ては無邪気にはしゃぐ心愛は少女みたいだった。ミラーレスのカメラを取り出して撮影していく。

「見て!」

 撮影しては写真を見せてくれた。モニターを覗くとキラキラと宝石のような魚たちが写っていた。

「奇麗だね。」

 と伝えると小さく頷いて満面の笑顔を見せた。これで2児の母親なのか?って思うくらいだった。今日は、夕飯も支度をしてあるから遅くなっても平気と言うので水族館を後にしてドライブすることにした。3日間、東京に滞在することを告げると喜んでくれた。心愛は慌てて職場に連絡を取り有給を取りたいと相談をしていた。職場に理由を聞かれていたのだろう。

【遠距離の彼が急に来たので明後日まで有給お願いします。はい!ありがとうございます。】

 その電話を聞いてるこっちのほうが照れくさくなる。てか、その理由でいいのか?と思ったが有給が取れたみたいだ。きっと寛大な会社なのだろう。

「雪那くん。休み取れたから3日間一緒だね。でも、泊まるとこどうするの?」
「基本的に車で寝るから大丈夫。シャワーは漫画喫茶で借りるよ。」
「そっか、さすがにいきなり家に来るのも気まずいもんね?心愛はいいんだけど。」
「さすがに子ども達が驚かない?気まずいだろうし……でもいつかは、会わないとだよな……」
「なら顔合わせする?早い方がいいだろうし」

 と少し悩みはじめた。にこっと悪戯な笑顔でこちらを覗き込むと何かを企んでるようだった。

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